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中国南部のSARS疑い症例の最新情報−更新3

(2004年1月2日)

WPRO 2004/1/2(原文

中国南部のSARS疑い症例の診断が引き続き待たれている。中国衛生部やWHOがより明瞭な状況を提供できるようになるのは、少なくとも来週前半になる見通しである。

WHOの国際リファレンス研究施設ネットワークに属する、香港中国特別行政区の2ヵ所の検査施設で、患者検体の最新の検査が行われた。

この2ヵ所の検査施設で初めに行われたPCR法および抗体検査は、中国北京の中国疾病対策予防センター(中国CDC)関連の検査施設でそれ以前に行われた検査結果と一致している。

専門家はウイルス中和試験の実施を求めている

最新の検査結果は2004年1月2日の夕方の電話会議で、ジュネーヴ、マニラ、北京のWHO専門家の国際委員会により検討された。

ここでは最終結論を出す前に、別の抗体検査の結果、すなわちウイルス中和試験を待つことが決定された。中和試験はいままでのところこの症例に対して、発症早期に一度使用されている。その中和試験の暫定的結果によると、患者はある時点でSARSコロナウイルスに暴露された可能性があることを示唆していたが、それが正確にいつなのかを判定することは困難であった。

今回要求されている追加のウイルス中和試験では、SARS中和抗体のレベルを最近の患者血液中と、病初期に見られたレベルと比較することになる。これらの試験は北京と香港の双方で行われ、数日を要すると思われる。

「感染の初期に採取された検体を回復期に採取された検体と比較することは、もっとも有用な抗体検査のひとつである。この患者はまさに回復期に入ったばかりであるから、現在の中和試験が完了するまでにはあと2,3日を要するであろう」と、WHO中国の感染症サーベイランスと対応局(CSR:Communicable Disease Surveillance and Response)の調整官Julie Hall博士は述べた。

この事例は極端に複雑な症例であった。PCR法は、少数の検体中にSARSウイルスに似たウイルス遺伝子(あるいはゲノム)の小断片を検出した。しかしながら、SARSウイルスを含んでいる可能性が最も高い検体を含め、大多数の検体からはウイルス遺伝子は検出されなかった。

患者検体を用いて、ウイルスそのものを分離し培養(増殖)する試みがなされた。現時点では、そのような試みは実を結んでいない。ウイルスを実際に分離する試みがうまくいかないことは珍しくない。この方法は有用な確認試験ではあるが、同時に難しいものでもある。

患者は32歳のテレビ・プロデューサーで、今も隔離され、医療監視下に置かれている。彼の状態は良いと伝えられている。接触者81人が特定され、その全員が現在のところ健康であると報告されている。これらのうち42人は“密接な”接触者とみなされた。残りの39人は“日常的な”接触者である。接触者のほとんどはすでに隔離を解かれている。残りの人たちも、健康である限りにおいては、中国が課している14日間の観察期間が終わりに近づいているため、今後2,3日中に隔離を解かれる予定である。

広東のWHO国際的専門家

その一方、WHOの国際的専門家のチームは、広東省への訪問調査を完了しつつある。3人の専門家が当地で、中国衛生部との協同任務に当たっていた。

広東のこの中国衛生部−WHO合同チームは現在までに、広東省公衆衛生当局、中国衛生部、中国CDCと緊密に協力し、このSARS疑い症例に対して行われた調査を再検討してきた。

2004年1月2日金曜日の夕方、WHOと中国衛生部の専門家らは、報道機関に対し声明を発表した。その中で専門家たちは、今回の訪問について検討し、観察所見や発見を共有した。彼らの評価の中において、当該SARS疑い症例に対する広東省行政府の対応努力を賞賛している。

しかしながら合同チームの声明では、広東省のサーベイランスシステムのいくつかの点で、改善が必要であることも合意された。それらの中には、「発熱クリニック」の至適利用、広東省全土にわたるサーベイランスシステムの一貫性、SARSコロナウイルスの感染源と考えられるものに関する研究を推進することが含まれている。

声明の全文は、別個の報道機関に対する発表として公表され、以下のウェブサイト(www.wpro.who.int [日本語])に掲載されている。

WHOは今後、検査結果および調査が進捗するに従い、この症例に関する情報を定期的に提供する予定である。

より詳しい情報を希望される方は、WHO中国のRoy Wadia氏(+86 1361 117 4072,wadiar@chn.wpro.who.int)あるいは、WHO西太平洋支局(WPRO)のCharles Raby氏(632 528 9991〜9993,PIO_Unit@wpro.who.int)へご連絡ください。欧州での問い合わせは、Dick Thompson氏へ(+4122 791 2684 または +4179 475 5475)お願いします。

(以下省略)

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2004/1/5 掲載 IDSC

 
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