感染症情報センター Infectious Disease Surveillance Center

WHOによる重症急性呼吸器症候群（SARS）
多国同時集団発生の報告
（5月15日、更新第56報）

中国の状況、輸血および大きなイベント・集会に関するWHO指針

中国の現状
中国当局は本日、52例の新たなSARS「可能性例」と4例の死亡例を報告し、累計で中国本土からの報告が5,163例の「可能性例」と271例の死亡例となった。

新しく報告された症例の多くは北京（27例）、山西省（7例）、河北省（6例）からであった。新たな4例の死亡例は、北京（1例）、河北省（1例）、内蒙古自治区（1例）、天津市（1例）からの報告であった。

中国保健省は現在、最新の「可能性例」と「疑い例」の報告日の「日付」を情報として提供している。引き続きすべての省で、新たな症例が報告されている。

広西省の中国保健省とWHOの共同チームは、近々調査を終える。調査チームのメンバーは、幾つかの「可能性例」が「疑い例」と誤って分類された可能性はあるが、その数は少ないと予想される。各施設の訪問と報告データを検討した結果、チームはこの地区では大規模な未報告の感染の伝播は生じていないと考えている。

血液の安全性確保に関する新指針
WHOは本日、変質しやすく長期保存に適しない血液製剤の輸血により、SARSが伝播する可能性の理論的リスクに対する予防原則に関する一連の提言を発表した（血液製剤の予防原則に関する提言）。WHOはこの提言はあくまでも予防的なものであることを強調している。

大規模イベント・集会の指針
WHOは本日大規模イベント・集会の主催者が、SARSの「最近の地域内伝播」が認められた地域から参加する人々を迎える事に関する一連の提言を発表した。

現時点のSARSに関する知見からは、有症者だけが感染性を持ち、この疾病を伝播する。感染の伝播には密接な接触が必要である。
WHOは、SARSの「最近の地域内伝播」が認められた地域からの旅行者で、健康な人がマスクを着用することは推奨していない（大規模イベント・集会の指針参照）。

患者情報と感染が報告された国に関する最新報告
本日までに29ヶ国から、累積で7,699例のSARS「可能性例」と598例の死亡例が報告されている。これは昨日に比べ、85例の症例と11例の死亡例の増加である。新たな死亡例は中国から4例と香港特別行政区から7例が報告されている。

台湾（中国）は本日、26例の新規症例を報告したが、死亡例の報告は無かった。これにより、累計で264例の「可能性例」と30例の死亡例となった。昨日から台湾は、中国本土に続く新規症例数を報告するようになった。香港特別行政区からは5例の新たな「可能性例」の報告があったが、シンガポールからは新規例の報告は無かった。