国立感染症研究所 感染症情報センター
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Q10. パンデミックが起こったときの個人防御策はありますか?

Q11

  パンデミックの対策は、毎年流行する季節性のインフルエンザ対策の延長線上にあります。季節性のインフルエンザに対する最大の防衛策はワクチンです。しかしながら、パンデミックが発生した際には、毎冬流行しているインフルエンザウイルスの状況を元に作成されたA/H1N1亜型とA/H3N2亜型のワクチン株を含む現在のインフルエンザワクチンの効果はほとんど期待できません(Q11を参照)。もちろん、学問的にはもし、現在の鳥インフルエンザ(A/H5N1亜型)がヒト世界に入ってきてパンデミックを引き起こした場合には、現在ヒト世界にあるA/H1N1亜型とNA亜型が同一なので、効果があるかもしれないとの意見もありますが、確定されたものではありません。

 このように、パンデミックの対策としてのワクチンには、不確定要素がありますので、現在世界中では、非医学的対策としての社会距離戦略が議論されています。すなわち、パンデミックといえども、ヒトからヒトへ感染する以上は、感染したヒトと、感染していないヒトが接触しなければ感染は広がらないわけですので、この接触を可能な限り減少させると言うことです。国レベルの対策として、学校を閉鎖したり、公共施設や映画館などを閉鎖したり、あるいは集会を禁止したりということも考えられていますが、職場や家庭においても接触機会を減らすことは重要なことであり、パンデミックになった際に可能な限り感染している(かもしれない)ヒトとの接触を減らすために、どのような生活パターンとするか、あるいは外出機会を減らすために生活必需品を備蓄しておくなどを考えておくことが勧められます。

 また、パンデミックを拡大させないためにもっとも重要なことが、感染者が自分が広げないように最大限の注意を払うと言うことであり、この基本となるのは、英語で言うところの「Respiratory hygiene & Cough etiquette:呼吸器衛生と咳エチケット」です。すなわち、インフルエンザに罹患し、咳嗽などの症状のある方は特に、周囲への感染拡大を防止する意味から、咳やくしゃみをする際にはティッシュで口元を覆うか、マスクを着用してもらうということです。これは現在の季節性のインフルエンザでも有効ですし、インフルエンザに限らず、あらゆる呼吸器感染の拡大防止の基本です。

 また新型インフルエンザに罹患した場合でも季節性のインフルエンザと同様、細菌の二次感染による肺炎などの合併症により重症化することが考えられますので、高齢者、免疫が低下した状態にある方など、特定のグループにおける細菌による二次感染予防については、現在国内で使われている肺炎球菌ワクチンの効果がある程度期待できると考えられています。

 もちろん、室温、湿度の管理、バランスのよい栄養の摂取、手洗いとうがいなど、一般的な個人衛生と体調の管理も個人で行える対策です。






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