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インフルエンザ

実験室検査のためのH2N2亜型インフルエンザウイルス配布に対する国際的対応:実験室勤務者および一般へのリスクは低いと考えられる

   WHO 2005/4/12(原文

3月26日にカナダ保健省(PHAC)は、WHOに対してカナダの地方研究所において、A/H2N2亜型インフルエンザウイルスが検出されたことを伝えた。この検出されたH2N2亜型ウイルスは、1957年〜1958年にヒトの間で流行した、一般に「アジアインフルエンザ」と呼ばれたパンデミックの初期にヒトの間に循環していたH2N2亜型ウイルスに類似していた。このときに感染の広がったH2N2亜型ウイルスは、完全にヒト−ヒト間の伝播が可能なものであった。このウイルスはヒトの間に循環し続けて、1968年に次のパンデミックを起こしたA/H3N2亜型のインフルエンザウイルスが出現するまでのあいだ、毎年流行を起こした。したがって、1968年以降に出生した人は、H2N2に対しては免疫が無いか、ごく弱い免疫しか持っていないと考えられる。H2N2亜型のウイルス抗原は、現行の3価ワクチンには含まれていない。

この件に関与したカナダの実験室においては、直ちに適切なバイオセーフティ対策が取られ、呼吸器サーベイランスが対策として開始された。引き続くカナダ公衆衛生当局による調査により、このH2N2亜型ウイルスの出所が、カナダの実験室がCAP(College of American Pathologists:米国臨床病理医協会)から2005年2月に受領した、A型インフルエンザおよびB型インフルエンザウイルスを含む一連の検査室の精度管理試験用検体(proficiency test)であることがさかのぼり判明した。CAPは毎年、様々な組み合わせの精度管理試験用検体を参加実験室に定期的に送付している。通常は、現在市中に循環中のa型インフルエンザウイルス(H3N2;H1N1)がこの精度管理試験に用いられる。このH2N2亜型ウイルスは、2004年10月に初めてCAPにより配布された。

WHOおよび、米国保健社会福祉省(Department of Health and Human Services)とその米国疾病対策予防センター(CDC)は、4月8日にCAPにより状況を報告されていた。その後の調査により、H2N2亜型ウイルスを含む同様の精度管理試験用検体が、18ヵ国の3747施設へ送付されたことが判明した。これらの施設のうち61実験室は、米国およびカナダ以外の16ヵ国にある(下記の国と地域の一覧を参照)。米国保健社会福祉省は最近になって、他の精度管理試験提供機関がこのほかにもさらに、H2N2亜型を含んだ検体を米国内の実験室へ送っていることを知った。米国保健社会福祉省はこの検体の、速やかな破棄を確実に実施するための方策を講じている。

CAPは、米国政府の要請により4月8日に、精度管理試験に参加していたすべての実験室に対して、H2N2亜型ウイルスを含む検体を直ちに破棄するように依頼した。4月12日に、これらの実験室へのCAPからの第2回目の連絡としてさらに、H2N2亜型ウイルスの破棄を確認し、実験室の勤務者に呼吸器症状を示す者がいた時はすべて調査し、国家当局へ報告するようにとの依頼がなされた。WHOは関与した実験室の所在地一覧表を受け取っており、詳細な連絡を取るための情報を当該国保健省へ提供し、協力を要請した。

現在までのところ、CAPからのH2N2検体の配布に関連した、実験室勤務者のH2N2感染はまったく報告されていない。推奨される個人防護装具(personal protective equipment)と共に、安全キャビネット(biological safety cabinet)の適切な使用がなされたなら、インフルエンザの実験室内感染のリスクは大きく減少される。過去には数件の実験室内でのH2N2感染が報告されているが、適切なバイオセーフティ予防措置が守られている場合には、インフルエンザの実験室内感染の可能性は低いと考えられる。一般の方々の感染リスクも同様に低いと考えられる。WHOは予防的措置として、CAPおよびそのほかの精度管理試験提供機関からの、H2N2を含む一連の精度管理試験検体と、それ由来の物質すべてを直ちに破棄することを強く勧める。WHOはさらに、現在ヒトのあいだに循環しておらず、人口のほとんどが防御免疫を保持していないインフルエンザウイルスの利用に関するバイオセーフティ対策を再検討することを提言する。

* 国と地域の一覧
 Bermuda
 Belgium
 Brazil
 Chile
 France
 Germany
 Hong Kong Special Administrative Region of China
 Israel
 Italy
 Japan
 Lebanon
 Mexico
 The Republic of Korea
 Saudi Arabia
 Singapore
 Taiwan, China

(IDSC 2005/4/13)


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