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2003/5/26



SARSと空路の旅行
(5月23日)


この文書は広く一般の人々の、海外旅行へ向かう旅行者や乗務員における、特に「最近の地域内伝播」があったと疑われる地域から搭乗する人の、SARS(重症急性呼吸器症候群)に感染するリスクに関した心配に対して答えたものである。世界保健機関(WHO)が推奨する特定の対策に関するさらに詳細な記述は、平成15年4月4日付けのWeekly Epidemiological Record (PDF) から入手できる。WHOは航空機による感染拡大のリスクを更に減らすため、空路を利用した海外旅行に関係する全ての人々に、正確な情報を、時期を逃さずに提供することを目的として、ICAO(International Civil Avian Organization:国際民間航空機関)やIATA(International Air Transport Association:国際航空運送協会)などを含む、国際的な航空輸送機関と密接に協力してきた。

飛行中のSARS感染リスク
航空機内での感染のリスクは非常に低い。現時点で、有症状のSARS「可能性例」4例が搭乗中の感染伝播に関連している可能性があるとされている。このうちの2便は、WHOが3月15日に緊急旅行勧告を発表する以前に起こっており、平成15年3月23日以降、そして各国保健当局によりWHOが勧奨するスクリーニング法が導入された後は、航空機内で感染したSARS症例の発生は報告されていない。乗員乗客のリスクを減じる鍵となる要素は、高熱(38℃、100.4Vを超える熱)、咳嗽、息切れまたは呼吸困難を含む、SARSの主な症状に十分注意を払うことである。

出発前にSARSに適合する症状がある人に対する対策
WHOは、旅行客あるいは乗務員でSARSに適合する症状を発症した者は、完全に回復するまで旅行を延期するように勧告している。更にWHOは、「最近の地域内伝播」がある地域では、全ての乗客と乗務員に対して、体温測定も含むこともある出国時のスクリーニングを確実に導入する事を、各国保健当局へ勧告している。有症の患者の旅行を未然に防ぐことで、そこから生まれるリスクを最小限にすることができる。最後に、SARS「可能性例」の接触者は、曝露に続く10日間は(国内、国外を問わず)旅行をするべきではない。

機体内における予防と対策

個人衛生
すべての乗員乗客は適切な個人衛生の対策を取らなければならない。手を頻繁に洗うこと、特に食事の前には手洗いをすること。搭乗中に乗客あるいは乗務員が咳やくしゃみをする場合は、口と鼻を覆って行い、その後で必ず手を洗うことが必要である。

マスク
現時点の証拠からは、SARSに感染した人に症状が無ければ、他の人への感染性は無いことが示唆されている。従ってWHOは、無症状の乗員乗客に対してマスクの使用を勧めない。しかしながら、「最近の地域内伝播」が報告されている地域からの便に搭乗中に、SARSに合致する症状を示した乗員乗客に対しては以下の対策を取ることを勧奨する:

 1)  防御力のあるマスクの着用*
 2)  可能な限り他の乗客と距離を開けて、隔離し、
 3)  対象となる症状を示している人専用に確保したトイレの使用を可能にする

WHOはまた、SARSに合致する症状を示した人の世話をするよう指定された乗務員には、防御用のマスク、手袋、眼用防御装具(密着型ゴーグルかフェイス・シールド)の着用を勧奨する。

SARS「疑い例」が搭乗している便の到着時の対応
SARSに合致する症状を示した人が搭乗している便の機長は、保健当局による受け入れと管理のための、適切な対応の準備ができるように、到着空港へ無線連絡を入れなければならない。到着後、空港の医務官が患者の診察をする間、乗客の降機は遅れる可能性がある。保健当局の検討後、乗客乗員は続く14日間の連絡先を提出するように求められる可能性がある。他に健康上異常がない乗員乗客は、それぞれの旅程を継続することが認められるはずである。もしも、具合が悪かった乗客あるいは乗員が、SARSの「可能性例」と確認された場合には、提供された連絡先を用いて保健当局は接触者へ連絡する必要がある。

SARS症例の荷物あるいは持ち物を介して感染するリスク
主な感染経路はSARS「可能性例」との密接な直接の接触であり、今日までに、荷物あるいは持ち物を介してSARSに感染する事を示唆する証拠はない。

機体の換気
商業用機体の空気循環システムの構造は、航空機製造業者の指針のみならず、国際航空規則(international aviation regulation)に基づきデザインされている。

空気循環:飛行中は、キャビン内へ新鮮な空気が常に流入する様になっている。3分ごとに、キャビン全体の容量に当たる空気量が交換される。

気流:空気の流れは、キャビン内で細菌やウイルスが拡散する可能性を最小に止める様にデザインされている。

フィルター:主要な航空会社のほとんどがHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルターを設置している。これは、埃や飛沫、細菌、大きな微生物などの、空中の汚染物を非常に効果的に取り除く。

以上から、キャビン内でのすべての微生物の拡散は最小限に抑えられているということになる。

機体の消毒
SARS「疑い例」の搭乗後は、当地の保健当局か決めた、次のような事を含んだ手順に従い、徹底的に機体を清掃することを勧告する。共用の施設はもちろんのこと、症例が着席していた周囲の、キャビン内のリスクがある区域(座席、ヘッドレスト、折りたたみテーブルの表面、端末やその他の「疑い例」が接触した可能性がある物など)の厳格な洗浄と消毒を必ず行わなければならない。SARSの原因ウイルスは、一般的に使用されている消毒剤による消毒で、感染力を失う。

* N/R/P 95/99/100、またはFFP 2/3、またはこれと同等の国家工業基準(NOISH N, R, P 95, 99, 100)、あるいはEuropean CE EN149:2001(FFP 2,3)と EN143:2000 (P2)、または製造国におけるこれと同等の全国的/地域的基準を満たすもの。

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