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中国南部におけるSARSが疑われる症例の公表;確定例の感染源に関する調査は明日開始

WHO 2004/1/8(原文

中国保健当局は本日、南部の広東省のSARSが疑われる症例について発表した。12月31日から隔離治療を受けていたこの患者は、河南省(Henan)出身の20歳の女性で、広東省の省都の広州市のレストランで働いていた。

患者は12月25日に体調不良を覚え、翌日発熱し、31日に医療機関を受診した。中国衛生部により発表されている、診断および患者管理手法に従い、彼女は直ちに隔離された。この患者は、中国のSARS専門家委員会によって検討された上で、SARSが疑われる症例と診断された。疫学的調査と臨床検査が現在行われている。患者は連続して7日間発熱は無く、病状は安定している。

合計で100症例が追跡調査され、医学的監察下におかれている。現時点では、SARSが疑われるような症状、徴候は、これらの接触者のいずれにも見られていない。

今回の発表は、広州市在住の32歳男性が、臨床検査により月曜日にSARSと診断されたことに続いてなされた。この男性は完全に回復し、退院した。医療従事者を含めた患者の密接な接触者はすべて、観察期間を通して健康状態は良く、その期間もすでに終了した。

現在、(新たに報告された)SARSが疑わしい症例と、前出の確定例をつなぐ疫学的根拠は無い。両症例の曝露源の可能性については現在調査中である。

SARSの症状は、冬季により頻繁に見られる多くの呼吸器疾患を含め、他の幾つもの呼吸器疾患のそれと類似している。これらの疾患の中には、非定型肺炎を引き起こすものもある。これからの数週間に、この他にも多くのSARSが疑われる症例が報告される可能性がある。

現在ある、利用可能なSARSの診断検査にはすべて欠点がある。これらの制限を考慮し、WHOは、SARSが疑われる症例の検査分析のために採取する検体には、血清に加え、鼻咽頭吸引と糞便を含むことを推奨する。各検体は、汚染の危険が増加する検査室においてより、採取時にその場で分割保存することが望ましい。陽性あるいは不完全な結果が得られた場合には、残りの検体のひとつを、WHOが指定するSARSリファレンス研究施設での独立した検査のために送付しなければならない。

調査チームが広東省に到着
WHOと中国の合同専門家チームは、SARS確定例の感染源として可能性のあるものについて調査するため、本日広東省に到着した。今後数日間に、ヒト−ヒト、動物−ヒト、環境の感染源について、並行して調査が行われる。このチームに関するより詳しい情報はWHO西太平洋事務所のウェブサイトに掲載されている。 

動物の専門家はまた、ハクビシンやその他の野生動物の処分をめぐる状況を調査し、SARSコロナウイルスの起源を解明する研究への提言を行う。

SARSウイルスは2002年11月中旬に広東省で最初に発生したが、何らかのまだ同定されていない動物、あるいは環境からヒトに飛び移ったと考えられている。特定の動物種が関与している可能性を含めた、ヒトへの曝露の感染源を特定するための、一層の研究が緊急に必要とされている。

前の専門家チームによって、2003年12月20日から2004年1月2日まで広東省で行われた調査では、医療従事者や薬剤師たちのあいだでの、SARSコロナウイルスの症状への警戒のレベルは非常に高く、また、適切な公衆衛生上の対策を実施する準備が十分出来ていることがわかった。SARS確定例が検査された、あるいは治療された4つの病院施設すべてで、十分なレベルの感染制御が行われていた。地方および国家当局は迅速に警告の報告を受け取り、81人の接触者の追跡は2日以内に完了した。


付:WPRO記載 WHOチーム
Dr. Robert Breiman    米国CDC,疫学者,新興再興感染症専門家
Dr. Heinrich Feldmann(独)   カナダ保健省,感染症に関連する環境学の専門家
Dr. Jeffrey Gilber(アイルランド) 動物媒介感染症の専門家
Dr. Allen Grolla (カナダ)  環境学
Roy Wadia    WHO中国事務所
Dr. Xi Zhao(中国)   通訳  

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2004/1/9 掲載 IDSC

 
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