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ジフテリアの基礎知識 |
1. はじめに | ||||||
-------------------------------------------------- キーワード ■トキソイド 細菌感染症を予防する目的で用いるワクチンの中で、菌が産生した毒素を精製後にホルマリンで無毒化したものをトキソイドと呼んでいる。代表的なものとしてジフテリアトキソイド、破傷風トキソイドがある。百日咳菌由来(pertussis toxin)のワクチンもトキソイドの範疇である。 ■抗毒素 トキソイドで免疫後に獲得された防御抗体は、特に毒素に対する抗体ということで抗毒素と呼んでいる。in-vitro試験に用いられる抗毒素測定用の抗原は、毒素を高度精製したものが必要である。毒素に対する特異的中和抗体は通常動物試験で行われるが、ジフテリア抗毒素の測定には培養細胞を用いた中和試験法が開発されている。 ■Expanded Programme on Immunization ( EPI ) WHOは予防接種推進計画としてジフテリア、破傷風、百日咳、結核(BCG)、ポリオおよび麻疹について、2000年までに各ワクチンの接種率を高めることにより、上記感染症の抑制を目的としている。 |
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2. ジフテリア | ||||||
ジフテリア(diphtheria)という言葉は、ギリシャ語のなめし革"diphtheria"(leather hide)という語に由来しており、紀元前 5世紀にHippocratesによって記載されている。紀元前6 世紀頃の流行の記録が残っている。 患者や無症候性保菌者の咳などからの飛沫を介して感染し、潜伏期間は通常1〜10日間あり、2〜5日が最も多い。 感染後、侵される部位により、鼻ジフテリア(anterior nasal diphtheria)、 咽頭・扁桃ジフテリア(pharyngeal and tonsiller diphtheria)、喉頭ジフテリア(laryngeal diphtheria)、皮膚ジフテリア(cutaneous (skin) diphtheria)、 眼結膜ジフテリア(ocular diphtheria)、生殖器(陰門)ジフテリア(genital diphtheria)などの病型に分類される。
早期に心筋炎を発症すると死亡率が高くなる傾向にあり、運動神経を中心とした神経炎が見られるが重症化を免れた場合、やがて回復する。軟口蓋の麻痺(3週目)や眼筋、手足、横隔膜の麻痺(5週目)、さらに二次性肺炎、横隔麻痺による呼吸障害、小児では、中耳炎、呼吸不全が見られる場合もある。感染例の多い咽頭ジフテリアの場合は、厚い偽膜と咽頭粘膜の浮腫により気道を閉塞することもあり、熱は通常高くない。重症者では虚脱皮膚の蒼白、頻脈、意識障害、昏睡となり6−10病日で死亡する場合があり、下顎部と前頚部の著しい浮腫とリンパ節腫張を伴い、特徴的な "bullneck"(写真2)を示す。死亡率は平均で5−10 %、5才以下、および40才以上では20 %以上とされている。 |
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3. ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae) | ||||||
1883年にKlebsにより患部の偽膜で観察され、1884年にLofflerが培養に成功した。 [毒素の産生能と病原性] → 次ページへ |
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