国立感染症研究所 感染症情報センター
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風疹および先天性風疹症候群 風 疹 Q&A
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風疹と先天性風疹症候群について

風疹とはどんな病気ですか?

風疹ウイルスによっておこる急性の発疹性感染症で、流行は春先から初夏にかけて多くみられます。潜伏期間は2−3週間(平均16−18日)で、主な症状として発疹、発熱、リンパ節の腫れが認められます。ウイルスに感染しても明らかな症状がでることがないまま免疫ができてしまう(不顕性感染)人が15−30%程度いるようです。一度かかると、大部分の人は生涯風疹にかかることはありません。集団生活にはいる1−9歳ころ(1−4歳児と小学校の低学年)に多く発生をみています。風疹ウイルスは患者さんの飛まつ(唾液のしぶき)などによってほかの人にうつります。発疹のでる2−3日まえから発疹がでたあとの5日くらいまでの患者さんは感染力があると考えられています。感染力は、麻疹(はしか)や水痘(水ぼうそう)ほどは強くありません。

風疹の症状は子供では比較的軽いのですが、まれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症が、2,000人から5,000人に一人くらいの割合で発生することがあります。その点では軽視できない病気です。また、大人がかかると、発熱や発疹の期間が子供に比べて長く、関節痛がひどいことが多いとされています。一週間以上仕事を休まなければならない場合もあります。

参考:感染症の話(IDWR2001年29週)
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k01_g2/k01_29/k01_29.html

先天性風疹症候群とはどんな病気ですか?

妊婦とくに、妊娠初期の女性が風疹にかかると、胎児が風疹ウイルスに感染し、難聴、心疾患、白内障、そして精神や身体の発達の遅れ等の障害をもった赤ちゃんがうまれる可能性があります。これらの障害を先天性風疹症候群といいます。先天性風疹症候群をもった赤ちゃんがこれらすべての障害をもつとは限らず、これらの障害のうちの一つか二つのみを持つ場合もあり、気づかれるまでに時間がかかることもあります。

先天性風疹症候群がおこる可能性は、風疹にかかった妊娠時期により違いがあります。特に妊娠初めの12週までにその可能性が高いことが認められており、調査によって25−90%と幅があります。予防接種をうけることによって、成人女性なら妊娠中に風疹にかかることを予防し、または妊婦以外の方が妊婦などに風疹をうつすことを予防できます。(ただし妊娠中は風疹の予防接種をうけることはできません)

参考:感染症の話(IDWR2002年21週)
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g1/k02_21/k02_21.html

日本の風疹の流行の現状はどうなっていますか?

かつてはほぼ5年ごとの周期で、大きな流行が発生していましたが、1994年(平成6年)以降は大流行はみられていません。しかし、局地的流行や小流行はみられており、予防接種を受けていない場合、発症の可能性は少なくありません。特に2002年(平成14年)からは局地的な流行がつづいて報告されており、2003年から2004年には流行地域の数はさらに増加し、2005年にも流行が続くことが懸念されています。

予防接種とスケジュールについて

風疹ワクチンとはどんなものですか。

弱毒化を行った ( たね ) ウイルス(弱毒株ウイルス)を培養・増殖させ、凍結乾燥したものです。弱毒株ウイルスを接種した場合、通常の風疹感染と違ってほとんど症状はでませんが、風疹ウイルスに対する免疫を得ることができます。

風疹は、麻疹(はしか)などにくらべるとあまり重い病気ではないと聞きましたが、なぜ予防接種が必要なのですか?

風疹は小児の場合通常あまり重くない病気ですが、妊婦、特に妊娠初期の女性が風疹にかかると、胎児が風疹ウイルスに感染し、難聴、心疾患、白内障、精神運動発達遅滞などをもった、いわゆる先天性風疹症候群児が出生する可能性があります。また、風疹にかかるとまれに脳炎、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血などの軽視できない合併症をおこすことがあります。大人が感染した場合は発熱や発疹の期間が小児に比べて長く、関節痛がひどいことがあり、一週間以上仕事を休まなければならない場合もあります。

