国立感染症研究所 感染症情報センター
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Q17. 世界、日本、そして国内の自治体におけるパンデミック対策はどうなっていますか?

Q18

世界保健機関(WHO)は、1999年4月にインフルエンザパンデミック準備計画を発表しました。それでは、まずパンデミックをいくつかの段階(フェーズ)に分けて、それぞれのフェーズにおいてWHOが何をすべきかについて述べ、続いて世界各国に対して、国家パンデミック計画委員会を樹立し、パンデミックに際して考慮すべきことをリストアップして、各国でパンデミックの計画を策定することを勧告しています。また、2005年5月に、WHOはグローバルインフルエンザ事前対策計画を発表し、1999年のインフルエンザパンデミック準備計画における準備フェーズを改訂しました。その後も、WHOは多くの技術的な勧告を発表し、国際会議を主催し、また国際的なサーベイランスの枠組みやワクチン開発の指針を通して、世界におけるパンデミック対策のリーダー的役割を果たしています。

 日本のパンデミックプランは、1997年5月に国としての新型インフルエンザ対策検討会が設置され、奇しくも、香港でH5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスによるアウトブレイクが勃発する直前の10月24日に具体的な報告書を発表しました。その後、2003年10月に厚生労働省新型インフルエンザ対策検討小委員会が設置され、新たな知見の集積と世界的な趨勢を考慮して、2004年8月31日、1997年の報告書を改訂する形で、新型インフルエンザ対策報告書をまとめています。このときには、米国疾病予防対策センター(CDC)が開発したFluAidを使用して、全人口の25%が罹患すると想定した場合の医療機関を受診する患者数、入院数、死亡者数を推計し、その医療需要に対応できる医療供給体制の検討を行いました。また、抗インフルエンザウイルス薬について、それらの特徴や国内流通状況を検討し、患者数の推計値を元に、備蓄目標を官民併せて2500万人分が必要としています。その後2005年10月28日に、厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部を設置し、同日鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議を開催し、11月14日に第二回の会合を開くとともに、新型インフルエンザ対策行動計画を公表しました。本計画では、サーベイランス、疫学調査、診断・治療、院内感染対策、患者移送、検疫、そして検査室診断のガイドラインのドラフトが添付され、包括的な国としての対応体制も明確に記述され、厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部の下に、新型インフルエンザ専門家会議を設置し、今後も議論を進めていくことが決定されました。2006年9月12、13日には、これまでの計画の評価のため、省庁間演習が行われており、現在これらの結果をもとに、これまでの計画を見直すとともに、パンデミックフェーズ6に向けての検討が行われています。

 これらを受けて、都道府県では実情に即した行動計画が樹立されており、これまで、各自治体で演習が行われ、医療器材などの備蓄も進められています。

 もしも、新型インフルエンザウイルスが出現してしまった場合には、パンデミックを食い止めることは非常に難しくなります。可能な限り早期に検知して、直ちにワクチンの開発に着手し、あらゆる手段を講じて、それが使用できる様になるまでの間の感染拡大を最小限にとどめる以外に方法はありません。

このような戦略に従い、(1) 国境における対策により国内への侵入を遅らせる、(2) 侵入した場合の早期封じ込め戦略、(3) 地域流行になりつつある場合の社会的距離戦略により、国内での流行を遅らせ、流行のピークを小さくし、全体の患者数を減少させ、(4)パンデミックワクチンの完成・流通により国民を守るということを考えて、サーベイランス、医学的介入としてのワクチンと抗ウイルス薬、非医学的介入としての社会距離対策、医療体制の整備、社会機能の維持、情報共有体制、意志決定指揮命令系統の整備などの多数の分野にわたって、具体的な準備をしておく必要があります。そして、それらを実際の行動計画の策定などの具体的な形であらかじめ準備し、関係者で十分議論し、国民のコンセンサスを得て、必要な対策は即座に実行に移すとともに、演習を行い、実効性を確認しておくことが重要です。また、海外で先に発生することも考えられますので、国際情報の収集も重要になりますが、もっとも重要なことは、パンデミック対策は、人の健康のみならず、社会経済的な、あるいは政治的な要因がかなり複雑に絡み合っているため、国全体としての意志決定プロセスを明確にしておくことです。

○ 新型インフルエンザ対策行動計画リンク集

厚生労働省 新型インフルエンザ対策行動計画

自治体によるパンデミックプラン(一部):
  宮崎県
 東京都 [PDF]
 佐賀県 [PDF]
 福岡県
 千葉県
 奈良県
 神奈川県 [PDF]
 埼玉県

WHO 世界各国のパンデミックプラン






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