国立感染症研究所 感染症情報センター
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オウム病 オウム病 (2005年第5号, 速報)

オウム病は、オウム病クラミジア(Chlamydophila psittaci)を吸入し、感染後約1〜2週間の潜伏期間を経て突然の発熱(38℃以上)、咳(通常乾性)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などの症状が出現する疾患である。肝脾腫や比較的徐脈(高熱のわりに脈拍が遅い)が認められることもある。胸部X線像ではスリガラス様陰影を呈する、いわゆる異型(非定型)肺炎像を示す。高齢者や治療が遅れた場合などに重症化し、致死的となることもあるので、注意が必要である。


オウム病の発生動向については、感染症法の施行(1999年4月)前は定点把握疾患の「異型 肺炎」に含まれており、独立した疾患としての実態は不明であった。感染症法では四類感染症 に規定されて全数把握対象疾患となり、診断したすべての医師に届け出が義務づけられている。

感染症法のもとで、2004年第53週までに報告されたオウム病は213例で、2001年に動物公園(5例)で、2002年には鳥展示施設(14例)での集団発生があった。過去3年間(2002〜2004年) では、鳥展示施設の集団発生を除き、年間40例前後の届け出となっている(図1)。以下に、累積報告数についての集計結果を示す。

都道府県別では大阪府29例、東京都22例が特に多く、一方、1例も報告のない県が7県あった。性別では男性92例、女性121例と女性にやや多かった。年齢は9〜90歳(中央値:53歳)で、年齢別では0〜9歳1例、10〜19歳8例、20〜29歳14例、30〜39歳32例、40〜49歳33例、50〜59歳49例、60〜69歳40例、70歳以上36例であった。50歳代をピークに幅広い年齢層にみられるが、30歳未満では少なく、30歳以上が全体の80%以上を占めていた(図2)。死亡例の報告はなかった。

図2. オウム病の年齢別・性別報告数 図3. オウム病の発症月別・場所別報告数 図4. オウム病の推定感染

発症日の記載があった196例について発症月をみると、4〜5月が多かった(図3)。同疾患または同様の症状を有する者の有無については、「同居者にいる」が45例(21%)、「同じ職場や学校等にいる」が12例(6%)、「その他」が17例(8%)であり、「無し」が139例(65%)であった。

推定感染源としては、「動物等からの感染あり」と報告されたものが190例で、動物の種類は、不明と哺乳動物を除く171例が鳥類であった。鳥類の種類については、インコに関連したもの(インコ、インコ・オウム、インコ・他)は113例(59%)、ハトに関連したもの(ハト、ハト・他)が23例(12%)、オウムに関連したもの(オウム、インコ・オウム、オウム・他)は12例(6%)であった(図4)

今後の感染予防策に役立てるためにも、問診などにより感染源に関する情報を収集し、媒介動物が推定された場合には、鳥の種類(例えばインコの種類)や、推定される感染地域・感染経路(原因となる行動)などについて、できるだけ具体的な情報を記載していただきたい。

また検査診断としては、病原体検出は4例(遺伝子の検出2例、詳細不明2例)のみに行われ、血清抗体検出が208例(98%)に行われていた(表)。抗体検査のうち、151例では補体結合反応(CF)が行われていた(方法の記載されていなものもあり)。

しかし、CFは属共通抗原を用いて行われており、同様の症状を起こすクラミジア肺炎(病原体はChlamydophila pneumoniae)などでも上昇するため、勧められない。確定診断には、種の特定ができるMicro-IF法などによる検査が必要である。Micro-IF法による検査は、必要に応じて、一部の地方衛生研究所や国立感染症研究所、また一部の研究機関等に検査依頼できる。

感染症発生動向調査週報 IDWR 掲載)


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