IDSC 緊急情報トップ >
 

 

2003/6/6

重症急性呼吸器症候群(SARS)−73



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(6月4日、更新第73報)


新たな死亡例は無いが、輸入症例には引き続き警戒が必要


本日までに29ヶ国から、累計で8,402例のSARS「可能性例」と772例の死亡例が報告されている。これは昨日に比べ10例の新たな症例の増加である。新たにカナダから5例、香港から1例、台湾2例、ドイツ1例、米国1例が報告された。

本日は、新たな死亡例の報告はなかった。これは、累積報告症例数が1,485例、同死亡例が53例であった3月28日以来初めての、「新たなSARSによる死亡例が無い日」である。

最高の死亡者数が報告されたのは5月の第2週であり、このときには、最高20例の新たな死亡例が報告された日が幾日かある。

初期の「ホット・ゾーン」すべてにおいて、集団発生が封じ込められるか、または制御されつつあり、SARSは明らかに減少している。これは、政府の責任ある取り組みと決断とが結びついたときに、推奨されている感染制御対策が有効であることを示している。

ベトナムとシンガポールで感染伝播の連鎖が断たれた事実は、ワクチン、確固とした診断検査法、特異的な治療法が無いにもかかわらずSARSは封じ込めることが可能であるという、WHOの立場を支持している。現時点ではSARSの対策は、迅速な症例の検知と隔離、院内での適切な感染制御対策、接触者の追跡と隔離に頼っている。

ベトナムでは4月8日以来新しいSARS症例は出ていない。シンガポールでは5月11日に、最後の地域内で感染した「可能性例」が隔離された。どちらの国でも、高度の警戒と、うわさになっていた症例まで含めたすべての事例の積極的調査にもかかわらず、前述したとき以降の患者報告は無い。

トロントでの経験は、5月26日以来70例の新たな症例が報告されているのだが、再流行のリスクと十分な注意が継続して必要であることを強調している。仮に予防対策が十分で無いなら、たった1例の輸入症例が集団発生の引き金を引いたり、新しい地域へ症例を持ち込むようなことになる。

本日、最近台湾から戻った男性ひとりの新たな症例がドイツから報告され、50人余りの接触者を「隔離」することになった。この男性は、隔離入院している。

----------------------------------------


 
  IDSCホームページへ