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4/2/2003

重症急性呼吸器症候群(SARS)−16


(仮訳)

WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(4月1日、更新第16報)


患者情報と感染が報告された国に関する最新報告

本日までに、15カ国から累積で1,804例の重症急性呼吸器症候群(SARS)症例と62例の死亡例の報告がされている。これは前日までと比べ、182症例と4死亡例の増加である。

最も報告数が増加したのは香港で、155の新規症例が報告された。これによって累積で685症例と16死亡例の報告となった。

新しく報告されたSARSの死亡例のうち3例が香港からであった。4例目の死亡者の報告はシンガポールからであった。

引き続き中国からの症例の報告数が最も多く、806症例と34死亡例が公式に報告されている。これらの症例と死亡例のほとんどが広東省の集団発生と関連があった。この集団発生では当局が、平成14年11月16日から平成15年の2月28日までの間に792症例と31死亡例を記録している。

本日新規の報告があったその他の国には、カナダ9例、台湾(中国)3例、イタリア1例、シンガポール1例、タイ1例、米国10例がある。本日、オーストラリアとベルギーからそれぞれ最初の「可能性例」が報告された。

ハノイの病院は、最も初期に医療施設内での急激な患者発生をみたうちのひとつであるが、ベトナムからの報告数は58症例、4死亡例と8日間連続して変化していない。現在のところSARSの潜伏期は2〜10日の間と考えられている。WHOの疫学者たちは、8日間のあいだ新しい症例が検出されていないことは、ハノイの集団発生が制御され、それ以上の感染拡大が起こっていないことを示す勇気付けられる徴候であると受け止めている。

シンガポールも、流行の初期にひどい被害がでた国であるが、症例は特徴が解っているリスク群に限られ、新規患者の数も少なく、上記同様に安定した様相を呈してきている。

流行を展開しているSARSは新興疾患であり、やっと感染のパターンが明らかになり始めたところに過ぎないため、その解釈は難しい。原因ウイルスの確定としっかりした診断検査法の開発に関しては大きな前進をしているが、疾患についてはまだ解っていないことが多い。

とりわけ当惑していることは、集団発生が比較的早期に終息し、医療機関と直接患者と接触した人々に限定されている地域と、香港やトロントのように迅速に患者を隔離し、厳格なバリアー・ナーシングの導入にもかかわらず、伝播が継続しているその他の地域間に大きな違いがあることである。

WHOは緊急の科学的調査を必要とする事柄に関して、優先順位の一覧を作成した。疾患がどの様に伝播するのか、ウイルスが排出される疾病の時期はいつか、どの種の体液中にウイルスが排泄されるか、その体液の種類により感染力が異なるかなどについてさらに研究が必要である。研究者は又、SARS患者が疾病経過の特定時期により感染力を増すか、あるいは年齢や基礎疾患が疾病の重症度や転帰に影響を与えるかなどを解明する事も必要である。

これらの疑問に答えるため、現在、世界の主要な科学者や臨床家の幾人かが、WHOの三つの電子ネットワークで連携した研究所と医療機関を通じて昼夜を分かたず協力している。研究成果は、患者が発生した国の国内及び国際的な感染の拡大を防ぐ、より的確な公衆衛生学上の提言のための基盤となる。50年以上の経験からWHOは、質の良いサーベイランスと対応によってどのような感染症も終息させる事ができると言う立場を取り続けている。


 
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