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2003/5/22(改訂)



SARSコロナウイルスに対する消毒剤の適用(例)
改訂版

(感染症情報センター)


Disclaimer : 推奨する消毒剤の例は、世界でこれまでに得られた知見に基づき、エンベロープ*をもつ ウイルスに対する消毒の「一例」として作成したものです。実際にはこれを参考に、各施設における実情に合わせてご判断ください。また、適切な消毒剤についての情報は、SARSに関する最新の知見と入手可能な情報に基づき、新しい情報が集まるにつれて今後も改定されていきます。

SARSコロナウイルスはエンベロープ*を有するウイルスである。

*エンベロープ(envelope)
 ウイルス粒子の一番外側にある膜。脂質2重層に、糖タンパクが挿入された構造をとる。消毒剤を作用させたときこれを持つウイルスの方が持たないウイルスよりも消毒剤で感染力がなくなりやすい。

1. 加熱滅菌可能なもの  

 

(ア) 高圧蒸気(オートクレーブ)滅菌(121℃、20分)

 

(イ) 乾熱滅菌(180〜200℃、1時間 あるいは 160〜170℃、2時間)

 

(ウ) 煮沸消毒(98℃以上、15分以上)


2. 加熱滅菌不可能なもの

 

(ア) 次亜塩素酸ナトリウム:

 

有効塩素濃度は0.02-0.05%(200-500ppm)で1時間以上浸漬使用することが多いが、確実な殺ウイルス作用を期待するためには0.1%(1,000ppm)以上30分以上の作用が有効である。

 

布、金属に対して腐食性があり、有機物が付着していると効果が低下する。

 

人体には使用できない。

 

リネンには0.1%(1,000ppm)で30分浸漬後水洗、食器などには水洗後0.01-0.02%(100-200ppm)で5分以上浸漬する。

 

排泄物の消毒には0.1-1%(1,000-10,000ppm)濃度が有効である。

 

(イ) 消毒用エタノール(約80%):

 

人体に対する毒性が少なく、手指の消毒などに適している。ただし、密閉した容器に保存しないとアルコール分が蒸発し、濃度が保たれないため効果が激減する。

 

脱脂効果のため皮膚が荒れることがあるので、スキンケアが重要である。

 

粘膜面には使用できない。アルコール系消毒剤として、イソプロバノール(70%)が使用されることもあるが、ウイルスに対する効果はエタノールより劣っている。

 

手指の消毒には速乾性皮膚消毒剤(例:商品名ウエルパス、ヒビスコールなど;塩化ベンザルコニウム又はグルコン酸クロルヘキシジン、エタノール、界面活性剤、湿潤剤含有)の利用頻度が高い。

血液などが付着している場合などには、内部まで届かないことがあり洗い落とす必要がある。

引火性があるので、取り扱いに注意が必要であり、広範囲な噴霧には向いていない。また、消防法での規制がある。

(ウ) 過酢酸:

低濃度(0.001-0.2%)で芽胞を含むすべての微生物に対して効果がある。また、有機物が存在していても有効である。

最終的に水、酸素、酢酸に分解し、有害物質が残留しない。

一部の金属を腐食する。

刺激臭がある。

 

(エ) グルタルアルデヒド(2%、pH8):

 

化学作用、蛋白変性作用が強く、殺菌力も強いためあらゆる微生物を消毒することが可能である。

 

刺激が強いため人体には使用できない。

 

器具の消毒には血液や体液を十分に除去した後、2%グルタラール液に1時間浸漬の後、十分に水洗する。

 

排泄物や体液の消毒には2時間以上浸漬する方が確実である。

 

床の消毒には0.2%液で清拭し、30分以上放置の後、水拭きする。

 

内視鏡の消毒などには、3%液での15分消毒が過程に組み込まれていることがある。

 

消毒にあたっては保護具の使用、換気が必要である。

 

(オ) ホルムアルデヒド(液体:1-5%溶液、ガス:1m 3あたりホルマリン15ml以上を水40ml以上と共に噴霧又は蒸発させ、7-24時間):

 

液体は医療器具の浸漬消毒あるいは清拭に用いる。

 

室内の殺菌をする場合にガス状にして使用することができるが、毒性、刺激性が強い。

 

(カ) エチレンオキサイドガス:

 

濃度約500mg/L、55-60℃、3時間以上処理。中央材料室などで非耐熱性器具等の滅菌に利用する。その後のガス残留がないように注意する。

 

吸入すると気道の炎症や吐気、めまい、神経症状を起こし、催奇性、発癌性のリスクも指摘されているため、十分に換気することが必要である。

 

(キ) ヨウ素系消毒剤(ヨードホール):

 

ヨウ素とキャリア(非イオン系界面活性剤)の複合体を作り、水溶液としたものである。アルカリ性になると効果がなくなり、有機物の混在によって効果が減弱する。

 

喀痰や血液が付着していると効果は著しく低下する。

 

一般の金属には腐食作用があり、皮膚、粘膜、布類への着色がある。

 

手術部位の皮膚消毒には10%溶液、10%エタノール液が用いられる。

 

手指、皮膚の消毒に7.5%スクラブ液も用いられる。

 

創傷部位の消毒には10%ゲルが用いられる。

 

うがいには7%濃度のものを添付書類の指示に従って希釈し用いられる。

 

高濃度のヨウ素系消毒剤には皮膚に対する刺激作用があり、ヨード過敏症を起こすことがある。

3.塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、界面活性剤にも消毒効果があると考えられますが、効果が十分得られない場合が有ります。
 
現段階でのSARSコロナウイルスの消毒には、上述の1と2の消毒方法が推奨されます。

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日本医師会のウェブから一般的な消毒剤に関する情報が入手可能です。

1類、2類、3類微生物の消毒方法(pdf)
消毒・滅菌の概要(pdf)
消毒薬一覧(pdf)

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更新情報

下線は前回から変更のあった部分です。