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2003/5/22

重症急性呼吸器症候群(SARS)−60



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(5月20日、更新第60報)


フィリピンが「最近の地域内伝播」のある地域一覧から除外

WHOは本日、フィリピンを「最近のSARS地域内伝播」があった地域の一覧から除外した。最後にこの地域内で感染した「可能性例」は4月30日に隔離されており、他の者へウイルスが感染拡大する機会は著しく減少した。20日間が過ぎてそれ以上の症例の発生はなく、WHOとしては間違いなく「地域内伝播」は阻止されたと考える。20日間は最長潜伏期間の2倍であり、確立した疫学的原則に基づき、感染伝播の連鎖が断ち切られたことを示す信頼できる指標である。

本日までにフィリピンの保健省は、累計で12例のSARS「可能性例」をWHOへ報告している。そのすべてが迅速に詳細に地域の当局者により調査され、全例が原因症例と結び付けられている。12例のSARS症例のうち5例が輸入例である。輸入例のうち一例は、トロントで感染してフィリピンへ到着し、同国唯一の二次感染鎖を形成し、7症例を感染させた。この7例の二次感染症例はすべて発端者の女性の家族あるいは、いずれも死亡しているこの発端者かその父親の診療にあたった医療従事者であることが確認された。フィリピンから報告されているSARSによる死亡例はこの2例だけである。

フィリピンにおけるSARSの状況は、輸入例に対して効果的な対応をし、また集団発生を迅速に封じ込め、二次感染者の数を抑えるといった、緊急事態に必要な取り組みの規模を示している。この輸入例は、入院前に5つの州に旅行していた。軽い接触があった者と密接な接触者合わせて250名が特定され、追跡調査が入念に行われた。このうち4名が発熱し、SARSの診断が否定されるまで隔離された。

フィリピン保健省は本日WHOに対して、フィリピンの16の地域で3月17日から、SARSの新規患者を探知し、調査するための積極的サーベイランスが継続して行われていると報告した。すべての地域は、感染が疑われる患者の有無について毎日報告している。疑い例の報告が一例でもあると、迅速に接触者追跡調査が行われ、必要性が認められれば、隔離処置がなされる。

フィリピンにおける、政策上の積極的取り組みと医療従事者間の危機感の強さを反映したサーベイランスと報告システムは、効率的に運営されておりこれに基づいた、地域内伝播が現在発生していないという情報には信頼性が置ける。

WHOは、フィリピンへの渡航制限を勧告したことは一度もない。

WHOによる「最近の地域内伝播」がある地域の一覧表は、「SARSの症例定義」を用いて「疑い例」や「可能性例」を検出し、報告することを奨励するために発表されている。医療現場のような、限定された環境以外における地域内伝播が報告されている地域への最近の旅行歴があることは、医師が海外旅行者の症状を診断する際に判断の補助となるとされている。

WHOは確固とした信頼の置ける診断検査がない現状では、SARS症例の検知と適切な管理を決定する指針として、引き続きこれらの症例定義を用いることを勧めている。

患者情報と感染が報告された国に関する最新報告
本日までに28ヶ国から、累積で7,919例の「可能性例」と662例の死亡例が報告されている。これは昨日に比べ、60例の新規症例と19例の死亡例の増加である。
新たに中国から5例、香港特別行政区から2例、台湾から12例の死亡例が報告された。台湾は本日、最も多い39例の新たな「可能性例」を報告した。

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