風疹の予防接種を行う第一の目的は、妊婦が風疹にかかることによって生まれてくる赤ちゃんが先天性風疹症候群の障害をもつことのないように、またそのような心配をしながら妊娠を続けることのないように、あらかじめ予防することです。予防接種は風疹の自然感染による合併症の予防にもなり、大人が感染して重症になることも予防します。さらに、多くの人が予防接種をうけると、個人が風疹から守られるだけでなく、ほかの人に風疹をうつすことが少なくなり、社会全体が風疹から守られることになります。

小児の場合、風疹の予防接種はいつ受ければよいか教えてください。

「標準的な接種年齢」は、現在生後12から36か月とされていますが、「生後12ヶ月から18ヶ月の間」に行うことを強くお勧めします。これにより接種前に感染する可能性を低くすることができます。理想的には、生後12か月で麻疹(はしか)の予防接種を行ない、その一か月後に風疹の予防接種を行うことです。

「定期接種の対象年齢」という言葉もありますが、これは「行政的に定期接種と扱いうるもっとも広い年齢の幅」のことで、風疹では生後12か月から90か月未満とされています。この間に接種をうけると、公費負担を受けることができ、通常無料または若干の自己負担のみで接種できます。

なお、風疹予防接種の記録は免疫の有無の確認に将来必要です。女性・男性ともに生涯大切に保管してください。

男性でも風疹の予防接種は必要なのですか。

必要です。風疹は通常あまり重くない病気ですが、まれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの軽視できない合併症をおこすことがあります。また、男の子が予防接種をうけず自然感染したときには、妊娠中のお母さんなどに、大きくなってからであれば妊娠中の配偶者(妻)あるいはパートナーなどにうつし、そして生まれてくる赤ちゃんが先天性風疹症候群をもつ可能性が生じます。風疹の合併症から身を守り、家族への感染を予防し、将来自分達のこどもを先天性風疹症候群から守るためにも、男の子も可能な限り早く風疹の予防接種をうけて下さい。

風疹の予防接種は以前は女子中学生のみを対象に行なわれていましたが、1995年からは、生後12か月から90か月未満の年齢の男女小児および中学生男女になりました。なぜこの変更が行われたのでしょうか。

女子中学生のみへの予防接種では、世の中全体を風疹から守ることが十分にはできないと考えられるからです。男の子が予防接種をうけず自然感染したときには、妊娠中のお母さんなどに、大きくなってからであれば妊娠中の配偶者(妻)或いはパートナーなどに風疹をうつす可能性があります。

風疹(の合併症)から身を守り、生まれてくる赤ちゃんを先天性風疹症候群から守るためにも、男女とも可能な限り早く風疹の予防接種をうけて下さい。このために、上述のようにスケジュールの変更が行なわれました。なお、中学生男女への定期接種は、接種対象変更の際に平成15年9月までの一時的な経過措置として行われていたもので、現在定期接種としての風疹ワクチンは生後12か月から90か月未満の年齢の男女小児のみが対象となっています。

風疹予防接種をうける費用は大体いくらくらいでしょうか。

定期接種の年齢(生後12か月−90か月未満の子供)の場合は、多くの自治体では補助をすることになっており、原則的に無料または若干の自己負担で接種できるといってよいでしょう。それ以外の年齢の場合は自己負担になるので、接種を行なっている医療機関などに問い合わせてください。料金の設定は、それぞれの医療機関で異なります。

風疹のワクチンをうけると風疹にはかからないと考えてよいでしょうか。

すべての薬が100%の効果をもつとは限らないように、ワクチンの効果も100%とはいえません。これまでの報告を総合すると、風疹ワクチン接種を受けた人に免疫ができる割合は95〜99%と考えられています。

米国、韓国、オーストラリア、カナダ、ヨーロッパ諸国など、麻疹・風疹の予防接種を2回行う国が少なくないとききました。これはなぜでしょうか。

麻疹・風疹の予防接種は非常に有効な予防手段ですが、一度予防接種を受けた人に免疫がつかないことがあります。麻疹・風疹の予防接種を2回行なうことによって、これらの人にもほぼ確実に免疫を与えることができ、社会全体が麻疹・風疹に対して強い抵抗性を持つことができます。なお、MMRワクチン(麻しん・おたふくかぜ・風しん混合生ワクチン)を使用する国が増えています。


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