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A Preliminary Report by the investigation team

 台北の國防大学(國防医学院)予防医学研究所の
 実験室におけるSARS症例の調査

 調査チームによる暫定報告(2003年12月19日18:00)



2003年12月16日の夜に、三軍總醫院(Tri-Service General Hospital)から台湾疾病管制局(台湾CDC)へ、台北の國防大学(國防医学院)予防医学研究所(IPM-NDU)で研究に従事する科学者に、SARS症例の可能性があると報告があった。12月17日の午前2:30に、この患者からの検体がSARS-CoVのRT-PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)法で陽性となり、引き続き台湾CDCで4つの異なるプライマーの組み合わせで、2つの異なる時期に採取された複数の検体から陽性結果の確認がなされた段階で、公式に報告された。政府公衆衛生システムでの通常の調査を開始するとともに、感染源を明らかにし、発生が疑われるSARS流行の規模などの疫学的調査の支援をするために独立の調査チームが作られた。患者は12月17日午前10:00時に、SARS指定病院である台北地方和平醫院(Taipei Municipal Hoping Hospital)へ転院した。同日に調査チームは、ビデオによるリンクを通じてSARS患者から事情を聞いた。また調査チームは、他の研究者やIPM-NDUの管理職たちからも事情を聞き、事故が起こった実験室の状況査察を行い、最近数週間の実験記録やコンピュータの記録も検討した。これに加え、実験室やその周囲から環境検体も採取された。チームからの暫定的な調査報告を以下に記す。

12月17日の患者からの事情説明
この患者は数ヶ月のあいだ、実験室内でのSARS―CoVに対する抗ウイルス薬の効果のスクリーニング調査を分担していた、多施設間共同研究プロジェクトに従事していた。彼が実験室で働いたのは12月6日が最後であった。このときの退室前の最後の後かたづけの時に、感染につながったと考えられる出来事が起こったことを彼は思い出した。彼は、バイオセーフティ封じ込め施設の一部であり、実験に使用する試薬等の運搬に利用する「陰圧搬送室(negative-pressure transporting chamber)」内で、施設附設の手袋を着けたままでは届かないあたりに、実験廃液がこぼれているのに気づいた。従って、彼はその部分にアルコールを噴霧し、こぼれた廃液を掃除するために搬送室の戸を開けた。これは、彼にとって通常とは異なる作業であった。(患者の医学的状態に配慮し、聞き取り調査はこの時点で不完全に中断された)

環境検体
実験室は他の二人の同僚の研究者によって、12月11日まで使用された。12月18日に、実験室からの18の環境検体と、廊下や実験室外の他の部屋からの15検体は、ドアノブ、電源スイッチ、電話、ピンセットなどから系統的に集められ、4組の異なるプライマーを用いてSARS-CoVのRNAをRT-PCR法により検査した。搬送室の上部に置かれていたアルコール噴霧器の取手と、アイソレーター(バイオセーフティ・キャビネット・レベルIII)の灯火スイッチからの2検体が繰り返し陽性結果を示した。このほかの、実験室、ホール、他の部屋からの検体すべてはSARS―CoV陰性であった。

暫定的結論
我々は、コンピュータの作業記録、IPM-NDUの管理職と実験室の同僚、環境検体の検査結果などから独立に収集した情報に基づき、これらが患者からの報告および事実と一致しており、12月6日に実験廃液がこぼれ、清掃のために搬送室の戸を開けたという出来事が、彼のSARS感染の最も合理的説明であるとの結論に達した。さらに、もしこの実験室に汚染があったとしても、現時点では限られた場所だけにしっかり封じ込められている。

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原文:http://203.65.72.52/sarsdoc/en/Investigation%20report%20121903.doc

(2003/12/25掲載)

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