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2003/5/30

重症急性呼吸器症候群(SARS)−68



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(5月28日、更新第68報)


台湾の状況


本日台湾からは、22例の新たなSARS「可能性例」と5例の死亡例が報告され、今週初めから始まった症例数の下降傾向が続いている。先週一週間ずっと、毎日多くの新規症例が報告されたが、これは、ある程度は報告方法の変更によるもので、以前から診断保留の分類に入っていた数百人の患者について調査が行われ、SARS症例から除外、あるいは「疑い例」か「可能性例」へ再分類されたためである。このような理由から、ある特定の日に初めて報告された症例も、その多くは実際には発症日が報告日より数日早いものであった。最多の新規症例数の報告は昨週の木曜日で、一日当たり65例の「可能性例」が一覧へ加えられた。

診断保留の未分類症例の処理が終了したので、5月27日と28日の少数例の報告は、本当に新しい症例である。これは、台湾におけるSARS集団発生が終息し始めたことを示している。

この歓迎すべき状況の改善は、救急室での感染対策手技の改善や防護具の使用など、院内感染対策の向上によるものであるといえる。SARS患者を迅速に検知し、隔離するための適切な精度のスクリーニングは、病院を利用する患者や勤務している職員の安全の確保にも寄与している。このような動きは台湾全土に、統一された感染予防対策を徹底するものである。

現時点までに、台湾におけるSARS患者の90%以上に医療施設と関連が見つかっている。

話題を呼んでいる、一般のSARSに関する理解を促進するための、SARSに対する国民意識の向上キャンペーンが先に開始されたが、これは個人的な衛生状態の向上、頻回な体温測定、発熱時の迅速な報告などに重きを置いている。台湾全土を対象とした医師や看護師による、電話のホットラインや問い合わせセンターも設置されている。

台湾は約100の発熱患者用の診療所を設置し、まもなくさらに増設される予定である。(SARSへの懸念が高まり)心配して受診する市民が今後ますます増えると思われることから、これらの施設は救急外来の過密を緩和するものとなる。これらの診療所はまた、SARSに感染しているかもしれない、より重篤な患者との接触の機会も減少させる。

すべてのSARS関連の感染制御対策活動のモニタリングと評価が既に計画され、まもなく施行される。これらの対策が取られれば、WHOは、これまでの他の集団発生が生じた地域同様に、台湾でも現在見られるような患者数の減少が続くであろうと確信している。

本日までに台湾は、累計で610例の「可能性例」と81例の死亡例を報告している。集団発生の拡大は、4月の終わり近くに加速し始めたが、ある病院での感染制御対策に緩みが生じて多数の新たな曝露者が発生し、これらの患者が他の病院へ転院したことにより、新たな医療機関へ感染が広がった。5月2日には「可能性例」は100例に達し、13日には207例に、19日には300例の大台を超えた。その2日後には、台湾からの報告は418例の「可能性例」で、23日には538例を数えた。

報告症例数の急激な増加は、数百の診断保留の症例を処理によって生じたが、現在その増加の勢いは減速してきている。その意味では、台湾の保健当局は集団発生の展開に「追いつき」、現在はSARSの制御により近づいている。

患者情報と感染が報告された国に関する最新報告
本日までに28ヵ国から、累積で8,240例の「可能性例」と745例の死亡例が報告されている。これは昨日の報告に比べ、30例の新規症例と10例の死亡例の増加である。新たな死亡例は中国から4例、香港特別行政区から1例、台湾から5例が報告されている。

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