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2003/6/9

重症急性呼吸器症候群(SARS)−75



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(6月6日、更新第75報)


シンガポールの状況

SARSの症例数は引き続き減少を続けており、しばしば多大な犠牲を払いこの疾患を制御下に収めた地域は現在、苦労して得たこの成果を守るため、輸入症例の危害に対してどのように防御対策を取るかを模索している。たった一例の新たな症例だけでも、次の集団発生を引き起こすことができるため、現在「可能性例」数が減少していても、国家当局が警戒を緩めないことが大切である。

本日シンガポールとマレーシアの当局者は、SARS拡大防止の国境を越えた努力を強化するために、シンガポールの国境にあるチェックポイント(出入国管理所)のWoodlandsで会見した。両国の当局者は、陸の国境にあるチェックポイントで発熱していることが検知された旅行者を、隔離し、続いて出発地に送り返すことで合意した。シンガポールとマレーシアの代表団は、陸、空、海のチェックポイントで導入した健康状態のスクリーニング方法に関して、互いに最新の情報を交換することで合意した。シンガポールはまた、地域におけるSARSの状況が改善するまで、現在行われているすべての出発前スクリーニングを継続すると発表した。

これに加えWHOは、SARS集団発生が始まって、旅行によって世界的にこの疾病が広がる可能性が明らかになったときから、たとえば国際航空運送協会(IATA)や国際民間航空機関(ICAO)などの非政府機関と協力し、航空機を使った旅行によるSARSの拡大を防止するための対策を採用するよう働きかけてきた。

シンガポールのチャンギー(Changi)国際空港は近々、ICAOの提示した手法に基づき、世界の空港の中で初めてSARSの拡大を防ぐための新しい対策を導入する。チャンギーが試験的採用の場として選ばれたのは、ひとつにはシンガポールのSARSに対する迅速な対応のためである。すなわち、ここは発熱している旅行者を選別するために、赤外線サーモグラフィー(体温の上昇を検知する装置)を最初に導入した空港だからである。それ以降、シンガポールはこの装置を、トロント市の空港での出国時スクリーニングに使用するために貸し出しも行った。

もしも、ICAOのガイドラインに基づいたすべての必要な対策項目がチャンギーで取られていると判定されれば、それは言い換えるとWHOの勧告に基づいていることになり、空港は「証明書」を受け取ることになる。世界的航空業界は、旅行者と空港労働者の特異的スクリーニング方法を含めて、空港がどれだけ適切に、SARSに対する対策を実施しているかを評価する枠組みの立ち上げを準備中である。この対策には、旅行者に対してSARSの情報を提供し、すでに機内に搭乗している疑わしい症例に対する、機内とその到着地での対応の指針を提供することも含まれる。

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