国立感染症研究所 感染症情報センター
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ハンセン病(医療関係者向け 2)





診 断
 日本とWHOとでは診断方法が異なります。日本では医師が時間をかけて患者を診察でき、検査も十分行えます(表1)。一方、途上国でハンセン病診療の第一線に立つのは医師よりも保健関係者が多いためです。日本の場合は、皮膚所見、神経学的所見、皮膚スメア所見、病理組織学的所見などを総合して診断しています。ハンセン病と診断した場合、少菌型(皮膚スメア陰性か、皮疹が1〜5個)か、多菌型(皮膚スメア陽性か、皮疹が6個以上)かを判断します(表2)。なおらい菌に対する患者の免疫応答能の差による病型分類 (Ridley-Jopling 分類)も用いられています。

表1. ハンセン病の診断(日本)

表2. ハンセン病の病型分類

(以下の4項目を総合して診断する)
 (1) 知覚低下を伴う皮疹
 (2) 神経麻痺・肥厚・運動障害
 (3) らい菌検出
 (4) 病理組織所見



ハンセン病の病型(詳細)
 
らい菌の数、皮疹の性状や数、知覚障害、神経肥厚、運動障害、病理組織所見などで患者間に多様性がみられますが、これはらい菌に対する生体の免疫能の差で、病型として分類されています。発症初期のI群、その後治癒するか、または進展してらい菌に対し免疫能が高いTT型、全く反応しないLL型、それらの中間のB群(BT型、BB型、BL型に細分する)に進展していきます(Ridley‐Jopling 分類)(図19)

またTT型などは検査でらい菌を検出しにくいので少菌型(paucibacillary:PB)、LL型などはらい菌を検出できるので多菌型(multibacillary:MB)とも分類されます。最近、皮疹が一つのみの場合にはPBの中から独立してSLPB (single lesion of PB)となっています。このPBとMBの分類は治療法の選択にも応用されています。

図19. ハンセン病の推移

治 療
 外来で、WHOの推奨する抗ハンセン病薬{リファンピシン(RFP)、ジアフェニルスルホン(DDS)、クロファジミン(CLF、色素系抗菌薬)の3薬物}を用いた多剤併用療法(MDT)を原則にし、6ヶ月(少菌型)から1年間(多菌型)内服を行います(表3、図20)。なおSLPBは別の治療法を用いていますが、日本ではSLPBの症例が殆どなく、PBと同じ治療法を適用しています。日本ではMDTを一部修飾して内服薬を追加、治療期間を延長するなどしています*。内服終了すると治癒と判定します。治療の前・中・後に急性の反応が出現する場合があります(らい反応)(図21)。反応は皮疹の増悪とともに、神経の炎症が強度に出現し、ステロイド内服が必要です。

* 日本で保険適応になっている抗ハンセン病剤はRFP、DDS、CLFの他オフロキサシン(OFLX)の4剤です。

 
表3.
 ハンセン病の治療
  (WHO-MDTの原法とは異なり、日本の実状に合わせてある)

  PB(少菌型) MB(多菌型)

成 人
毎日
DDS 100mg(分2、食直後) DDS 100 mg(分2、食直後)
CLF 50 mg*(分1、食直後)

月1回
RFP 600mg (朝食前) RFP 600 mg (朝食前)
CLF 300 mg(分3、食直後)

小 児
(10-14歳)
毎日
DDS 50 mg(分1、食直後)
DDS 50 mg(分1、食直後)
CLF 50 mg**(分1、食直後)

月1回
RFP 450mg (朝食前) RFP 450 mg (朝食前)
CLF 150 mg(分3、食直後)

治療期間   6ヶ月間
遅れても9ヶ月以内に
服用し終わる
12ヶ月間
遅れても18ヶ月以内に
服用し終わる

・皮疹が一個のみの患者(SLPB)には日本ではPBとして治療を行っている。
・MBにおいては12ヶ月では不十分との意見があり、内服終了時に継続するかを判断する。
* CLF 300mgを飲む日は飲まない。 
** CLF 150mgを飲む日は飲まない。

・CLF:クロファミジン、DDS:ジアフェニルスルホン、RFP:リファンピシン

図20. WHOにもとづいたハンセン病の診断と病型分類 (1997年) 図21.らい反応(らい性結節性紅斑、 ENL) 発熱、圧痛を伴う軽度隆起性の紅斑が出没する。
新規患者数
図22. 後遺症(小指、早期に受診すると、後遺症起こさないか、この程度ですむ)
図23. ハンセン病新規患者数
(2012年4月1日現在)

