5/3/2003

重症急性呼吸器症候群（SARS）−44

WHOによる重症急性呼吸器症候群（SARS） 多国同時集団発生の報告 （5月1日、更新第44報）

中国における状況
中国、特に北京では、引き続き着実にSARSの新しい症例が増加している。本日中国は187例の新規症例と11例の死亡例を報告したが、半数以上は首都北京からの者であった。

中国にいるWHO当局者は、SARSの実務情報の中央データベースを作成することは疾病の対策上大きな助けとなると信じている。これからの数ヶ月が世界レベルのSARS封じ込めの試みにおいて、最も重要な位置を占める事が明らかになるだろう。今や封じ込めの成否は、中国で感染が制御できるかどうかに懸かっている。

幾つかの中国西部と北部の貧しい地方で、どのように病院への援助ができるかをWHOは検討している。これらの資源に乏しい地方では、SARS患者を適切に隔離し、治療するための必要な施設がないのではないかという懸念が持ち上がっている。さらに多くの、感染症の取り扱いを専門とする第一線の病院スタッフが、必要になると考えられる。この疾病の伝播の継続を防止するために必要な感染制御対策などの指針もまた、中国の国内医療システムにとって必要である。

上海は、伝播確認地域から帰国した旅行者に14日間の検疫期間を強制する、より厳格なSARS予防対策を実施する予定である。市内に入ってくる人々をスクリーニングする検問所がすでに設けられ、検温と健康申告書（health declaration form）の記入が求められている。

WHOはSARS症例定義を改訂
WHOは本日臨床検査結果の適切な利用方法へ配慮し、SARSの症例定義を更新した。SARSウイルスとウイルスに対する抗体を検出する幾つかの診断検査が、複数の研究所で開発された。しかしながら、現在用いることができるすべての検査方法には、それぞれ独自の長所、短所がある。

そのために、WHOは引き続き臨床家に対して患者の症例定義の区分を、臨床検査の結果を待っている間に、あるいは検査の陰性結果に基づいて引き下げないようにと助言している。

WHOは臨床検査の結果の不適切な利用が、患者管理と感染制御の適切なレベルの選択に悪影響を与える事を懸念している。従って、SARSウイルスに関する陰性の検査結果は、「疑い例」と「可能性例」のどちらにおいても、感染を否定するものではない。これに対して、精度管理された検査室での陽性結果は、検査が適切に行われ、解釈されている事を前提とすると、SARS症例管理の効果を増強することができる。

臨床検査でのウイルスが陽性の結果は、患者がウイルスあるいはその遺伝子断片を排出している事を示し、他者への感染のリスクを引き起こす可能性がある。結局SARS「疑い例」で検査結果（ウイルスの分離かPCR）が陽性のものは、「可能性例」として分類され、報告されなければならない。

精度管理の指針、特にPCR検査に対するものは、WHOウェブサイト上に掲載されている。（SARS：診断検査の入手状況と検査方法の実際４−２を参照）

WHOが診断検査の標準化を支援
WHOはSARSの共同研究ネットワークの参加研究施設とドイツのRobert-Koch Instituteの支援を得て、SARSの診断検査の信頼性を向上させ、精度管理を支援する事を目的として、標準化試薬の開発をしている。ウイルス学的検査の標準試薬は、SARSの集団発生が見られている国々の保健省へ直ちに提供される。この発送は5月5日から始まる。血清学的検査のキットは5月12日には入手可能となる。

各国保健省は、国立研究所の指定と入手希望状況をWHOへ申し込んでもらいたい。

連絡先： sarsvirus@who.int　
あるいは fax:0041 22 791 48 78

診断用標準化試薬はすべての国で、3つの研究施設にまで提供される。しかしながら、中国ではすべての省の主な研究所すべてに十分に提供される予定である。

WHOは現在、診断検査の有効性を評価するためと精度管理の基準を確立するために、外部施設での検定を企画している。

患者情報と感染が報告された国に関する最新報告
本日までに27ヶ国から、累積で5,865例の「可能性例」と391例の死亡例が報告されている。これは昨日に比べ、さらに212例の症例と19例の死亡例の増加である。新たに中国から11例、香港特別行政区から5例、台湾（中国）から2例、シンガポールから1例の死亡例が報告されている。ポーランドは本日、初めての症例を報告している。

英国と米国は本日、最近地域内感染が見られた地域の一覧から削除された。両国では、最後の地域内感染が20日以上前にみられた。天津（中国）とウランバートル（モンゴル）が一覧に追加された。

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