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2003/6/12

重症急性呼吸器症候群(SARS)−78



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(6月11日、更新第78報)


トロントの状況

WHOは、5月22日に報告されたトロントでのSARS症例の再発生を非常に憂慮しており状況を詳しく追跡している。トロントは5月14日に「最近の地域内伝播」があった地域の一覧から一旦外されたが、二次感染以降の症例が発生している事実が確認されたことに伴って、5月26日に再度加えられた。トロントでこの疾病が再び報告され初めて以来、90例を超える新たな「可能性例」が報告されている。

トロントの保健当局は再び高度警戒態勢に入り、SARSでないことが証明されない限り、病院と関連があり、発熱あるいは呼吸器症状のある患者集積群すべてを、SARSの可能性がある患者群として取り扱っている。SARSの可能性がある症例は直ちに隔離され、すべての接触者は追跡調査され、承諾を得て自宅隔離される。集団発生の影響を受けているすべての施設で、SARSに対する感染制御対策が取られている。WHOはこのような予防的措置を歓迎している。

カナダ当局はごく最近、トロント東部の病院でのSARSの集団発生の可能性がある集積群について報告した。この新たな集積群の発生を説明する、明らかな疫学的関連は確認されていないが、当局は用心深い対策を取ることとした。3日間にホイットビー(Whitby)のレーカーリッジ・ヘルスケアセンター(Lakeridge Health Centre)で、15人の透析患者が呼吸器症状と発熱を生じた。臨床的検討と他の病原体を除外するための臨床検査の結果、現在これらの患者のうち約半数が、SARSの可能性が疑われる対象から外されている。残りの患者は経過を詳細に観察されている。

これらについては、他の方面の調査も続けられており、はっきりとした結論を出す前に解決すべき多くの疑問も残っている。

WHOはトロントから輸出された可能性のある、他の国の症例についても情報の提供を待っており、まだこのような輸出例がすべて完全に報告されたとは考えていない。

どのような集団発生の展開においても、特に新しく余りよく知られていない疾患の場合には、症例数が減少し始め、以前の高いレベルの警戒と予防措置が同様に低下してくる時に、最も危険な段階のひとつが起こる。SARSの臨床病像と感染伝播の様式に関しては、さらに研究が必要である。さらに多くのことが分かるまで、トロントで取られたような予防措置が公衆衛生的視点から最も適切な対策である。

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