生活指導の要点
 
早期診断、早期治療を心がけ、後遺症を残さないようにすることが重要です。ハンセン病は治癒する病気ですが、治療終了後も皮疹の再燃、らい反応、神経障害などのフォローのため定期的に通院していただきます。外来の消毒は一般細菌と同様です。

後 遺 症
 
有効な抗ハンセン病薬で治療を行われていなかった時代には、四肢や顔面などに変形などがおこりました。現在では、早期発見、早期治療によって後遺症を残すことは稀になっています。(図22)

診療のアドバイス
 
検査・診断・治療のアドバイスをするネットワークが日本ハンセン病学会内にあります(問合せ先:189-0002 東村山市青葉町4-2-1 TEL:042-391-8085, FAX:042-394-9092、ホームページ有り)。ハンセン病研究センターでは石井(norishii@nih.go.jp)が対応しています。

日本の患者数は
 最近の新規患者数は、毎年、日本人は数名、在日外国人は約5名です。日本人新規患者の減少は著しく、年齢層は60歳以上がほとんどで、乳幼児期の感染によるものです。一方、在日外国人患者についてはブラジルやフィリピンなどからの若い労働者が目立ちます。なお、全国15のハンセン病療養所には約2,200名の入所者がいます(平均年齢:82歳)。ほとんどの入所者は治癒していますが、後遺症や高齢化などのため引き続き療養所に入所しています。(図23)

世界の状況
 
新規患者数は年間約22.8万人(2010年、WHO)です(表4)。主な国の年間の新規ハンセン病患者数は、インドで約12.7万人、ブラジルで約3.5万人、インドネシアで約1.7万人などです。

  表4. 2010年の新規患者数が1,000人以上の17カ国(WHO)
 国 名
新患数
 国 名
新患数
インド
126,800
スーダン
2,394
ブラジル
34,894
タンザニア
2,349
インドネシア
17,012
フィリピン
2,041
コンゴ民主共和国
5,049
スリランカ
2,027
エチオピア
4,430
マダガスカル
1,520
ナイジェリア
3,913
中国
1,324
バングラデシュ
3,848
モザンビーク
1,207
ネパール
3,118
アンゴラ
1,076
ミャンマー
2,936
世界合計
228,474

らい菌とは
 
らい菌は抗酸菌の仲間で、1873年ハンセン(ノルウェー)によって発見されました。人工培地で培養できず、らい菌の供給はヌードマウスの足底で増殖させています。世代時間は約11日と増殖はかなりゆっくりしています。31℃前後が至適温度のため皮膚を好んで侵します。また末梢神経親和性を有しています。マクロファージ内で増殖するので、病理では肉芽腫やレプローマなどとして観察されます。ヒト以外にも動物(九帯アルマジロ、マンガベイザル等)にも感染しますが、ヒトへの感染はヒト対ヒトが重要です。

研究の進展
 
らい菌のゲノムDNAの全配列が決定されました。らい菌に対する免疫反応の解明が進んでいます。シュワン細胞とらい菌の接着にかかわる分子の同定も報告され、細胞特異性の解明が進んでいます。耐性菌の早期検出が可能になってきました。新たな治療薬の開発とともに、治療期間を短縮し、らい反応を防ぐ方法の開発が進展しています。世界にはアジアを中心に多数のハンセン病患者がいるので、国際協力の一層の強化が必要です。

ハンセン病研究センターでの仕事の紹介
 
研究の他、全国の医師からのハンセン病検査(行政検査、前述)、アジアのハンセン病研究者の研修、ハンセン病医学夏期大学講座の開催などです。

ハンセン病研究センターでの研究
 
らい菌と人間とのかかわりを免疫学や分子生物学など最新の技術を用いて解析しています。また、治療薬やワクチンの開発、耐性らい菌や末梢神経後遺症の予防の研究など、ハンセン病全般に亘った研究をしています。

ハンセン病医学夏期大学講座
 
毎夏、医療関係の学生、医療関係者、さらに生物物理などの学生等、ハンセン病に関心の有る方々を対象に実習を取り入れた講座を開催しています。問合せはハンセン病研究センターまでお願いします。

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