|
3)行政対応・海外渡航
|
13 国や自治体でSARSに対してどのような対策がとられていますか?
現時点で日本の国内にはSARS患者はいないため、輸入例の検知に力が注がれており、流行地域からの入国者でSARSが疑われる人を対象に検疫所でスクリーニングし、疾患の国内への侵入を防ぐために、体温測定用のサーモグラフィーや到着時の質問票の配布などが行われています。また、出入国者数の多い空港などには、SARS検査用キット(LAMP法)の配備も行われました。
SARSコロナウイルスに類似したウイルスが分離されたハクビシン、タヌキ等の輸入も禁止されています。
SARS患者を受け入れるための病床の整備は、都道府県単位で行われています。事項を参照してください(Q14)。
各自治体では、患者移送用陰圧装置や、SARS診断用迅速検査キットの配備が進められ、様々な団体が中心となり、最新の知識を得るためのセミナーや講習会などが開催されるとともに、全都道府県で患者発生時を想定した模擬演習が実施されました。医療機関における院内感染対策の徹底や、消毒法を始めとした情報の周知も引き続き行われています。
14 「感染症指定医療機関」とは何ですか?
改正された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」によると、保健所長は、SARS患者及び疑似症患者に対して、SARS のまん延を防止するため必要があると認めるときは、72時間を限度として、特定感染症指定医療機関もしくは第1種感染症指定医療機関(以下「指定医療機関」という)に入院を勧告することになっています。
平成16年2月時点の指定医療機関は表のようになっています。
特定感染症指定医療機関(2医療機関:6床) |
病床数
|
都道府県
|
国立国際医療センター |
4
|
東京都
|
泉佐野市立泉佐野病院 |
2
|
大阪府
|
第一種感染症指定医療機関
(14医療機関:26床) |
|
|
山形県立中央病院 |
2
|
山形県
|
成田赤十字病院 |
2
|
千葉県
|
東京都立荏原病院 |
2
|
東京都
|
東京都立墨東病院 |
2
|
東京都
|
新潟市民病院 |
2
|
新潟県
|
大津市民病院 |
2
|
滋賀県
|
大阪市立総合医療センター |
1
|
大阪府
|
堺市立堺病院 |
1
|
大阪府
|
泉佐野市立泉佐野病院 |
2
|
大阪府
|
神戸市立中央病院 |
2
|
兵庫県
|
奈良県立医科大学付属病院 |
2
|
奈良県
|
岡山大学医学部・歯学部付属病院 |
2
|
岡山県
|
福岡市立こども病院・感染症センター |
2
|
福岡県
|
熊本市立熊本市民病院 |
2
|
熊本県
|
SARS患者を受け入れるための病床の整備は、都道府県単位で行われており、平成16年1月現在で、1,290床確保されています。また、SARSが疑われる場合、診療体制の整った医療機関で受診できるように、外来診療協力医療機関も766カ所準備されています。
15 SARSに罹患した場合の医療費はどうなりますか?
SARSと診断された患者については、都道府県知事が入院勧告を出して入院措置をとることになります。この勧告を受けて入院する場合には、患者ご本人の医療費の負担は原則ありません。しかし、疑いの段階でSARSとして診断がついていない場合には、一般の医療として取り扱われますので、通常の保険診療と同様の自己負担があります。
16 現在、海外渡航するとSARSの感染の危険がありますか?
平成16年4月現在、WHOはいずれの国に対しても渡航自粛の勧告は出していません。これは、今冬の患者報告がすべて孤発例であり、その地域内でのヒトからヒトへの感染が認められていないからです。したがって、通常の観光等で海外を訪問することで、特に感染を恐れる必要はありません。
しかしながら一方で、野生動物などとの接触により(他のコロナウイルス抗体との交叉反応を完全に否定はできないものの)、血清学的に感染が確認された報告があるため、SARS罹患の危険が報告されている場所へ不用意に行くことや、感染の可能性がある行為をわざわざ行うようなことは避けることが重要です(臨床&病原体Q3参照)。また、流行時にも推奨されたような、手洗い、うがいといった呼吸器感染症の標準的な予防対策の励行も大切になります。
同様に、かつて流行が確認された地域から帰国した人との接触も問題はありません。しかしながら、上述のような感染危険がある場所を訪れたり、感染の危険が高い行為を行ったりした人で、発熱等の臨床症状を呈している人へは、念のため医療機関への受診を勧めるべきでしょう。
17 SARS患者と同じ飛行機に乗り合わせた場合に感染しますか?
飛行機の内部の様な閉鎖空間では、感染の危険が高いのではないかと心配されますが、WHOが2003年11月に出した報告によると、2003年7月までに40機の機体に、感染の原因となり得るSARSが疑われる症例が37例搭乗しましたが、実際に感染が起こったのは5つのフライトでした(「SARSの疫学に関する合意文書」)。
感染伝播の具体的な経路や頻度に関しては、現時点では情報が少なく、これらの事例についての詳細な研究の結果を待つ必要がありますが、ひとつのスーパー・スプレッディング事例を除くと、感染は極限られた、非常に近い距離で長時間同乗した人に限られています。SARSの非流行期にある現在、個々人が、体調の悪いときの旅行を自粛し、各空港で現在のように、発熱およびSARS様症状のある患者の渡航を警戒している状況下では、特に心配は無いと考えられます。
注:「スーパー・スプレッディング事例」とは、平均より遙かに多い二次感染者数を生じる感染の伝播事例のことを言う。
Q18へ→
--------------------------------------------------------
IDSCホームページへ
|