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2003/5/31

重症急性呼吸器症候群(SARS)−69



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(5月29日、更新第69報)


中国の状況


中国からは本日、3例の新たなSARS「可能性例」が報告されたが、すべて北京からであった。3例すべてが以前に「疑い例」と分類され、すでに入院していた。

WHOは中国本土の集団発生は、適切なサーベイランス、報告システム、院内感染制御対策が行われている各省においては制御されつつあることに、慎重ながらも楽観的な見方をしている。

中国に滞在しているWHO職員は、中国ではSARSの感染拡大防止の努力の一環として、公共の場での空調設備(エアコン)の使用が止められていると報告している。今までのところWHOは、空調設備がSARSウイルスの拡散に関与をしていることを示す証拠を持ってはいない。すべての証拠は主な感染経路が、密接なヒト−ヒト接触で、感染者が咳やくしゃみをした際に飛散した飛沫によるものであることを示している。

感染制御対策の観点から、医療機関に限定して言うならば、WHOは空調設備を停止し、窓を開放して換気をすることを推奨している。ただしこれは、陰圧室や独立した吸気と排気のシステムのある部屋といった、望ましい選択肢がない場合にだけ推奨されるものである。

上海のSARSの状況を最近検討したWHOの専門家は、SARSの感染拡大を完全に制圧するために上海市はいくつもの対策をとっている、と報告している。航空旅客のスクリーニングは上手くいっているが、同様のスクリーニングを上海のバスや鉄道(地下鉄)の駅で導入することは、現実問題としてさらに困難である。地方自治体はまた、体温検査を数多く導入しているが、中には必要以上に頻回に行われていることもあると思われる。

中国にいるWHOチームは依然として、地方農村部においてどのようなモニタリング手法を導入するのが最も良いかを検討中である。地方当局者は地域密着型(community-based)のサーベイランスシステムを採用する準備をしている。しかし、厳密にはどのような手法が最も効果的であるかはまだ確立していない。WHOのチームは、天津や山西省などの、中国の「ホットスポット」を訪問することを希望している。

患者情報と感染が報告された国に関する最新報告
本日までに28ヵ国から、累積で8,295例の「可能性例」と750例の死亡例が報告されている。これは昨日の報告に比べ、17例の新規症例と5例の死亡例の増加である。新たな死亡例は中国から2例と、香港特別行政区から3例報告されている。

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