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2003/6/7

重症急性呼吸器症候群(SARS)−74



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(6月5日、更新第74報)


症例数および死亡者数の世界的減少傾向

本日までに29ヶ国から、累計で8,403例のSARS「可能性例」と775例の死亡例が報告されている。これは昨日に比べ、6例の新たな症例と3例の死亡例の増加である。

新たな症例は、カナダから5例と台湾から1例が報告された。新たな死亡例は、中国から2例と香港から1例が報告された。

初期に深刻な集団発生を経験した幾つかの地域の保健当局は、症例が再び増加してくるのを防止するために、感染予防対策を継続して行っている。香港の各地区の保健当局は、最低1年間、現行の患者スクリーニング手法をすべての入境地点で継続する意向を表明した。

3月末に導入されたこの手法は、国境での赤外線体温走査器の導入や、すべての旅行者を対象とした健康状態の申告の義務づけなどを含む。これらの手法が導入されて以来、新たな輸入症例の発生は無い。

香港はこのほかにも、輸入症例のマスターリストを作成している。香港の全SARS症例のうち、6%が輸入例であったと現在は考えられている。香港は現在までに、1,748例の症例と284例の死亡例を報告しており、最多の中国本土に次いで二番目に深刻な影響を受けた地域となっている。

香港は中国の広東省と境界を接している。本疾患は2月後半に、広東省から来たSARSに感染していた医師が、宿泊先ホテルの同じ階にいた、最低13人の宿泊客および訪問者にウイルスを感染させた時に香港に持ち込まれた。これらの人達が帰国した時に本疾患も共に運ばれ、香港だけでなく、ベトナム、シンガポール、トロントで最初の集団発生を引き起こした。

これらの初期の集団発生においてSARSは当初、病院職員が新たな感染症が出現したことに気づかずに患者の命を救おうと努力して、感染防御対策を取らずに自らを感染性のある病原体へ曝露してしまったために、医療機関で広がった。これらの初期の集団発生はすべて、引き続き医療機関の外で二次感染の連鎖が生じたという特徴を示す。

現時点では、地域内伝播の連鎖はトロントと、中国の幾つかの地方でのみ起こっている。輸入症例が報告された他のすべての国々は、感染伝播を完全に防止したか、あるいはその後の感染者数を非常に少なく抑えることに何とか成功した。

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