IDSC 緊急情報トップ >
 

 

4/30/2003

重症急性呼吸器症候群(SARS)−40


(仮訳)

WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(4月26日、更新第40報)


上海、香港、ベトナムの状況

WHO上海チームによる中間報告

月曜日(4月21日)から上海へ入っていた6人の専門家からなるWHOチームが、その調査結果の中間報告を行った。このチームは上海当局により、中国で2番目に大きなこの都市におけるSARSの状況を検討するために招かれていた。

彼らの活動の中には、SARSのサーベイランスと報告のシステムの検討、公式に報告されているより実際の症例数が大きいのではないかといった「未確認情報」の調査、そして10の医療機関と、3つの地域疾病対策センターと市疾病対策センターへの訪問が含まれていた。このチームには、希望するすべてのデータと患者台帳の閲覧、施設への事前通達なしの自由な訪問が許されていた。

このWHOのチームは、症例の系統的な過少報告の証拠はなく、準備対策のレベルは良いという結論に達した。症例の報告は開示され、率直で、正確であるとされた。過去3~4週間のあいだに当局は、2つの病院をSARS患者の治療専門に指定し、「咳と発熱」のクリニックを設立した。政府はSARS問題の解決に向けた、非常に強く責任ある取り組み姿勢をチームに対して示した。

何故上海が、北京で見られたような大きさの集団発生を免れたのかに関しては、多くの疑問が残る。より多くの症例が発生していたなら、現行のシステムで対応できたのかどうかははっきりしない。

香港の状況

保健当局は17例の新しい症例を発表した。これには、3例の医療従事者と、本日までで最も若いSARSによる死亡例を含んだ6例の死亡例が含まれている。この若年の死亡例は、淘大花園(アモイガーデン)住宅団地の患者集積群に属する28歳の元来健康であった男性である。このほかの死亡例は、38歳、40歳、61歳、70歳の男性と、45歳の女性であった。この中で、70歳の男性だけが、慢性疾患の病歴を持っていた。

昨日発表された死亡例6例中3例が淘大花園(アモイガーデン)の患者集積群からであった。

当局は引き続き東頭(Tung Tau)住宅団地の小さな患者集積群を調査している。ここでは6例が、上下に連なった住居から発生している。現在までに入手可能な疫学的証拠からは、淘大花園(アモイガーデン)での患者集積の様に、ひとつのビルに居住する320人以上もの住人を巻き込む規模の集団発生が、この住宅団地で発生することを予期させるような状況は存在しない。

当局の専門家と協力し、原因となった可能性があるウイルスの環境源の調査を行うために、WHOの環境と「sick building(内部環境が劣悪なビル)」の専門家が香港に到着した。

ベトナムでは18日間新たな症例の発生がない

ベトナムにおけるSARSの状況は、18日間連続して63症例と5死亡例で変化なく安定している。いくつもの「未確認情報」の積極的探査によっても、この期間を通じてSARSの新しい症例が検知されることはなかった。この傾向が継続するなら、月曜日にはベトナムは伝播確認地域の一覧表から取り下げられ、SARSの集団発生を収束させた最初の国となる。

ベトナムのWHO当局者は、現在の高い警戒水準に緩みが出ないように注意を喚起した。なぜなら、ひとつの輸入症例が、2月に見られたような集団発生の原因となり得る危険が持続しているからである。しかしながら、集団発生の当初からベトナム政府は、強く責任ある取り組み姿勢を高いレベルで示した。専門調査団と地方の調査団が設立され、良い働きをした。感染制御の適切な手法が迅速に確立され、病院スタッフへの感染拡大の防止に効果的であることが徐々に証明された。

輸入症例を一例検知した国において、このベトナムに見られる新しく確立された基本的取り組みの構造が、次の大きな集団発生の防止に最も効果的に働くと考えられる。

患者情報と感染が報告された国に関する最新報告

本日までに26ヶ国から、累積で症例4,836例と死亡例293例が報告されている。これは昨日に比べ、190例の新規症例と19死亡例の増加である。新しい死亡例はカナダから3例、中国から5例、香港特別行政区から6例、フィリピンから1例、シンガポールから2例が報告されている。


 
  IDSCホームページへ