IDSC 緊急情報トップ >
 

 

3/31/2003

重症急性呼吸器症候群(SARS)−13


(仮訳)

WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(3月28日、更新第13報)


中国がWHOの共同研究ネットワークに参加

本日北京で開かれた記者会見で、中国に協力しているWHO国際調査団のJohn MacKenzie博士(オーストラリア)は、この新興感染症の拡大を阻止する為の国際的努力に、中国政府の更に大きな協力が得られることを発表した。(Severe Acute Respiratory Syndrome - Press briefing, Beijing, China参照)

5人の専門家からなるWHOチームは、昨年11月16日に広東省で発生した異型肺炎の調査のために、平成15年3月23日の日曜日に北京に到着した。

専門家たちは、この中国南部の集団発生と、今年の2月中旬に始めて表面化した現在の重症急性呼吸器症候群(SARS)の症例が関連していることを、強く疑っていた。今までにこの疾患は3つの大陸の13の国々へ広がっている。

WHOの調査は、中国保健省、中国疾病対策予防センター、広東省官吏と協力して行なわれて来た。調査の初期段階でWHOのチームは、中国で使われていた症例定義とWHOがSARSと診断するのに用いた定義とを比較し、昨年11月中旬から今年2月28日の間に中国で異型肺炎と報告されたほとんどの症例が、「実はSARSの症例」であったとの結論に達した。

WHOのチームの報告にあったように、今や中国当局は、SARS集団発生の拡大阻止とこれ以上の国際的な感染拡大を防止するための、WHOによる協同の取り組みに参加することに合意した。

WHOによって設立された、SARSに関連した科学的、医学的問題に関する迅速な国際的協力を促進するための三つの世界的電子ネットワークに加入するために、中国のいくつかの研究所が数日の間に選ばれる。専門家によるこれらのネットワークでは、さらにSARSの原因ウイルスの同定と特性の確認、診断と患者管理のためのより良い手法、感染伝播の方法とその拡大防止に最適な方法の発見に向かって努力を続けている。

WHOの担当部局は、中国の症例に関して非常に詳細な経過の記載がある報告の閲覧も許されている。今週初めに公表された統計によると中国は、世界中のどの国よりも多くのSARS症例の発生を報告している。これらの情報は、この新興疾患の理解、特にその起源に関して、大きな一歩を踏み出す助けになると考えられている。

新興疾患の拡大防止を図る際に最も大きな障害となることのひとつとして、それが出現してくる時点での、疾病の性格が解らない点である。最も長い期間に渡っている中国の症例情報から、どの様にこの疾病がヒトからヒトへ広がっていくか、また何故いくつかの集団発生では他より軽症の症例が見られるのかなどについての理解がより深まる事を期待している。

現在WHOの協力研究所の世界ネットワークによって報告されてくる、起因病原体の同定に関する進展の情報から、この病原体がヒトにとって新しいウイルスであり、動物宿主から種の境界を飛び越えたか、又は突然変異により致死的な特徴を備えた事が示唆される。中国からの情報は、この新しいウイルスが、どの様にしてヒトに疾病を引き起こし始めたのかと言う難題(riddle)を解き明かす助けになると思われる。

中国は水曜日に広東省での集団発生に関する新しい報告数を発表した。この数字は世界の累積報告数を著しく増加させた。木曜日には中国当局が初めて、北京地域と中国北方の山西省で続いている集団発生の症例数と死亡数に関する報告を発表した。

中国は本日さらに、全国のSARS症例に関する最新の電子報告の提供を開始することに同意した。これらの情報は中国保健省からWHOに公式報告として、電子的に提出される。

中国にいるWHOチームの人々は、中国政府がこの連日電子報告の新しい全国システムを実際に施行するには、数日かかると見ている。

患者と感染者が報告されている国の最新情報

本日の時点では13の国から、累積で1,485の症例と53の死亡例が報告されている。これは77報告例の増加となる。新規の死亡例は報告されていない。

WHOへの新しい全国連日電子報告システムの導入の決定に伴い、今日は中国からの報告は無かった。

新規の58症例を含め、引き続き香港中国特別行政区が最も深刻な影響を受けている地域である。その他の国で新しい報告があったのは、カナダ(1例)、台湾(4例)、シンガポール(8例)、そして米国(6例)である。

ベトナムからは連続して5日間、新しい症例も死亡例も報告されていない。WHO
の専門家たちは、迅速な集団発生の探知と厳しい感染制御措置の即時導入を行なったので、更なる伝播を瀬戸際で食い止める事ができたのだろうと考えている。

数人の患者が回復

本日までに、香港では19人、ベトナムでは17人、シンガポールでは25人のSARS患者が軽快退院している。


 
  IDSCホームページへ