国立感染症研究所 感染症情報センター
Go to English Page
ホーム疾患別情報サーベイランス各種情報


Salmonella 属の分類:

 1934年の国際微生物学会で、Salmonella 属はKauffmann - White の様式により、血清型を菌種名とすることが決議され、それ以来約50年間は血清型がSalmo nellaの菌種名として国際的に広く用いられていた時期があったが、現在では生物学的性状とDNA 相関性にもとづいて、Salmonella entericaSalmonel la bongori の2菌種に分けられ、さらにS. entericaはつぎの6亜種に分類されている。

      Salmonella enterica
      Salmonella enterica subsp. enterica
      Salmonella enterica subsp. salamae
      Salmonella enterica subsp. arizonae
      Salmonella enterica subsp. diarizonae
      Salmonella enterica subsp. houtenae
      Salmonella enterica subsp. indica
      Salmonella bongori 

 これらの菌種または亜種の区別は生化学的性状によって行う。
それらの鑑別テストについては同定の参考書を参照下さい。

 Salmonella 電子顕微鏡写真

病原性
 ヒトのサルモネラ症は、成人では主として急性胃腸炎であるが、特に小児では微量菌で感染し症状がより重症で、菌血症を併発しやすい。また老齢者や基礎疾患のある成人では病巣感染を起こしやすい。
 ヒトや動物に病原性のあるサルモネラはsubsp. enterica のみで、その他の亜種は原則的には非病原性である。
 サルモネラ症は上述のように宿主側の条件でその症状に差が出るが、血清型による病原性の差異は原則的にはない。

血清型

 現在、サルモネラは 2,500 種類以上の血清型が知られている。
 サルモネラの血清型別はOおよびH抗原を決定し、抗原構造表にもとづき同定する。固有名は当初は医学上の重要性から、それらが分離された病気および動物名にちなんで付けられたが、1934年以後は初めて分離された地域または国の名称を付けることになっており、現在では血清型名は亜種enterica のみ固有名を付ける。
 ちなみに S. Oranienburg および S. Chester の血清型名由来はつぎのとおりである。

  Salmonella Oranienburg = 6,7 : m, t : -

  Oranienburg はドイツの都市名、1929年Kauffmannによって命名された。

  Salmonella Chester = 4,5,12 : e,h : e,n,x

  Chester はイギリスの都市名、1937年KauffmannとTesdal によって命名された。

主な症状、診断、治療
 いわゆるサルモネラ食中毒は急性胃腸炎である。その主な症状は下痢、腹痛、悪感、発熱、嘔吐、などである。ときには脱水症状を伴う。症状の軽度は個体およびその他の各種の条件によって異なり、死亡率は 0.1〜0.2%で、死因は内毒素によるショックである。死亡例は老齢者および小児に多い。経過は通常1〜4日である。
 約 50%の患者には、回復後 2〜4週間 の排菌がみられ、また10〜20%の患者では排菌は数カ月に及ぶ。サルモネラ症には、海外では老齢者と小児以外では抗生物質治療を行わないことが原則とされ、抗生物質を投与された患者では、回復後長期間にわたって排菌が続く傾向があるといわれている。
 潜伏期間は平均 12時間であるが、個体および摂取菌量によって相違があり、早いもので 5時間、遅いもので 72時間の記載がある。特に最近における小児のS. Enteritidis 感染症ではしばしば3〜4日に及ぶことがある。
 サルモネラ急性胃腸炎は、下痢便中の白血球の存在によりコレラや毒素原性大腸菌による下痢と鑑別されるが、カンピロバクター腸炎やエルシニア腸炎とは鑑別困難で、確実な診断は菌分離によらなければならない。

  問い合わせは
   細菌部 大西または泉谷まで


Copyright ©2004 Infectious Disease Surveillance Center All Rights Reserved.