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WHO 更新情報
  次のインフルエンザパンデミックによる影響の推定:事前対策の強化

    2004年12月8日 WHO(原文


インフルエンザのパンデミックは繰り返し起こり、予測のできない大いなる災厄である。WHOおよび世界中のインフルエンザの専門家達は、今回みられた鳥インフルエンザウイルスのひとつであるインフルエンザA/H5N1の出現と拡大が、次のパンデミックの引き金になるのではないかと懸念している。

WHOは現在の危機を踏まえて、多数の人々がインフルエンザに罹ったり、それによって死に瀕する結果生じる広汎な社会経済的な混乱へ対応するために、各国がインフルエンザパンデミックへの事前対策計画を作成するか、あるいは既存の計画を最新のものへ更新することをすべての国々に対して強く要望している(下記のリンクページの情報を参照)。

− パンデミック対策(Pandemic preparedness) 

事前対策計画の中心となるのは、来るべきパンデミックがどれぐらい致死的なものであるかという予測である。この基本的な疑問に対する専門家の解答は、200万人から5000万人と幅がある。いずれの解答もすべて、科学的根拠に基づいている。推定死亡数にこのような幅がある原因は幾重にも重なっている。

  • 推定の幾つかは過去のパンデミックからの推定であるが、これらの出来事の子細は真の最終的死亡数を含めて、その真偽のほどは明らかでない。もっとも正確な予測は1968年のパンデミックに基づいているが、この例の推定死亡数においても100万人から400万人と幅がある。これと同様に、1918年のスペインインフルエンザ・パンデミックにおける死亡数は、それぞれの研究者により2000万人から5000万人の幅を持って推定されている。

  • 1918年と2004年の世界では全く異なっているため、その情報から推定することには問題が多い。海外旅行の増加の世界的な感染拡大への影響に対して、栄養状態の著しい改善や医療施設の供給の向上を十分に考慮に入れて評価しなくてはならない。

  • 未来のパンデミックウイルスの個別の特徴は予測不可能である。全人口の20〜50%に影響を及ぼすと考えられる。新しいウイルスがどれほど病原性が強いのか、またどの年齢群が影響を受けるのかもまた不明である。
  • 最終的な死亡数には、事前の事前対策の程度も影響する。中等度のパンデミックでさえも、事前対策がない場合や健康弱者においては著しい被害を出す可能性がある。医療システムを維持する計画は特に重要となる。パンデミック自体により、必要な薬剤の供給を妨げ、医療従事者が罹患することも考えられるが、良質な保健医療こそがパンデミックの被害を抑えるために中心的な役割を担うことになる。

これらの要因から、実際にパンデミックが起こるまでは自信を持って(被害の)推定値幅を狭めることはできない。従って、対応計画は協力かつ弾力性のあるものでなければならない。 

次のパンデミックの最善のシナリオでさえも、200万人から700万人が死亡し、数千万人が医学的治療を必要とすると考えられている。もしも、次のパンデミック株が非常に病原性の強いものであった場合には、死亡数は劇的に増加するであろう。

パンデミックの世界的な広がりを止めることはできないが、それに備えることはその影響を減少させるであろう。WHOは、加盟国に対して備えを促しまたその活動の支援を継続していく。今後2、3週間のうちに、WHOは国々の備えに対する努力を評価し、より的を絞ったものにするための国家レベルの対策についての評価ツールを発行する。WHOはまた、抗ウイルス薬やワクチンを備蓄する際のガイドラインも提供する。来週、WHOはパンデミックへの備えを計画することに関する専門家会議を開く。WHOはまたパンデミックに対するワクチンの開発を推し進めるため、そしてインフルエンザパンデミックの出現と拡散のしくみを理解する研究的努力を促進するために尽力している。

加盟国が自国独自の準備計画を開発するために必要な手段をとることが最も大切である。いくつかの国はすでにこの脅威に対抗するための体制や過程を開発しているが、そのなかには完全とは全く言い難いものがあり、多くの加盟国は準備をまだ開始していない。アジアで今や広く定着しているH5N1の出現は、世界が次のパンデミックに近づいていることを示しているとWHOは確信する。次のパンデミックの規模を正確に予測することは不可能であるが、世界の多くがいかなる規模のパンデミックに対しても準備ができていないことはわかっている。

(2004/12/17 IDSC掲載)

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