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3/28/2003


(仮訳)


臨床医によるSARS患者管理に関する電子会議
(3月26日)


本日、SARSとして知られている重症急性呼吸器症候群の患者の臨床像と治療に関する国際症例検討会の電子会議が、13の国の80人の臨床医の参加で開催された。WHOのネットワークに参加している臨床家によって計画されたこの会議は、症例の初診時の臨床症状、治療、病状の経過、予後に関する指標、そして退院の条件などに焦点を当てて行なわれた。いずれの治療方法も、特に目立った有効性は示していない。参加者たちは、約10%に当たるSARS患者の一部は状態が悪化し、人工呼吸器による呼吸補助を必要とするようになる点で合意した。このような予後不良な例はしばしば基礎疾患があり、そのために治療及び看護が難しくなっている。これらの群では死亡率が高い。

SARSに関わる臨床医家たちは彼らの臨床経験から以下のような結論を導き出した。

初診時臨床像:
参加者全員がSARS患者の病像を報告し、総意として、病態は総ての国で比較的良く似ていることを認めた。前駆期病像は突然の高熱で始まり、多くの症例においてこの突然の高熱は筋痛、悪寒、戦慄、喀痰のない咳嗽を伴っている。初診時にはしばしば発症後3〜4日間経っており、かなりの割合の患者で胸部レントゲン上に特徴的変化を認める。

病状の経過:
初診後、胸部レントゲン所見は悪化して行き、ほとんどの患者が間質浸潤影(肺実質間に滲出液が貯留した状態)を伴って両側性の病変を呈するようになる。このような浸潤影は、レントゲン上で特徴的な雲状陰影(cloudy appearance)を示す。その後患者は二つの群のいずれかに分かれていく。6日目か7日目の時点で患者全体の80〜90%にあたるほとんどの例では、症状及び徴候に改善を認めた。残りの少数の患者群は、さらに重症なSARSの段階へと進行し、その多くが急性のARDS(急性呼吸窮迫症候群)を起こして人工呼吸器の使用が必要となる。この重症群の死亡率は高いが、依然長期間の人工呼吸器管理を受けている患者もかなりいる。重症群での死亡率は、患者が他の基礎疾患を有しているかどうかに関連していると思われる(co-morbid factors)。

予後指標:
概して、40歳以上で、他の基礎疾患を有する患者は重症化し易い。

治療:
今日までに、数多くの抗菌薬による治療が試みられたが、その効果はあきらかではない。リバビリン単独あるいはステロイドとの併用で治療される患者数が増えている。しかし、臨床上の評価指標が無いために、その効果は証明されていない。現状での最適な患者管理の方法は一般的支持療法であり、適切な補液管理を行い、合併してくる二次感染の治療さを確実に行なうことである。

今後の計画:
このような症例検討会を定期的に行なうよう計画している。臨床医家が、治療、患者及びその接触者の管理、退院などのような管理指針の確立に参画して行く予定である。
今回の参加者たちは、電子コミュニケーション手段を用いて定期的に討議し、SARS患者ケアのための国際的ガイドラインを早急に策定することに同意した。


 
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