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シンガポールにおける重症急性呼吸器症候群(SARS)-続報2

2003/9/24 WHO原文

シンガポールのSARS症例は実験室での偶発的汚染と関連が認められた

疾患発生報告

シンガポール保健省は、先日発生した1例のSARS症例に関する国際的調査の最終報告を発表した。27歳の研究者のSARS検査陽性が、9月8日に確認されたことを受けて行われた調査により、この患者は偶発事故による汚染で、実験室内で感染した可能性が最も高いとの結論が下された。この患者から感染伝播が広がった証拠も無く、またこの孤発症例を国際的な公衆衛生上の問題とみなす理由もまったくない。

このシンガポールの症例は、知られている限り世界で最後の症例が、6月15日に台湾(中国)で検知され、隔離されてから後に初めてSARSとして確認された例である。この症例は、臨床検査においてSARSの病原体であるSARSコロナウイルスが陽性であり、引き続きCDC(米国疾病予防対策センター)によっても確認された上に、さらにSARSの診断と矛盾しない臨床徴候を示した。 

患者は、実験室でウエストナイルウイルスに関する研究を行っていた。この実験室ではまた、ウイルス活性のあるSARSコロナウイルスを用いて研究が行われていた。今回の調査によると、実験室内におけるウエストナイルウイルスの検体とSARSウイルスの交差汚染が感染の原因であった。研究用試料から両方のウイルスが検出されている。

感染した患者から分離されたSARSコロナウイルスの遺伝子配列は、実験室株のそれと高い相関があったことが分かり、今回の感染が偶発的な実験室内汚染の結果であった可能性をさらに強めた。

調査はシンガポール、WHO WPRO(西太平洋地域事務所)とCDCからの専門家を含む11人の調査団により行われた。この調査においては、患者がSARSウイルスのキャリアー(感染はしているが健康である人)であるとか、過去のSARS患者との接触により感染したとか、あるいは、他のヒト−ヒト感染伝播の連鎖が感染の原因であるといった証拠は何も見つからなかった。シンガポールにおいて、SARSウイルスの研究はBSL-3(バイオセーフティー・レベル3)の施設で行われている。

しかしながら、この事故の原因となったと考えられる、幾つかの不適切な実験室操作が専門家たちにより指摘され、それらの改善に関して一連の提言が出されている。この事故が発生した研究室は一時的に閉鎖されている。今回の事例は、シンガポールが統一した安全基準を導入したり、スタッフトレーニングの改善を行うことにより、実験室におけるバイオセーフティーを向上させる好機であると、調査団は受け止めている。

BSL-3施設は、リスクグループ3の微生物の研究を行うように設計されていると、WHO Laboratory Biosafety Manual, Edition 2.5(PDF)に定義されている。BSL-3での病原体封じ込めには、高度な安全基準とその実践と同時に、特別な技術と施設設計が必要とされる。
 
実験室内での事故からSARSの集団発生が生じる可能性は、比較的多くの研究室がSARSコロナウイルスまたは、SARS患者からの検体を用いて研究を行っている現状から考え、考慮すべき重大なリスクである。

シンガポールの症例が、シンガポール総合病院(SGH)で取られているサーベイランスにより、迅速に検知され、適切な患者管理と感染予防対策が取られたことが、今回の調査により分かった。この症例の速やかな検知が明らかに示すように、SARSに対する世界的な警戒の継続が重要である。これは、SARSの集団発生があった地域において、また、ウイルス株またはSARS患者からの診断用臨床検体を保有するすべての研究施設において特に必要である。今回の事例はまた、SARSコロナウイルスの様な、感染性病原体の取り扱いにおいて、実験室内での適切なバイオセーフティー手法と実践を厳しく遵守する重要性を明らかにした。

WHOは今回の事例と調査団の調査結果を受けて、SARS病原体の保存と取り扱いに関する提言を現在再検討している。SARS専門家とバイオセーフティー領域の専門家による会議が、2003年10月に招集され、「WHOのSARSコロナウイルス取り扱いに関するバイオセーフティーガイドライン」の改訂版の検討を行う予定である。
調査団の最終報告は以下で入手可能です:
Biosafety and SARS Incident in Singapore September 2003(PDF)
 

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(更新日:2003/9/30)