国立感染症研究所 感染症情報センター
Go to English Page
ホーム疾患別情報サーベイランス各種情報
麻疹 麻しん Q&A


4:保育所、幼稚園、学校での麻疹の対応について

1. 麻疹(ましん、はしか)について

2. 麻疹のサーベイランスシステムと今年の流行について

3. 麻疹ワクチンについて

4. 保育園, 幼稚園, 学校での麻疹の対応について

5. 医療機関での麻疹の対応について

6. 海外での麻疹の状況

Q4-[1]: ある生徒(もしくは児童)の保護者から医師から麻疹と診断されたとの連絡をうけました。学校として必要な対応は何でしょうか?
Q4-[2]: 同じクラスに麻疹にかかった児童・生徒がいた場合、どのように指導したらよいでしょうか?
Q4-[3]: なぜ保育所、幼稚園、学校において、Q4-[1], [2]のような対応をとる必要があるのですか?
Q4-[4]: 保育所の中で、麻疹と診断された子どもがでました。同室で保育をしていた0歳の園児の保護者に対しては、どのように指導したらよいでしょうか。
Q4-[5]: Q4-[5]:大学で麻疹が流行しています。教育実習に行く場合、どのようなことに注意すれば良いでしょうか。

Q4-[6]:

Q4-[6]:学校等で、麻疹の終息宣言を出すには、何日間新たな患者発生がないことを確かめなければならないでしょうか。

Q4-[1]:ある生徒(もしくは児童)の保護者から医師から麻疹と診断されたとの連絡をうけました。学校として必要な対応は何でしょうか?

 まず、校医・園医に相談の上、監督部署(市区町立の幼稚園・学校の場合は教育委員会、保育所の場合は福祉課等、私学の場合は私学振興室等)と、保健センター・保健所にご連絡ください。麻疹が施設内で拡がる事を防ぐには、麻疹にかかった方を確実に隔離することと、麻疹に対する免疫のない周囲の方に、ワクチン接種などの対応を至急とることが必要です。国立感染症研究所感染症情報センターでは、文部科学省・厚生労働省監修のもと「学校における麻しん対策ガイドライン」を作成いたしました(http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/guideline/school_200805.pdf)。麻疹を発症した生徒(もしくは児童)が発生した場合の対応の詳細とともに、学校等における発生を防ぐために必要な平時の対応が記載されていますので、ご参照ください。なお、本ガイドラインhttp://idsc.nih.go.jp/disease/measles/guideline/school_200805.pdf は、2008年4月に、国立・公立・私立をあわせた全ての学校に配布されています。

Q4-[2]:同じクラスに麻疹にかかった児童・生徒がいた場合、どのように指導したらよいでしょうか?
 まず、そのクラス、あるいは学校等の施設に所属するすべての子どもさんの母子手帳等をみてもらい、麻疹にかかったことがあるか?もしくは麻疹ワクチン(MRワクチン、MMRワクチンを含む)をうけたことがあるかを確認してもらってください。麻疹にかかった記録が確実であればまず心配はありませんが、母子手帳等に、麻疹にかかった記録がなく、しかも麻疹ワクチン(MRワクチン、MMRワクチンを含む)をうけた記載もない場合は、速やかに麻疹ワクチン接種を実施するよう、かかりつけの医師などに相談するよう説明してください。麻疹ワクチンを受けたとの記録がある場合も含めて、今後2週間程度、毎朝、登校前に体温を測定することを指導すると良いでしょう。もし、37.5度以上の発熱がある場合は、学校へ連絡するとともに、医療機関を受診することを勧めます。医療機関を受診する際には、その子どもさんのクラスには麻疹を発症した人がいることを事前に電話連絡してから受診するよう、伝えてください。

Q4-[3]:なぜ保育所、幼稚園、学校において、Q4-[1], [2]のような対応をとる必要があるのですか?

 Q1-[1] にあるように、麻疹は感染力が極めて強いため、周囲にいる麻疹に対する免疫のない人に感染を拡げてしまう恐れがありますので、周囲の方の免疫の状態を早急に確認し、適切な対応(Q4-[1])を迅速にとる必要があります。また、麻疹は重症化の可能性があり、大人に比べると小児は、麻疹に対する免疫がない人の割合が比較的高いことと、閉鎖された室内では、麻疹の感染が効率よく起こることが知られていますので、室内で集団生活を行っている保育所、幼稚園、学校等では特に注意が必要です。

Q4-[4]:保育所の中で、麻疹と診断された子どもがでました。同室で保育をしていた0歳の園児の保護者に対しては、どのように指導したらよいでしょうか。
 まず、生後6カ月までの園児については、母親の麻疹ワクチン接種歴、麻疹罹患歴を確認してください。もし、いずれもない場合は、園児、母親ともに麻疹に対する免疫を持っていないため、発症してしまう可能性があります。園医あるいはかかりつけの医師に速やかに相談するように指導してください。

