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5/1/2003

重症急性呼吸器症候群(SARS)−42



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(4月29日、更新第42報)


トロントへの旅行勧告と中国の状況


WHOは明日トロントへの旅行勧告を解除する
WHO事務総長Gro Harlem Brundtland博士は今夕、トロントへの旅行勧告の取り下げが明日有効になると発表した。

中国の北京、香港特別行政区、広東省、山西省に対する旅行勧告は、引き続き有効である。

旅行勧告は幾つかの要素を考慮に入れ発表される。これらの要件にはSARS「可能性例」の症例数の多さ、地域内での伝播が確認された症例が最後に報告された日、輸出例が報告された最終日などが含まれる。

Brundtland博士はカナダで先週から、三つの変化が有ったことに言及している。SARS「可能性例」の数が減少しており、地域内での感染伝播が示唆される最後の症例が出てから20日が経過し、確認された新しい輸出例が発生していないことである。

WHOはまたカナダ当局が、助言通りに積極的なスクリーニングを空港に導入する予定であることを確認した。

トロントが現状では、伝播確認地域であることには変わりはない。ベトナムは自国内のSARS集団発生を収束した初めての国であるが、昨日、伝播確認地域の一覧表から除かれた。

SARSは21世紀における最初の大きな新感染症であり、互いに密接に連携した、移動性の高い社会によって提供された機会を最大限に利用し、素早く世界中に広がった。数々の旅行勧告をだす目的は、新しく、重症化し、余りよく分かっていないこの感染症が、これ以上の国際的拡大を防ぐことにある。

旅行勧告には日々検討が加えられている。勧告は一連の疫学的クライテリアに基づき出される。集団発生の規模と急激な拡大のために、一人の感染した人が、感染制御対策の網の目をくぐり抜け国際旅行をして、いずれかの土地で別の集団発生の種をまくことによって、WHOの主な関心である、国際的な公衆衛生上のリスクが発生する。

中国の状況
合計202例の新しいSARS「可能性例」が本日、中国全土から報告されたことにより、累積で3,303症例となった。本日9例の死亡例も報告されている。

現時点で中国の31の省のうち21省からSARS「可能性例」が報告されている。これに加え4つの省から「疑い例」が報告されている。

北京は引き続き多くのSARS症例を報告しており、本日新たに152例の「可能性例」と9例の死亡例が報告された。この中国の首都は今までのところ累積で1,347「可能性例」と59死亡例を報告している。

中国で最大の累積症例数は依然として、昨年11月中旬にSARS集団発生が始まった広東省に集中している。これらの内のわずか10%が現在も加療中である。1,201人の患者が退院し、51人が死亡したため、現在は150人未満のSARS症例が広東の医療機関に入院中である。

これとは対照的に、急速な新規症例数の増加が北京の保健システム、特に病院の収容能力へ過重な負荷をかけている。北京では86%の症例(1,198例)が現在加療中である。

中国西部の状況が懸念される。山西省と内モンゴル自治区は、それぞれ23例と7例の「可能性例」を新たに報告し、累積報告数が266例と120例となった。

WHOは北京にある地方当局の事務所と連携をとり、SARSの状況をより詳しく経過観察し、現状の感染制御対策の効果を評価するために必要となる情報の、再検討と質の向上に努めている。WHOの専門家のチームは近々SARS指定病院として開院する病院を訪問し、準備状況のレベルを検討した。

患者情報と感染が報告された国に関する最新報告
本日までに27ヶ国から、累積で5,462例の可能性例と353例の死亡例が報告されている。これは昨日に比べ、226例の新たに報告された症例と24例の死亡例の増加である。

226例の新しい症例のうち、202例が本日中国から報告されていたが、このうち152例が北京で発生した。情報技術上の問題から、昨日(4月28日)に中国当局から報告された症例数は、昨日の累積報告数の更新に反映されなかった。

死亡例24例は、カナダから2例、中国から9例、香港特別行政区から12例、シンガポールから1例が報告されている。


 
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