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  鳥インフルエンザ−タイの状況:世界流行に備えたワクチン開発

    2004年10月4日 WHO(原文


タイの状況

タイ保健省は本日、さらにもう一人のH5N1亜型鳥インフルエンザに感染したヒト症例を確認した。この症例は死亡例であるが、北部のペチャブーン県(Phetchabun)の 9歳の少女であった。少女は9月23日に発症し、9月27日に入院して、10月3日に重症呼吸器疾患で死亡した。

症例の調査結果から、感染発症したニワトリへの曝露が、感染原因として最も可能性が高いことが特定された。この少女は、家庭でニワトリが死亡したのに引き続き、その鳥の羽をむしることを含めた調理の下ごしらえを手伝った。

WHO(世界保健機関)は、感染が広がる国々において、感染発症した鳥との接触の危険性に関して、国民を、特に遠方の地方地域の国民を教育する重要性を指摘している。

タイは今年の年初以来、11死亡例を含む16例の、検査によりH5N1亜型感染が確認された症例を報告した。これらの内4例は最近4週間以内に起こっている。

タイ当局者は先週、家族内集積事例(クラスター)でのヒト−ヒト感染の可能性のある例について発表した。この集積事例からの検体の解析は、ウイルスがその遺伝子構成を変えていないか確定するために、WHO協力研究施設で実施されている。さらに症例を検知するために強化されたサーベイランスによれば、効率的で持続的なヒト−ヒト感染が現時点でタイで起こっているという証拠は全くない。 。

インフルエンザの世界的流行に対するワクチン開発

ワクチンは、十分早期に利用可能となれば、インフルエンザの世界的流行に通常伴う高い罹患率と死亡率を引き下げることができる。ワクチン開発を促進しそれによってこの予防方法を利用するためには大きな努力が必要である。

3つの面で進歩が必要である。まず、集団発生に直面している国々はWHOの世界的インフルエンザサーベイランスネットワークに属する研究施設と、ヒトおよび動物からのウイルスを迅速に共有する必要がある。これらのウイルスの解析によって、WHOが製薬業界に利用できるようにしている試作品ワクチンの「種」になる株を変更する必要があるかどうかを決定する。

次に、製薬会社は臨床試験のための世界的流行に備えた少量の初期生産を含むワクチン開発研究に従事する必要がある。ヨーロッパおよび北米の国家特許当局は産業界に対する規制のガイドラインを開発した。

3番目に、公衆衛生当局は製薬会社と協議して、ワクチン開発に対して共通の関心のある領域の研究をすることを確約し、援助が必要な領域を明確にする必要がある。2003年に香港特別行政区で2例のH5N1亜型ヒト感染症例が発生した際に、WHOは世界的流行に備えたワクチンの迅速な開発と生産の下地を作るために必要な問題を特定し、それを解決するために働いてきた。

ワクチン製造会社は市場動向に反応する。確実に起こると予測することができず、また現在流行している株によらないかもしれない世界的流行のような事例に備えたワクチンを製造することには、ワクチン製造会社は前向きでないかもしれない。H5N1亜型に対する初期の「種」ワクチンを製造するために必要なリバースジェネティックスの特殊な技術−それは特許された手技である−を使用する権利に関して不明確な点もある。

2004年4月はじめにWHOは、H5N1亜型に対するワクチンのための試作品となる種株を製造者が利用できるようにした。現時点までに、世界でざっと12あるインフルエンザワクチン製造の主要な会社のうちわずか2つしか、世界的流行に対するワクチンに熱心に取り組んでいない。その2社はAventis Pasteur 社とChiron社であるが、両者ともアメリカ合衆国にあり、臨床試験に使用する少量のワクチンを製造している。そういった試験は、データの収集と分析に数ヶ月を要するが、ワクチンの組成を微調整し、安全性をテストし、その他の許認可上必要条件を満たすために必要である。試験は今年末までには開始されないと考えられている。

(2004/10/5 IDSC掲載)

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