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4/9/2003


SARSの病因と診断に関するWHOの多施設共同研究ネットワークの参加施設による、コロナウイルスについての主な研究成果の要旨
(4月7日)

 

3月17日にネットワークが開設されて以降、参加施設は以下のような成果を上げている:

複数のネットワーク参加施設で、いくつもの国からの複数の患者検体から、コロナウイルス属の既知の他のウイルスとは異なった新しいコロナウイルス(SARSウイルス)が、繰り返し検出されている。

このウイルスは、VERO細胞やFRhk-4細胞に細胞変性効果(CPE:cytopathogenic effect)を引き起こし、それはSARS患者回復期血清により阻害される。

SARS患者から採取した検体の細胞培養と気道からの検体で、電子顕微鏡上コロナウイルス様粒子が見られた。

回復期患者血清を用いた免疫学的蛍光抗体法(IFA:immunofluorescence assay)で、ウイルスに感染した培養細胞を検知した。

米国、カナダ、香港のSARSに感染していない数百の人々の血清では、SARSウイルスとの反応性が認められなかった。

コロナウイルスの共通プライマーで、感染細胞やSARS患者検体中にSARSウイルスRNAを検出した。特異的プライマーがいくつかの研究施設で開発され、現在感度が比較検討されている。(感染症情報センター翻訳版へリンクされています)PCR primers for SARS developed by WHO Network Laboratories

以下のようなウイルスに対する高度免疫血清(hyperimmune antisera)は細胞培養系でSARSウイルスの増殖を阻害する。
 Transmissible Gastroenteritis Virus (TGEV)
 Feline Infectious Peritonitis virus (FIPV)
 Murine Hepatitis Virus (MHV)
 229E human coronavirus

複数の研究施設で行われたSARSウイルスの部分的遺伝子配列の解析結果から、このSARSウイルスはコロナウイルス属に属していることと、この属の既存の三つのグループに属している、どのウイルスとも似ていないことが確認された。

動物への接種実験は現在行われている。


現在のところ、このコロナウイルス(SARSウイルス)がSARSの主たる病原体であることで、意見が一致している。ヒトメタニューモウイルス(hMPV)も幾人かのSARS患者の気道からの検体から検出されたり、それに対する抗体が患者の血清から検出されたり、またhMPVとSARSの重複感染を証明するような事実も見つかっている。SARSにおけるhMPVの重要性は今のところ余り良く解らないが、後日報告される予定である。

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