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4/1/2003

重症急性呼吸器症候群(SARS)−15


(仮訳)

WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(3月31日、更新第14報)


香港の状況と中国入りしたWHOチームの活動状況香港の状況

香港の保健省は本日、これ以上の重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染拡大を防ぐために、空前の隔離命令を出した。隔離命令は、淘大花園(アモイガーデン)のEブロックの住人達に、4月9日まで自宅から出ないようにと言うものである。

SARS患者の数が、ここ数日間の間にこのビルで連続して急激な増加を示したことを受けて、隔離命令を出す決定がなされた。昨土曜日に香港で入院した新規のSARS患者45例中22症例が、この住宅団地の住人であったことが判明したため、淘大花園(アモイガーデン)における集団発生の懸念が浮上した。日曜日には、SARSの可能性で入院した新規患者の60例中36例が淘大花園(アモイガーデン)の住人であった。

香港の保健当局は本日、疾病の報告が始まって以来累積で213人の淘大花園(アモイガーデン)の住人が、SARSの疑いで入院したことを公表した。香港の集団発生は、3月12日に保健担当官がPrince of Wales病院で異型肺炎の症例の集積を認知した時に始まった。

この集団発生で213人の淘大花園(アモイガーデン)の住人が感染し、そのうち107人がEブロックの住人であった。これに加えて、これらEブロックの107人の住居のほとんどは、垂直関係の配置になっていた。

このような事から、SARSは香港において異なったパターンで拡大しているが、依然として感染者の分泌物(飛沫など)を介する密接なヒトーヒトの接触によると考えられている。WHOの疫学者たちは、この起因ウイルスを含む患者分泌物が何らかの方法で、各部屋又は家庭を結ぶ共用のシステムに侵入したのではないかと言う可能性を考えている。これまでに報告され、良く知られている直接患者に向かい合う形の接触に、この形の伝播が加わったと考えられる。

今月初めに香港の疫学者たちは、メトロポール・ホテルで集団発生が起こった2月15日から23日の期間の宿泊客と訪問者の間での一般的でない伝播経路を確認した。ひとつの階の宿泊客と訪問者が、トロントとシンガポールへのSARSの感染拡大の原因と、香港のPrince of Wales病院の集団発生を引き起こしたと考えられる。このとき、ホテルのスタッフは全く発症していない。淘大花園(アモイガーデン)は九竜地区の、10棟の35階建てビルからなる大きな住宅団地で、約15,000人が住んでいる。

WHOは感染者が出たEブロックの住居環境から試料が採取され、この明らかな垂直方向への感染の広がりについて、説明ができるかどうかを調査中であるとの報告を受けている。

調査そのものは複雑であるが、環境からの試料の検査結果は数日で明らかになる予定であり、Eブロックの感染源と病原体の伝播機構の特定に役立つと考えられる。

香港の疫学者たちにより、淘大花園(アモイガーデン)の「発端者」と考えられる症例が特定された。この患者は現在Prince of Wales病院に入院しているが、入院前に数回に渡り、Eブロックに住んでいる兄弟のひとりに会いに来ていた。

中国のWHO調査チーム

WHOの専門家調査チームは北京地区の疾病対策予防センター(CDC)において、この地区で報告された10例すべてについて検討した。平成15年1月下旬から2月初めにかけて広東省で集団発生事例が起きた後、北京地区に50ある病院の中から11を定点報告病院として追加し、異型肺炎の事例を報告するために地域でのサーベイランス体制を強化したことを北京地区CDCが報じた。

実験室での検査体制も、検体の受け入れ、検査が安全に遂行されるように強化された。その他、薬剤の備蓄、一般向けのホットラインの設置、2回の記者会見を行っている。さらに、北京CDCや病院のスタッフは異型肺炎を迅速に報告して感染制御が出来るように訓練されている。隔離病室も設置された。北京のCDCの話では、抗菌薬とリバビリンが治療や予防のために通常使われている。

北京で異型肺炎の最初の例が検知されるとすぐに、接触者の追跡調査が始められ、すべての接触者についての調査が行われているとWHOチームには伝えられている。8人は香港および太原市(山西省)から持ち込まれた例であり、残り2人は、香港の病院でSARS患者である親戚を見舞った後に発症した72歳の男性の蘇生に関わった医療関係者であった。北京においてはそのほかの症例は報告されていない。

広東省へ専門家チームを派遣することについては、保健省との話し合いが続けられている。

患者情報と感染が報告された国に関する最新報告

本日までに、13カ国から累積で1,622例の症例と58例の死亡例の報告がされている。これは先週の土曜日に最後の累積数が報告されてから、72症例と4死亡例の増加である。

最も報告数が増加したのは香港特別行政区である。死亡例はカナダから1例、香港から3例報告が追加された。ドイツは5例目、スイスは3例目を報告した。


 
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