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5/12/2003

重症急性呼吸器症候群(SARS)−52



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(5月10日、更新第52報)

 

中国、フィリピン、モンゴルの状況

中国の状況
中国は本日新たに85例のSARS「可能性例」を報告した。この数は、北京からの54例の新たな症例と5例の死亡例を含んでいる。これにより,中国は累積で4884例の「可能性例」と235例の死亡例となった。

北京は中国本土の中で最も被害の大きい地域のままであり、累積で2227例の「可能性例」と116例の死亡例となっている。今月初めからは、862例の「可能性例」と41例の死亡例である。今月の中で最も多い発生があったのは5月1日で,122例の「可能性例」と7例の死亡例であった。

本日の発生数は少なくなってはいるが、北京のWHO職員は,北京でのSARS流行が減少し始めたという判断をすることに慎重になっている。この流行の今後の動向に影響する多くの要因については、未だ不明のままである。例えば、北京の「可能性例」の半数には、SARS患者との接触歴の記録がない。全てのSARS症例から得られる感染源に関する知見は、流行が起こっている原因を理解する助けとなり、またSARS制圧の助けとなる。

WHO職員は北京当局の職員と共にデータ分析を改善し,流行状況に応じた政策を建てている。最近報告されている多くの症例にSARS患者との接触歴がないことは、どのように症例報告がなされているかだけでなく、ウイルスがどこで、どのように感染するのかと関係しているだろう。

フィリピンの状況
5月10日、フィリピンは累積で10例のSARS「可能性例」と2例の死亡例を報告した。衛生当局は、この10例はすべて1人の輸入症例の感染伝播鎖に関連したものと判断しており、全例が病院に隔離された。

この10例の接触者は追跡調査され、当局は全接触者を特定し隔離したと確信している。最後の2例が隔離されたのは4月30日だった。接触者全員がすでに観察期間を過ぎており、一人もSARSを発症していない。

フィリピンにおける一連のSARS症例の発生は、カナダのトロントからフィリピンに戻った1人の輸入症例から始まった。この輸入症例はSARSにより死亡し、彼女の父親もまた死亡した。残りの8例のうち2例は退院し、他は入院中だが快方に向かっている。
WHOは、この一連のSARS症例の発生は十分制圧されたと考える。フィリピンでの伝播の危険性が増すことはないであろう。従って、WHOはフィリピンへの旅行制限を勧告しない。

モンゴルの状況
昨日、モンゴルは最近の地域内伝播が疑われる地域から除外された。地域内伝播による1例が適切に隔離されてから20日間が経過した。

WHOは早期より専門家をモンゴルに派遣し、その症例群を調査し技術支援を行った。隔離施策は適切に判断され、接触者の追跡調査は完璧に行われた。従って、WHOはモンゴルにおける一連のSARS症例の発生は十分制圧されたと考える。

モンゴルのSARS「可能性例」は累積で9例である。死亡例はない。9例の内6例は回復している。残りの3例はSARS指定病院に入院し隔離されている。

WHOはモンゴルへの旅行制限を勧告しない。

報告症例数と報告国の更新
本日までに、累積で7296例のSARS「可能性例」と、526例の死亡例が30の国から報告されている。昨日と比較して119例の「可能性例」、12例の死亡例の増加である。
新たな症例の多くは中国(85例)と台湾(23例)からの報告である。新たな死亡例は中国(8例)、香港特別自治区(2例)及び台湾(5例)で発生した。

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