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中華人民共和国衛生部

 安徽省で実験室感染の可能性のあるSARS症例が発生
 北京でもさらに1例(要旨)

 2004/4/23(原文



中国衛生部の報道機関への発表によると、衛生部の専門家委員会が、安徽省で1例のSARS確定例と1例のSARSが疑われる非定型性肺炎の症例が発生し、昨日北京から報告された1例はSARSと確定し、またさらに1例のSARSが疑われる症例が発生したことを報告した。

安徽省の症例は、26歳の安徽医科大学の大学院生の女性である。3月7日−22日の間に中国疾病予防控制中心(中国CDC)の病毒病予防控制所(国立ウイルス学研究所)で研究を行い、3月23日に安徽省の省都である合肥(Hefei)へ鉄道を利用し、帰郷した。3月25日に発熱を始め体調不良がみられ、3月29日に鉄道で北京に戻り、到着後、北京市健宮医院(Jiangong Hospital)を受診し、肺炎として入院治療を受けた。4月2日に再び鉄道で安徽省淮南市(Huainan city)に戻り、淮南の病院(砿二院)で治療を受けた。4月4日に、ウイルス性肺炎の診断で安徽医科大学付属第一医院に転院し、継続して治療を受けた。

上記の症例に母親は、3月31日以降症例の看護をもっぱらひとりで行っていた。4月8日からこの母親も発熱で発症し、原因不明のウイルス性肺炎として、安徽医科大学付属第一医院で入院治療を受けた。4月19日に病状が急速に悪化し、死亡した。これを受けて、この地域の衛生担当部局は直ちに上部組織へ報告し、SARS警戒対応を取った。

4月21日に、安徽省CDCは、26歳の大学院生の血清抗体検査の結果、SARS−CoVのIgG抗体が陽性であり、江蘇省CDCによる再検査でもSARS−CoVのIgMとIgG両方の抗体が陽性であったことを伝えた。4月21日夕方に、安徽省衛生署はこれらの状況を中国衛生部へ報告し、22日午前中には専門家グループが安徽省へ派遣された。4月23日に、中国CDCはこの大学院生の血清が、SARS−CoV IgGおよびIgM抗体陽性であることを確認した。中国衛生部専門家委員会は、ふたりの臨床所見、診断検査結果、疫学的情報を総合し、娘の大学院生をSARS確定例、その母親をSARSが疑われる症例(“疑似病例”)と判定し、現在死亡例の病原体分離を含む病理学的検索が実施されている。

安徽省は患者住居周囲や立ち寄り先の徹底した消毒、約117人の密接な接触者の医学的経過観察を行っている。現在、大学院生の病状は安定しており、密接な接触者のうち1人の発熱者がいる。

疫学調査の結果、22日に北京から報告された20歳のSARS“疑似病例”には、この安徽省からの大学院生と疫学的な接点があった。北京の看護師であった先の症例は、3月29日から4月2日の間、北京健宮医院に入院中のこの学生の看護にあたっていた。中国衛生部専門家委員会は本日、この確定例との疫学的リンクをもって、北京の症例もSARS確定例と判定した。北京からの症例も解熱し、彼女の密接な接触者188人のうち5人に発熱症状がみられた。その中の3人は近親者で、2人は同じ病室の患者とその看護についていた人である。全員が北京地壇医院(Ditan hospital)に入院し、医学的健康観察が実施されており、この他のひとには異常はみられていない。

北京市は4月23日に新たに1例のSARS“疑似病例”を報告した。症例は31歳男性で、中国CDCの国立ウイルス学研究所の、博士号取得後の研究生である。4月17日に発熱し、4月22日に地壇医院(Ditan hospital)に入院した。北京市は彼の臨床所見および疫学的情報から、SARSが疑われる症例であると診断した。

安徽省の大学院生と、この北京の研究生がともに中国CDCの国立ウイルス学研究所の実験室で研究を行っていたことから、専門家委員会は、現段階では今回の症例群(クラスター)は感染実験室内感染が原因である可能性が疫学的に考えられると判断した。したがって、中国衛生部は、中国CDCの国立ウイルス学研究所の実験室を閉鎖し、関係研究者、職員を医学的監察下に置き、実験室内その他環境からの検体採取を行い感染源の特定を行っている。また、衛生部はSARSを取り扱う実験施設において実験室内安全を強化し、監視員を置き、あらゆる項目における安全管理体制に万全を期すよう要望した。

中国衛生部は各地方の衛生当局および医療機関に対し、発熱症例に対するサーベイランス・監視を強化し、発熱患者のスクリーニングを行うための専門の人員を配備するように要望し、各地の実施状況を監督するためのグループを派遣した。


中国衛生部はこれら状況を世界保健機関(WHO)、香港、マカオなどへ連絡した。中国赤十字会は台湾の赤十字組織へ状況を伝えた。

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(2004/4/26掲載)

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