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中国南部におけるSARS可能性例と
検査で確認された確定例の再評価−更新4

WHO 2004/1/27(原文

中国の保健当局は2004年1月17日に、南部にある広東省における2例目の検査により確定したSARS症例を公表した。この患者は20歳のウエイトレスの女性で、完全に回復し、すでに退院している。確認されている限りの彼女の接触者には、SARSを示唆する徴候や症状を示しているものは無く、すでに観察期間は終了した。WHOのリファレンスと確認のための研究施設ネットワークに属する2つの研究所が、検査結果を確認した。WHOは現在、この個人をSARSコロナウイルス(SARS−CoV)の感染確定例とみなす。

第3番目の35歳のビジネスマンは、「WHO SARS Reference and Verification Laboratory Network: Policies and Procedures in the Inter-Epidemic Period (pdf)」に記載している、WHOの検査診断上の定義のSARSの可能性がある場合を満たしている。中国の国家リファレンス研究施設における検査と、“WHO国際SARSリファレンスと確認のためのネットワーク”に属する香港の研究施設での血清学的検査の暫定結果において、彼はSARS−CoV感染が陽性であった。この患者は1月21日に退院した。

検査により確定されたSARS−CoV感染例の32歳のテレビジャーナリスト同様、20歳女性と35歳男性との接触が分かっている人のいずれもSARS様疾病を発症していない。これらの患者の診療や介護に当たった医療機関の勤務者すべて、健康状態は異常無い。

感染源として疑わしい動物が調査されたが、これら個人の感染の原因は特定されていない。症例は感染の原因についての、継続した警戒と疫学的調査が必要であることを強調した。ウイルス分離と分子生物学的研究のための検体の収集は、ヒトにおけるSARS−CoV感染の疫学や、動物あるいは環境の感染源からのヒトへ再度感染が広がったり、病原性の増強や、より軽症型への弱毒化などの、ウイルスの遺伝的構造変化へつながったりするリスクをさらに明らかにするために、引き続き極めて重要である。SARS−CoV感染の、検査による確認のために採集する適切な検体については、「WHO SARS Reference and Verification Laboratory Network: Policies and Procedures in the Inter-Epidemic Period (pdf)」に記載してある。

非流行期における血清学的検査結果の解釈には、ある程度の注意を払うことが必要である。SARS−CoVに対する偽陽性結果は、現在あるいは過去の、その他のヒトあるいは動物のコロナウイルス感染によって生じる可能性がある。したがって、診断検査のSARS−CoV陽性結果は、どのような対策にしろ、大規模な公衆衛生学的対応が取られる前に、臨床的また疫学的所見との関連において解釈されなければならない。このような理由からWHOは、流行間期(inter-epidemic period)においては、国家リファレンス研究施設による陽性結果の報告は、ひとつ以上のWHOの“SARSリファレンスおよび確認ネットワーク研究施設”において、独立に確認作業を行うことを推奨する。

先のSARSの流行期以来、広東省や他の中国の省において、発熱と呼吸器症状がある人のサーベイランスが強化されてきた。従って続く数週間に、呼吸器症状がある人々を対象にSARSに関して調査が進められる可能性が考えられる。これは、SARSの症状が、冬季により頻繁に見られる多くの疾患を含め、他のいくつもの呼吸器疾患によく似ているためである。最近の事例から、中国のサーベイランスシステムの強化は機能していると考えられる。

WHOと中国の専門家による合同チームは、これらの症例の感染源として考えられるものについて調査しているが、未だ特定に至っていない。このウエイトレスが、ハクビシン(Himalayan palm civet)との接触によって感染したという、幾つかの状況証拠がある。このウエイトレスが働いていたレストランの、ハクビシンを入れておいた檻からとった検体から、SARS−CoVの痕跡が陽性の検査結果が出ている。しかしながら、このハクビシンがSARS−CoVをヒトへ感染伝播したかどうかという証拠は、依然として決定的ではない。

SARS確定例2例と、WHOの検査診断上の定義のSARSの可能性がある1例の接触者たちの経過観察期間は、追加症例の出現無しに終了したので、これらの事例は世界的な公衆衛生学的危機とは考えられない。

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2004/1/28 掲載 IDSC

 
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