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2003/6/16

重症急性呼吸器症候群(SARS)−80



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(6月13日、更新第80報)


旅行勧告の変更

WHOは本日、中国の河北省、内モンゴル自治区、山西省、天津市などへの「どうしても必要な旅行」以外の旅行を延期すべきである、との勧告を解除する。

中国のこれら地域への「どうしても必要な旅行」以外の旅行に対する延期勧告は、重症急性呼吸器症候群(SARS)が国際的に拡がるのを最小限にするため、4月23日と 5月8日に出されていた。WHOがこの旅行延期勧告を変更するのは、現在これらの地域での状況がかなり改善したためである。WHOは、中国の河北省、内モンゴル自治区、山西省、天津市などで流行が下火になっていることを示す情報を慎重に検討し、これらの地域への旅行者にとってもはやSARSの危険があるとはみなされない、との意見を述べた。

旅行延期勧告は、その時点でのSARSの発生状況、最近の地域内伝播のパターン、輸出症例が最後に発生した日など、いくつかの事柄を検討して出される。

さらにWHOは、広東省、河北省、湖北省、内モンゴル自治区、吉林省、江蘇省、陝西省、山西省、天津市を、「最近の地域内伝播」があった地域のリストから解除する予定である。これは、これらの地域で最大潜伏期の2倍、すなわち20日間を超えて、隔離を受けた新規症例が生じていないことが確認されたことを受けたものである。

3月27日WHOは、「最近の地域内伝播」がある地域に対して、SARSの発症者あるいはSARSとの接触者が旅行しないことを確実にするために、すべての出国者に対してスクリーニングを行うことを勧告している。この勧告は現在でも、中国の北京、香港、台湾、およびカナダのトロントに適用されている。旅行勧告のまとめについては、[重症急性呼吸器症候群 (SARS)の旅行勧告表、6月13日]を参照のこと。

WHO感染症対策局長のDavid Heymann博士は最近北京に出かけた折りに、SARSの拡大を封じ込めるために現在中国が取っている手法につき、以下の様に述べた。「国中の都市および地方で人々を動員し、彼ら自身が発熱していないかとうかに注意し、そしてSARS症例を迅速に発見し、隔離し、治療するのを確実に行うようするために、多大な努力を払っていることを知った」

「SARSの流行を封じ込める努力において、中国は長足の進歩をとげた。現在鍵となることは、警戒をし続け、中国の疾患サーベイランスシステムを強固なものにすることである。中国および世界中の保健当局者たちは、SARSがどこかで再興しないようにするために、SARSの新規症例が出ていないかどうか監視し続ける必要がある」とHeymann博士は語った。

トロントの状況
トロント市におけるSARS伝播の様式の分類については、“B”から“C”へと変更された。これは、トロントから輸出されてSARSコロナウイルスが検査で確認された「可能性例」1例が、以前に接触者として把握されておらず、自発的な自宅隔離を行っていなかったことによるものである。「パターンB」の伝播様式の地域の定義とは、地域内で三次感染あるいはそれ以上による「可能性例」の発生が認められるが、それ以前に把握され、SARS「可能性例」の接触者として経過観察を続けていた者の間で発生した場合である。「パターンC」の伝播地域の定義とは、それ以前にSARS「可能性例」との接触者として把握されていなかった者の間で、地域内での感染が疑われる「可能性例」が発生した場合である。

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