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中国南部のSARSの疑われた症例−更新2

(2003年12月31日)

WPRO 2003/12/31(原文

引き続き中国南部におけるSARSの疑い例は、疑わしいままであるが、確実な診断を付けるために、さらに検査が予定されている。

中国衛生部は、WHOの国際リファレンス研究施設ネットワークに属する研究所へ、検体を送付する予定である。検体は、このネットワークに属する最も適切なひとつ以上の施設で検査される予定である。これによって既に中国で広範にわたり行われた検査精度を高め、補完される。今年の初めのSARSの集団発生の時にSARS−CoV(SARSコロナウイルス)の迅速な同定と診断検査の開発に繋がったのは、このような協力体制であった。

この32歳のテレビ・プロデューサーの男性患者が、肺炎を患い、SARSの臨床像を満たす徴候と症状を呈したことは明らかである。しかしながら、このような徴候と症状は他の多くの感染症によっても引き起こされることもまた明らかである。

複雑で、未確定な検査結果

「現時点までの検査結果は、SARSあるいは他の感染症として未確定である。多くの異なる検査が実施され、抗体検査の結果は活動性の混在した像を示しており、ウイルス感染の可能性は示唆するが、必ずしも急性のSARS感染を示しているわけではない」と、WHO中国の感染症サーベイランスと対応局(CSR:Communicable Disease Surveillance and Response)の調整官Julie Hall博士は述べた。

PCR法は、少数の検体中にSARSウイルスに似たウイルス遺伝子(あるいはゲノム)の小断片を検出した。しかしながら、SARSウイルスを含んでいる可能性が最も高い検体を含め、大多数の検体からはウイルス遺伝子は検出されなかった。

少数の検体からの陽性結果は、実験室内汚染の可能性も否定することはできない。

患者検体を用いて、ウイルスそのものを分離し培養(増殖)する試みがなされた。現時点では、そのような試みは実を結んでいない。ウイルスを実際に分離する試みがうまくいかないことは珍しくない。この方法は有用な確認試験ではあるが、同時に難しいものでもある。

感染の初期に採取された検体を回復期に採取された検体と比較することは、もっとも有用な抗体検査のひとつである。この患者はまさに回復期に入ったばかりであるから、そのような比較中和試験を完了するまでには多くの日数を要するであろう。この種の検査方法はSARSへの検査として有用であるだけでなく、他の多くの考えられる肺炎の原因にも有用である。

現時点までの相反する検査結果を踏まえ、中国衛生部の検査診断専門家、北京の最先端研究施設、WHOは検査結果が未確定であり、更に検査が必要であるとの結論に達した。

広東省にいるWHOの国際的専門家

WHOの国際的専門家のチームは、中国衛生部と共同で、現在広東省を訪問している。3人のWHOの国際的専門家が、通訳と共にチームに参加している。彼らは北京から広州市に2003年12月29日月曜日に移動した。

広東省のWHOチームは今までのところ、広東省の公衆衛生当局者、中国衛生部、中国疾病ヤ、防控制中心(中国CDC)と顕密に協力し、調査を再検討している。

WHOチームの成員の中には、患者が依然隔離されている病院を訪問した者もおり、病院の感染制御対策は現在十分に機能していると判断した。

他のWHOチームの成員はこの症例の接触者追跡調査の手法、すなわち保健衛生当局がこの事例に関連した接触者を追跡する過程を再検討した。81人の接触者が特定され、現在までのところ全員が健康であると報告されている。これらのうち42人は“密接な”接触者とみなされ、彼らは依然隔離下におかれている。他の39人は“日常的な”接触者であり、少なくとも9人はすでに医療監視が解除されている。さらに多くの接触者達が、中国が課している14日間の観察期間が終わりに近づくため、続く数日の内に監視を解かれる予定である。

WHOの国際的専門家チームはまた、広東省公衆衛生当局、中国衛生部、中国CDCと協力し、今後とることが必要となる対策の過程の計画を支援する予定である。

WHOは今後、検査結果および調査が進捗するに従い、この症例に関する情報を定期的に提供する予定である。

より詳しい情報を希望される方は、WHO中国のRoy Wadia氏(+86 1361 117 4072,wadiar@chn.wpro.who.int)あるいは、WHO西太平洋支局(WPRO)のCharles Raby氏(632 528 9991〜9993,PIO_Unit@wpro.who.int)へご連絡ください。欧州での問い合わせは、Dick Thompson氏(+4122 791 2684 または +4179 475 5475)へお願いします。

(以下省略)

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2004/1/6 掲載 IDSC

 
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