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高病原性鳥インフルエンザ

WHO 更新情報
  WHOによるインフルエンザA(H5N1)ウイルスのヒト感染症例の定義

    2006年8月29日 WHO(原文


背景

迅速かつ正確なH5N1インフルエンザ症例のWHOへの報告は、世界における同疾患の進化およびそれに対応するパンデミックウイルスの発生リスクの双方をモニターするための基礎となる。WHOはそのパートナーとともに、次のことを促進するために標準的な症例定義を作成した:

  1. 各国および国際的な保健当局によるH5N1ヒト感染症例の報告と分類
  2. 意思疎通のための用語の統一
  3. 時間的および地理的相違を超えたデータの比較

H5N1症例定義の適応について

  1. この症例定義は現在のパンデミック警告段階(フェーズ3)に適応するものであり、疾患およびその疫学に関して新しい情報が得られると変更される可能性がある。
  2. 各国の当局は、高度疑い例(Probable case)または確定例(confirmed case)のみをWHOに公式報告するべきである。調査対象例(person under investigation)および疑い例(suspected case)の定義は、各国の当局が症例を分類し追跡するのを支援するために作成されたものである。
  3. 症例定義は患者の疾患を完全に記述するためではなく、むしろ症例の報告を標準化するためのものである。
  4. 臨床の場においてH5N1感染の可能性がある患者の治療、ケア、またはトリアージに関して決定が必要な場合は、その決定は臨床的判断と疫学的推論に基づいて行われるべきであり、この症例定義にこだわるべきではない。殆どのH5N1感染患者は発熱と下気道症状を呈するが、その臨床症状は幅広い。

症例定義

「調査対象例(person under investigation)」

「H5N1感染の可能性があるために、公衆衛生当局が調査をすると決定した者」

H5N1の「疑い例(suspected case)」

「発熱(>38度)および咳、息切れ、または呼吸困難を伴う、原因不明の急性の下気道症状を呈する者」

および

「次のうちの一つ以上の曝露が発症前の7日以内にあること:

a. H5N1の疑い例、高度疑い例、または確定例との(1メートル以内の)密接な接触(ケアをする、会話する、触るなど。);

b. 動物やヒトのH5N1感染が過去1か月の間に疑われるか確認された地域における、家禽、野鳥、またはその死骸、またはそれらの糞により汚染された環境への曝露(触る、屠殺する、羽をむしる、食肉処理する、料理するなど);

c. 動物やヒトのH5N1感染が過去1か月の間に疑われるか確認された地域における、生または十分調理されていない家禽の肉の消費;

d. 家禽または野鳥以外の、H5N1感染が確定された動物(ネコやブタ等)との密接な接触;

e. H5N1ウイルスを含んでいる疑いのある検体(動物またはヒトからの)を実験室や他の場所で取り扱ったこと。」
H5N1の「高度疑い例 (Probable case)」(WHOに報告せよ)  

高度疑い例症例定義1.
 疑い例の定義を満たす者であり、かつ次のどれかの基準を満たすもの:

a. 胸部X線像において浸潤像または急性肺炎像があり、かつ呼吸不全の証拠があるもの(低酸素症、重度の頻呼吸)。

または

b. 実験室検査によりインフルエンザA感染が確定されているが、検査によるH5N1感染の証拠はまだ完全ではないもの。

高度疑い例症例定義2
 時間的に、空間的に、かつ曝露に関して、H5N1の高度疑い例または確定例への疫学的関連性が考えられ、原因不明の急性呼吸器疾患で死亡しつつあるもの。
(訳注:probable という語は、可能性が非常に高いと考えられる場合に用いられる語であるが、日本語としては必ずしも適当な訳語がない。ここでは、「疑い例」よりもH5N1感染症例である可能性が高い症例という意味で、「高度疑い例」と訳出する。)

H5N1の「確定例(confirmed case)」(WHOに報告せよ) 

疑い例または高度疑い例症例の定義を満たす者であり、かつWHOがその検査結果を確定的とみなしている、各国の、地域的な、または国際的なインフルエンザ診断施設において、次のいずれかの検査において陽性となった者

a. H5N1ウイルスの分離;

b. 2つの異なるPCR検査のターゲット(インフルエンザA型およびH5 HA 特異的プライマー)を用いたPCR検査;

c. 急性期の血清(発症から7日以内に採取)と回復期の血清検体を用いた中和試験においてH5N1に対して4倍以上の抗体価の上昇。回復期血清の中和抗体価は1:80以上であること;

d. 発症から14日目以降の一時点で採取された血清検体を用いたH5N1のマイクロ中和法により中和抗体価1:80以上であり、かつ他の血清学的検査によっても陽性(例えばウマ赤血球凝集素抑制試験でHI価1:160以上、H5特異的ウエスタンブロット法で陽性など)

(2006/9/14 IDSC 掲載)

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