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2003/5/14

重症急性呼吸器症候群(SARS)−53



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(5月12日、更新第53報)

 

シンガポール及び香港の状況、「最近の地域内伝播が疑われる地域」の解釈

シンガポールの状況
本日WHOの専門家は、SARS集団発生の収束に向けての対策の進捗状況を検討するために、保健大臣兼財務副大臣のLim Hng Kiang氏や、保健担当国務大臣(Minister of State for Health)のBalaji Sadasivan博士をはじめとするシンガポールの官僚達とテレビ会議を行った。

シンガポールは、SARSの感染拡大の防止を目指し、たくさんの感染防止対策を講じてきた。SARS患者を管理するための国立特定病院に変更されたタントクセン病院では、感染防止対策を強化するために特別な努力が行われている。

またシンガポールは、出国するすべての航空機旅客に厳しいスクリーニング(ふるいわけ)を導入した。SARSの「最近の地域内伝播」が報告されている地域からの入国者も、スクリーニングされる。19台の赤外線体温測定器が軍から借り上げられて空港に設置された。その器械は0.2℃の単位での体温変化を正確に検知することができる。

出入国する全ての旅客者を確実に検査するため、来週さらに7台の測定器が加えられる予定である。先週は、スクリーニングされた70,000人の旅客のうち58人の発熱が検知され、SARS指定病院に搬送された。このうち2人はその後SARS「疑い例」として入院したが、現在のところいずれも「可能性例」に変更されてはいない。既知のSARS症例との接触者はすべて10日間自宅隔離され、監視下に置かれている。

SARSの集団発生の収束に向けてのシンガポールの対応は、WHO感染症対策局長のDavid Heymann博士によって「模範例である」と評された。博士は「シンガポールは、SARSへの対応において最も成功した国のうちの1つである。」と述べている。

香港の状況
本日香港は5例の新たな「可能性例」を報告した。香港ではこの8日間の新たな症例数が1桁台であり、順調に減少している。WHOの専門家は本日、香港の衛生福利食品局長の楊永強(Eng-kiong Yeoh)博士および衛生署長のMargaret Chan博士ともテレビ会議を行った。WHOは、香港におけるSARS発生状況報告の透明性の高さと高い協力水準は、すべての国々にとって実り多いものであると香港当局を賞賛した。
香港は厳格な接触追跡調査を導入した。これにより、既知のSARS症例の接触者すべてが自宅隔離され、さらに、これらの接触者が香港を離れられないようにするため、彼らの「香港IDカード番号」は移民局に通告される。
接触者追跡調査によって、香港のSARS症例の大多数について疫学的な関連が確認された。しかし、患者の約8.6%で曝露源が特定されていない。詳細な調査が現在進行中である。

香港から他の地域へのSARS輸出症例は、判っているものでは4月18日に発生した例が最後である。

「最近の地域内伝播が疑われる地域」の解釈
「最近の地域内伝播が疑われる地域」の表は、「疑い例」及び「可能性例」の特定や報告のための「SARSの症例定義」の利用を促進するために、WHOによって公表されている。病院のような独立した特定の環境下以外における「地域内伝播のある地域」への最近の渡航歴は、医師が海外旅行者に見られる症状を診断する上での助けとなる。
国や地域名がこの段階分けされた表に掲載されても、WHOがその国や地域への渡航制限を勧告していることを意味するものではない。

WHOは本日の最初の仕事として、海外旅行に関する勧告を掲載した「SARSの旅行勧告表」を新たにウェブサイトに載せた。この表には推奨される2つの方法が示されている。「その地域から出発する旅客に対する出国時スクリーニング(ふるいわけ)の実施」と、「その地域へのどうしても必要な旅行以外の渡航の延期」である。この表は毎日更新される予定である。

WHOは、これ以外の地域には渡航制限を勧告していない。

従来の「最近の地域内伝播が疑われる地域」の表も毎日公表され続けるが、これは今後「SARSのサーベイランスのための症例定義」からリンクされる形で掲載される。この掲載様式の変更は、表の目的と重要性の誤った解釈が生じる可能性を減らすために導入された。

報告症例数と報告国の更新
本日までに30ヶ国から、累積で7,447例の「可能性例」と552例の死亡例が報告された。これは土曜日に最後に更新された時に比べ、168例の新たな症例と26例の死亡例の増加である。新たな死亡例は中国 (17)、香港特別行政区(6)、台湾(2)、中国(2)及びシンガポール(1)から報告された。

中国は本日144例の新たな「可能性例」を報告し、累積では252例の死亡例を含む5,013例となった。新たな症例の多くは北京(48)と河北省(11)から報告された。
台湾は12例の新たな「可能性例」を報告し、累積では20例の死亡例を含む184症例となった。

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