IDSC 緊急情報トップ >
 

 

4/21/2003

重症急性呼吸器症候群(SARS)−33


(仮訳)

WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(4月18日、更新第33報)


香港と中国の最新情報、そしてインドからの初めての症例報告

香港:淘大花園(アモイガーデン)の集積群に関する調査結果
香港環境運輸労働長官は他の8つの政府機関とともに、淘大花園(アモイガーデン)住宅団地に集中した、SARS症例の尋常でない集積に関する広範な調査結果を発表した。

疫学的、環境学的、実験的な研究に基づくこの調査によって、SARSウイルスで汚染された下水汚物が可能性のある点曝露源であると特定した。疫学的調査の焦点は、3月14日にSARSの症状を発症し、3月14日と19日に淘大花園(アモイガーデン)のブロックEに親戚を訪れた33歳の男性の果たした役割に集中した。その時の彼の症状は下痢を含んでいた。

集団発生の疫学から、この患者は2人の親戚と2人の看護婦の感染と関連付けられ、当局は集団発生の原因と考えている。引き続く他の住人への急速な感染拡大(4月15日の時点で321症例)には、浴室の排水管にU字管が整備されてなかったこと、浴室の排気用換気扇がさらに状況を悪化させたこと、ブロックEの汚水配管がひび割れていたこと、浴室の窓が開口していた建物間の明り取り部分の空気力学的効果などが関与していたと考えられている。

環境調査では研究室で、SARS患者の浴室のトイレ便器のふき取り検体からSARSウイルスを検出したが、環境より採取した他の多くの検体からは検出しなかった。

「これは信憑性のある仮説である。この疾病を伝播している環境因子にどのようなものがあるのかを発見するためには、このような調査が必要である」と、WHO感染症局の局長であるDavid Heymann博士は述べた。

この集団発生の発生源と感染拡大の一般的でない経路を確定するには、さらに調査が必要であると考えられる。

今回の調査では、SARSウイルスが空気、水、感染性の粉塵エアロゾルなどで伝播したことを支持するような、疫学上あるいは実験的証拠は全く発見されて無い。また、「本日までに集められた証拠に、空気感染の可能性の憶測を裏付けるものが無いことに、実に勇気付けられる」とHeymann博士は述べている。

淘大花園(アモイガーデン)住宅団地におけるSARSの伝播は、ウイルスの環境内への拡散の可能性が関与している初めての事例である。現在もそうであるが、この通常とは異なる形式の集団発生については、徹底的な多元的調査が確実に行われている。この集団発生が一旦完全に理解されたなら、次の重要な段階は、他の事例において類似の状況下で、環境内拡散が発生することを防ぐことができる対策を確立することである。

中国はSARSに関して当局担当者に通告
中国の最高指導者たちは今朝、当局担当者にSARSの拡大状況を隠さず報告するよう警告した。中国の国家通信機関である新華社(Xinhua)によると、北京の胡錦濤(Hu Jintao)国家主席に率いられた中国の最高指導部は、SARSの症例隠しに対してはっきりと警告し、「SARSの状況を正確で、遅滞なく、包み隠さず報告をする」ように要請した。中国の首脳部はSARSを国家の改革上の、また発展と安定における深刻な脅威と呼び、党支部および地方行政指導部が、それぞれの責任管轄領域における状況に責任を問われるであろうことを付け加えた。

今週はじめWHOの北京調査チームが、北京にはおそらく公式に報告のあった37例では無く、200症例あまりのSARS患者がいるだろうと推計した。できれば、広東省で取り入れられた、毎日の報告数に信頼性と透明性があると考えられるモデル手法を用いて、北京が報告システムを改善することをWHOのチームは提言した。WHOの専門家はまた、北京がそのSARS「疑い例」の症例定義を再考することを勧告した。

現状では、北京から報告されている「疑い例」の多くは、WHOによって設定され、WHOへの公式な症例数の届け出で用いられている症例定義の「可能性例」にあたる。WHOは毎日累計報告で「可能性例」しか報告していないので、このような北京の一部での変更は、WHOへの報告症例数の大きな増加となる。

インドで最初のSARS症例が報告
昨日インドから最初のSARS症例が報告された。西海岸のゴア州にある国立ウイルス研究所は、SARSを引き起こす新型コロナウイルスが、患者の検体から検出されたことを確認した。シンガポール、香港、そしてムンバイに短時間立ち寄ったこの男性の患者は、回復したとされているが、依然隔離されている。

もしインドへSARSウイルスが到達したら、インド亜大陸の込み合った都市や医療機関へ急速に広がるのではないかと恐れられていた。WHO担当官はこの一例が検知され、報告されたことは、サーベイランス機構が高い警戒水準にあり、よく機能していることを示しており、よいニュースであると思っている。なぜなら多くの国で示されたように、新規症例の迅速な発見、適切な管理、そして効果的な接触者追跡調査によって、隔離した症例から他の人に感染が広がることを防ぐことができるからである。

患者情報と感染が報告された国に関する最新報告
本日までに、5つの大陸の25ヶ国から、累積で症例3,461例と死亡例170例が報告されている。これはWHOが最後に報告を更新した時点に比べ、72例の新規症例と5死亡例の増加である。新しい死亡例は香港特別区から4例と、シンガポールから1例が報告されている。


 
  IDSCホームページへ