IDSC 緊急情報トップ >
 

 

4/15/2003

重症急性呼吸器症候群(SARS)−26


(仮訳)

WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(4月10日、更新第26報)


各国における主なSARS集団発生の状況

中 国
WHOは今、北京の保健当局とさらに議論を深めようとしている。この行動は、昨日のWHO調査チームの北京のSARS症例、症例報告システム、接触者追跡調査に関した報告に関連した懸念に引き続くものである。

中国は本日、10例の新規SARS症例と2例の死亡例を報告している。

これとは別に、中国の二つの研究所はSARS患者から採取した検体からコロナウイルスを検出した事を発表した。この新しいウイルスは、ヒトおよび動物に感染する既知のどのコロナウイルス科のウイルスとも異なる。そしてこれは、病原体の同定と診断検査の開発を促進するために設立された、11の研究所から成るWHO電子ネットワークの参加者たちにより分離された。コロナウイルスが検出されたことにより、平成14年の11月中旬に広東省で発生した集団発生が、SARSウイルスにより引き起こされた証拠がさらに追加された。

香 港
香港の保健当局は本日、SARS確定症例の家庭内接触者は直ちに10日間の自主的自宅隔離を行うことを必要とすると発表した。この新しい取り決めは、SARS症例の早期発見と早期治療を督励することと、感染拡大のリスクを確実に最小に抑えることを意図している。香港は累積で998症例と28死亡例を報告しており、SARS集団発生の深刻さは中国の直ぐ次にランクされている。

家庭内接触者は自宅での隔離か、ホリデー・キャンプでの隔離かを選択することができる。隔離期間中の訪問者との接触は認められず、自宅あるいはキャンプの隔離場所を離れることも、例外的にしか認められない。

この隔離期間中に、香港保健省は健康をモニターするために健康診断を行い、警察当局が隔離の遵守状況を調査する。

この新しい規定に当初70〜80所帯、およそ150人あまりが当てはまると、保健省の職員は推計している。

これとは別に、淘大花園(アモイ・ガーデン)の異常な症例集積の感染原因について続けられていた調査で、動物からウイルスを検出することはできなかった。この結果は、SARSが住居を垂直につなぐ何らかの共通の機構を介して、ゴキブリや齧歯類によって広がったという、以前の仮説を否定した。淘大花園(アモイ・ガーデン)からのほとんどの症例は、一翼に属するブロックEのひとつの棟から出ていた。

シンガポール
シンガポールにおける危惧の中心は、4月5日に初めて報告された、タントクセン病院のスタッフの間に集積した21人のSARSの「疑い例」と「可能性例」である。WHOのスタッフと保健省職員による詳細な調査により、ほとんどの症例が、ひとりの60代の中国人男性まで遡ることができた。この患者は、3月5日〜20日の間に他の病院(シンガポール総合病院)で慢性の腎疾患と糖尿病の治療を受けていた。この病院ではこの患者の受診に引き続きスタッフ、面会者、患者のあいだで、19例の「可能性例」と33例の「疑い例」の患者の集積が発生した。ほとんどが、この中国人患者に関連づけられた。

SARS症例の2番目の病院内集積例は、ひとつの決定に関連して起こったと今では考えられている。つまり、シンガポール総合病院の患者をすべて、タントクセン病院の2つの病棟へ移した結果であるとされている。この第二の患者集積は、中国人患者の接触者から起こったことが強く疑われている。調査によって症例発症の原因が新しい感染経路ではなく、既に知られている患者との密接な接触時の曝露の形に当てはまる事が、徐々に明らかに成りつつあり、関係者は胸をなで下ろしている。

ベトナム
ベトナムからの症例数は62から変わっていない。WHOと保健省の職員は、州立病院の症例に連なる患者がここ数日の間に出てくるものと予測している。しかしながら、非常に警戒しているし、接触者追跡調査は厳しく行っているし、また的確な感染制御手法が導入されている。

カナダ
ヘルス・カナダは累積で97症例と10死亡例を報告している。2日間連続して、わずか3例ずつの新規例の増加である。オンタリオ州は94例の「可能性例」を報告している。すべての症例がアジアへ旅行したか、家庭内であるいは医療施設でSARS症例に接触している。ブリティッシュ・コロンビア州から3例の「可能性例」が報告されている。

マレーシア:三番目の「可能性例」
WHOスタッフはマレーシアの保健当局と協力し、これ以上の集団発生の拡大を防ぐ為に、国内で報告のあった3例のSARS「可能性例」について、最近の旅行歴や医療機関の受診状況を含めた、詳細な調査を行っている。本日新たに2例が報告された。国内の3例目の症例の調査から、この患者が中国の北京と、タイのバンコクへ旅行歴があることが解った。この人は、バンコクで発症していた。マレーシアのペナンへ戻って、この患者は2日間に渡り、2つの個人病院を受診している。感染の可能性がある接触者は現在追跡調査中である。

接触者の積極的追跡調査は、感染原因に曝露された可能性のある個人を見つけ、症状発現時に取るべき手段に関して注意喚起するために、必須で有効な公衆衛生学的手法である。接触者追跡調査はまた、すべての「可能性例」と「疑い例」に、直に対面するような密接な接触を介して関連が認められるかを示すことができる。このことから、一般社会における二次感染が発生している可能性があるかどうかを知ることができる。

患者情報と感染が報告された国に関する最新報告

本日までに、17ヶ国から累積で2,781例の症例と111例の死亡例が報告されている。ブラジルで1例、カナダ3例、中国10例、香港特別行政区28例、ドイツ1例、マレーシア2例、シンガポール8例と米国で5例の症例の増加が報告されている。死亡例は中国から2例と香港特別行政区 から3例が報告されている。


 
  IDSCホームページへ