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5/6/2003

重症急性呼吸器症候群(SARS)−47



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(5月5日、更新第47報)


SARSウイルスの生存期間、中国の状況

5月4日、WHO共同研究ネットワークの研究者らがSARSウイルスの生存期間および消毒剤の有効性に関する初の研究結果を発表した。病院で普通に使用されている様々な消毒剤の有効性についても報告し、現在推奨されている感染制御法の有効性を確認している。

香港、日本、ドイツのネットワーク研究所における新しい研究結果によると、SARSウイルスは乾燥したプラスチックの上で48時間生存する。現在進行中の他の物質表面上の安定性に関するテストについては、最初の結果が7日に出る予定である。

便中での生存時間も検査されている。ある香港の研究所における実験では、便中で少なくとも2日間、尿中で24時間生存可能であるという結果が得られた。香港の別の研究所では、SARSウイルスは下痢便(酸性度は通常便よりも低い)中において4日間生存したと報告している。このことから患者の下痢便で汚染された物質の表面でウイルスは4日間生存する可能性を示唆する。しかしながら、感染を起こすウイルス量は依然不明である。糞−口感染経路の役割についての結論についての確固とした結論が出るまでには更なる研究が必要である。

新たな研究の結果は、頻回の手洗い、適切な清掃、SARS患者を扱う病院での適切な感染コントロールの必要性をさらに強調するものである。感染性飛沫の拡散が最も重要な感染経路である。頻回の手洗いを含む個人の良好な衛生状態の確保が、SARS患者と同じ場所にいるすべての者、特にSARSの「可能性例」に濃厚接触する者にとって重要である。

現在、SARSウイルスの便、痰、尿中への排出という経路は確立している。3月下旬、香港のアモイガーデンにおいて、住民320名以上という大規模かつ突然の集団発生が起こった。この集団発生はSARS感染が環境要因に起因する可能性を示唆する。その後の調査から下水の汚染が何らかの役割を果たした可能性が出ている。アモイガーデンにおけるSARS患者の66%が下痢症状を有した(他の集団発生では2%から7%であった)。アモイガーデンおよびそれ以前の、あるホテルの1フロアを訪問した人に関連した集団発生を除いては、SARSはその大部分が咳やくしゃみをした際の感染性の飛沫に、人−人経路で濃厚に曝露されることによって感染すると考えられている。

これまでの環境中におけるSARSウイルスの性状については、人に風邪症状を引き起こす種類のコロナウイルスの情報を基に推測されてきた。WHOは、SARSウイルスが今まで知られているコロナウイルスの人型とも動物型とも同様ではなく、異なった振る舞いをする可能性について憂慮している。現在ネットワーク研究所で行われている研究によって、このウイルスに対する感染制御法が判明するだろう。WHOは、SARSウイルスが最新の感染対策を行っている高度医療機関の職員に広がり続けていることを懸念している。

中国の状況

中国当局は新可能性例160人と9例の死亡を報告した。中国から計4280例の可能性例と206例の死亡例の報告があった。新規報告の中で98例が北京からの報告であった。次に山西省の報告が多い。9例の死亡例のうち3例は北京、広東省から3例、山西省から2例、天津省から1例であった。

中国は世界の可能性例の65%、死亡例の44%の報告がある。

北京では約16,000人が隔離されており、山西省の主都太原では360人の可能性例が報告されており、全学校が閉鎖されている。

WHOは中国の地方の状況を危惧している。そこではサーベイランスや報告システムが、疑い例や可能性例を把握するのに十分でないかもしれない。甘粛省、江西省といった資源に乏しい地域では保健体制の許容量についても重大な疑問が残る。

世界の症例の最新情報

本日までに27カ国から可能性例6583例、死亡例461例の報告がある。

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