 もし、生後6カ月までの園児で、母親に麻疹ワクチン接種歴あるいは麻疹罹患歴が有る場合は、園児は妊娠中に母親から麻疹に対する免疫をもらっていますので、罹る可能性は低くなります。

 生後6カ月以上の園児については、母親の麻疹ワクチン接種歴、麻疹罹患歴に関わらず、母親からの免疫は少なくなっています。 0歳児は麻疹ワクチンの定期予防接種の対象ではありません(Q3-[5] )が、このような状況では、麻疹と診断されたお子さんと接触後、72時間以内の麻疹ワクチン接種が発症予防に効果的である場合がありますので、園医あるいはかかりつけの医師に速やかに相談するように指導してください。

Q4-[5]:大学で麻疹が流行しています。教育実習に行く場合、どのようなことに注意すれば良いでしょうか。
 麻疹に対する十分な免疫を有さない者が麻疹患者と接触すれば、2週間以内に麻疹を発症する可能性は95%以上であると考えられています。麻疹流行の有無に関わらず、教育実習中に麻疹患者と接触する可能性、実習生が麻疹を発症することにより、実習先の学校の生徒や教職員にうつしてしまう可能性があることを考慮し、母子手帳等で、麻疹罹患歴ならびに予防接種歴を確認し、2回の予防接種歴がなければ、開始前までに可能な限り2回の予防接種を完了するようにしておきましょう。麻疹に対する免疫が十分にあるかどうかを、血液検査で確認し、十分な免疫がない場合は速やかに1回以上の予防接種を実施することも一つの方法として挙げられます。

 通学中の大学で麻疹が流行しているような特別な状況下では、その学生が麻疹患者あるいは麻疹の疑いが強い者と接触したことが明らかであれば、その後2週間は(教育実習等を問わず)、毎朝検温をする等、発熱などの症状の出現についての自己観察を行い、発熱した場合には学校や実習等を休むなどの対応をとる必要があります。麻疹の罹患歴がない(あるいは、はっきりしない)・麻疹に対する十分な免疫が確認できていない場合には、患者と接触して3日以内であれば麻疹ワクチンを接種することで発症を予防できる可能性がありますので、速やかに大学の担当者(保健センターなど)あるいは近くの医療機関にご相談ください。麻疹患者あるいは、疑われる患者と接触後は、少なくとも2週間、できれば3週間、実習への参加を見合わせることもやむをえないと考えられます。麻疹は飛沫核(空気)感染(同じ空間を共有するだけで感染する)・飛沫感染・接触感染で感染します。学内で麻疹患者との接触を覚えていなくとも、学生が発熱などの体調の異常を自覚した場合には、速やかに大学担当者に連絡を取り、自己隔離や医療機関の受診、教育実習活動の延期など、必要な処置についてご相談下さい。発熱があるにも関わらず、解熱剤を服用しながら、実習に参加するといったことだけは、絶対に避けてください。

Q4-[6]:学校等で、麻疹の終息宣言を出すには、何日間新たな患者発生がないことを確かめなければならないでしょうか。

 麻疹の潜伏期間は10−12日程度です。通常、この2倍程度の観察が必要とされています。園内、校内の新規麻疹患者の発生が迅速かつ確実に把握されていることを条件として、最後の麻疹患者と、園児・児童・生徒・職員との最終接触日から4週間新たな患者発生がなければ、終息宣言を考慮し、園医、校医、嘱託医、保健所等の専門家と相談の上、終息宣言の時期を決定します。詳細は、「学校における麻しん対策ガイドライン」 (http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/guideline/school_200805.pdf)をご参照下さい。

 麻疹は感染力が強い病気です。地域で麻疹患者の発生が続いている限りにおいては、いつまた、その施設への侵入を果たすかもしれません。重要なことは、施設に関係している者(児童・生徒・学生、教職員、その他職員、出来れば職員の家族に至るまで)について、麻疹の感受性者(麻疹への十分な抗体がなく、ウイルスに曝露されると感染・発症してしまう者)を、麻疹を含むワクチンの接種によって出来るだけ早期にゼロにするということです。感受性者は、過去の麻疹の確実な既往の確認を抗体検査によって知ることが出来ます。麻疹が発生した場合には、前述のガイドラインを参考にしつつ、残る感受性者を直ちに減らす方策をとられるようにお願いします。


↑トップに戻る
5. 医療機関での麻疹の対応について→ →


Copyright ©2004 Infectious Disease Surveillance Center All Rights Reserved.