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3/26/2003

重症急性呼吸器症候群(SARS)−9


(仮訳)

WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の 報告
(3月25日、更新第9報)


平成15年3月15日にWHOは、高まる重症急性呼吸器症候群(SARS)の国際的脅威に呼応して、旅行に関する勧告を出した。それ以降WHOは、各国の保健当局とSARSが報告されている地域に派遣されているWHOチームと毎日電話会議を行なっている。

WHOは又、最もひどくSARSの感染伝播の影響が出ている地域の保健当局から、この新しい疾病の特徴の現在の知見へ影響を与えるような総ての関連情報に関する詳しい報告を受けている。

本日の報告に含まれるものとして、香港の旅行代理店主催の北京ツアーの参加者から9人の異型肺炎患者が発生した件に関する、香港保健省からの詳細な暫定報告がある。これらの症例探査は発端者の暫定的特定を含め、迅速に進展した。香港保健省はサーベイランスの目的で、関係する二つの便へ搭乗した乗務員と搭乗客を追跡調査している。一般市民への情報提供も行なわれ、ホットラインが設置された。

ジュネーブのWHOの疫学者と感染者が出ている国での集団発生の経過を調査している専門家たちは本日、現在の知見に基づき、WHOが以前に出した勧告を変更する必要はないと結論した。

WHOは引き続き、いかなる渡航先に関しても渡航制限は勧告していないが、旅行者はSARSの症状に十分に注意を払うように提言している。注意すべき症状とは、高熱と、咳嗽、息切れ、呼吸困難などの呼吸器症状で、これらの症状が見られた時は直ちに然るべき窓口へ報告しなければならない。

本日までに、12の国々から487のSARS症例が報告されている。

SARS患者の中には、発症後に長時間飛行をした者も多少は見られる。ドイツ、カナダ、シンガポール、米国では、同乗していた数千の搭乗客について追跡調査が行なわれた。これらの接触者の中には発症者はいなかった。本日報告された、SARSの機内感染の可能性がある事例については、さらに調査中である。飛行中機内で感染者と近い座席に座った乗客の場合、いわゆる「密接な接触」の可能性があり、感染が生じる可能性を除外することはできない。今日までの証拠からすると、機内での感染の伝播は非常にまれである。

世界中の保健当局と病院勤務者は、今やSARSの症状を警戒している。疑わしい症例は迅速に発見され、直ちに報告されている。新規に発見された患者の的確な隔離と管理により、他への伝播の可能性は大きく減少した。

WHOは、継続的に旅行者に関しての情報収集を続けるように勧告している。SARSは新興感染症であり、その臨床経過、治療反応性、伝播経路、伝播のリスクなどに関する知識は刻々と更新されて行く。

WHOが自信を持っていえることは、現在のように高度な警戒下で、報告が迅速で詳細になされている状況では、SARSの理解と有効な公衆衛生上の勧告を出すために必要とされる情報は速やかに収集され提供されると言うことである。


 
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