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2003/5/29

重症急性呼吸器症候群(SARS)−67



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(5月27日、更新第67報)


SARSに関する決議案が採択


世界保健総会(WHA)でSARSに関する決議案採択
本日ジュネーブで、WHOの総会(最高意思決定機構)である世界保健総会の席上、参加190カ国以上の代表の満場一致で、SARS決議案が採択された。総会ではSARSの発生と広がりと、今日までの国際的な対応の報告についても検討した。


この決議案の本文はアジア諸国による草案に基づき、37カ国による7時間以上におよぶ共同作業で微調整された。タイ保健省の上級職員であるViroj Tangcharoensathien博士がこの共同作業のグループの議長を務めた。

決議案では、SARSが「21世紀最初の重篤な新興感染症」であると確認し、SARSや他の新興・再興感染症を制御するために、すべての国々の全面的な援助を呼びかけている。また決議案では、「WHOへ迅速で透明性のある症例報告を行い、依頼された情報を提供すること」を、各国に対し要請している。さらに各国は、「導入した感染制御対策が、疾患の拡大防止に効果がない」場合には、WHOの援助を依頼するように求められている。

決議案そのものと、その採択に先立つ議論において、SARSはヒトをひどく苦しめる原因であるだけでなく、経済の安定と成長や人々の生活に対して、そして医療システムが機能する上での、深刻な脅威であると明らかに認識された。進行中のSARS集団発生に対する対策を通して学んだことは、次に起こるかもしれない新興疾患や、インフルエンザの汎流行(pandemic)や、また、バイオテロへの対策を向上させるために役立つと考えられた。

WHOが、SARSの「最近の地域内伝播」があった地域のリストを更新し続けるように求められる一方、この決議案では、社会経済的影響を最小限に止める方法で、公表を行っていくことの必要性に言及した。

イタリアの代表によって出された声明は、幾人かのSARSによる犠牲者を含むすべての医療従事者の献身を賞賛するものであったが、会場から一斉に沸き起こる拍手喝采を浴びた。

本日検討された関連項目として、参加各国の代表は、国際保健規則(IHR)の改正案に関する決議案と改正のためのタイムテーブル(予定)を承認した。国際保健規則は、WHOによって執行されるが、世界的規模のサーベイランスや、感染症の報告の法的な枠組みを示す。またこの規則は、国際的な感染拡大の防止対策を強く推し進める唯一の方法である。

この規則は、1969年以来基本的には改正されていないため、再興する感染症の脅威から、各国および国際社会を守っていくためには非常に不適切となっていると考えられる。そのために過去20年の間に、およそ30の新しい疾患が起こるという結果となった。多くの発言者が述べたように、SARSによって劇的に示されたこの種の脅威は、高度に交通網の発達した、相互に関連し、緊密に相互依存し合った世界の状況によって増幅される。

国際保健規則の改定作業は2005年以前には終わらないために、本日合意をもって採択された決議案の中で、WHO事務総長を通じてWHOに、政府の公式通知以外の情報源からの流行に関する情報も考慮し、国際的な感染拡大を阻止するための適切な制御手段が取られるように、各国国内で現地調査を行うように要請があった。これらの新しく認められた機能により、集団発生や流行に迅速に、かつ近隣諸国や他の国々への感染拡大を防止するために十分な強制力をもって対応する、WHOの能力が強化されることが期待される。

台湾における状況
台湾にいるWHOの職員は本日、台湾が院内感染制御対策と接触者追跡調査の強化に向かって、重要な大きな一歩を踏み出したことを報告した。保健当局者は広範囲への情報提供キャンペーンを開始し、大がかりなスクリーニング計画を立ち上げ、SARSへ感染した事が疑われる人が他の人と接触するのを防ぐために、発熱(者)診療所を設置した。WHOは、これらの努力は実を結びつつあると評価している。台湾の状況は、これから先徐々に改善していくと期待されている。

本日台湾からは、13例の新たな「可能性例」と4例の死亡例が報告されている。

患者情報と感染が報告された国に関する最新報告
本日までに28ヶ国から、累積で8,221例のSARS「可能性例」と735例の死亡例が報告されている。これは昨日の報告に比べ、24例の新規症例と10例の死亡例の増加である。新たな死亡例は中国から4例、香港特別行政区から2例、台湾から4例が報告されている。

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