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鳥インフルエンザ現況の検討

 2004年7月30日 WHO(原文

 



東南アジア地域では、発生が見られなかった一定の期間をはさみ、再び中国、インドネシア、タイ、ベトナムにおいて、ニワトリやアヒルの間での H5N1型高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)が集団発生 している。タイにおいては、76県中21県から集団発生が報告され、ベトナムでは国の北部、中央部、南部から報告された。これらの集団発生のうち多くは、互いに明らかな疫学的関連性がみられず、A/H5N1型ウイルスが今や広く分布し、蔓延している可能性がとても高いことが示唆される。

鳥類での集団発生は、ヒトの健康への著しい脅威となる。

最初のA/H5N1型ウイルスによる集団発生が報告されたとき以来WHO(世界保健機関)が明確に述べているように、このウイルスは、ヒトの世界的なインフルエンザパンデミック(世界規模流行)を引き起こす可能性を秘めている。2004年初頭からのいくつも集団発生においてこのウイルスは、感染したニワトリ、あるいはアヒルから直接ヒトへ感染している。この(鳥類からの)直接のヒトへの感染は、重篤で、時に死亡に至る転帰に繋がった。引き続きWHOの懸念するところは、このウイルスがヒトのインフルエンザウイルスと遺伝子の再集合を起こし、それにより、ヒトからヒトへ容易に感染伝播する能力を獲得し、その結果パンデミックを引き起こすことである。

 

最近の報道機関による報告では、時折新たなA/H5N1型ウイルスのヒト症例の存在を示唆するものがある。WHOでは、これらのレポートを実証するような情報はまったく入手していない。

 

FAO(国連食糧農業機関)は、本日終了したバンコクでの会議において、OIE(国際獣疫事務局)とWHOと共に、新たに地域獣医学インフルエンザネットワーク(regional veterinary influenza network)を設立する計画を発表した。WHOとしては、このネットワークが、動物におけるサーベイランスを強化することを目的としており、この疾患のより迅速な診断に寄与するはずであることから、今回の発議を歓迎する。

 

このFAO/OIE地域動物研究施設ネットワークは、WHOの世界インフルエンザ計画(global influenza programme)と緊密に協力し、ウイルス検体のより迅速な共有を可能にする予定である。速やかで、広域な検体の共有により、WHOが、現在生産されているヒトのワクチンの効果を無にするような、ウイルスにおける変化を監視することが可能となる。本日までのところ、感染の広がるいくつかの国において、そのような検体の交換が遅れていた。

 

環境中に鳥インフルエンザウイルスが残存する限り、新たなヒトのパンデミックウイルス株が出現するリスクは無くならない。国内で、また国際的に、感染制御対策の著しい強化がなされなければ、このウイルスが制圧されるまでには何年もかかることであろう。WHOは再度、このような対策が続けられている間、その最前線で働く人々の健康をモニターする必要性があることを強調する。したがって、WHOが調整役を務める(世界レベルの)事前対策活動(preparedness activities)は継続される。また、WHOは加盟各国に対し、各国レベルのインフルエンザ・パンデミック事前対策計画の策定を開始あるいは継続することを奨励する。

 

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FAO動物保健特別報告(抄訳)    (2004年7月30日、バンコク発)

http://www.fao.org/ag/againfo/subjects/en/health/diseases-cards/special_avian.html 

 

FAOは、東南アジアの獣医学ネットワークは鳥インフルエンザに対するキャンペーンのbolsterを開始したことを発表した。南アジアおよび東アジアにおける、2つの類似のネットワークも、近々活動を始める。FAOはこれらの地域的プラットホームの設立に120万ドル投入する。

「国境は疾病の拡大を阻止することはできない。ヒトおよび動物に深刻な健康被害をおよぼす鳥インフルエンザに対しては、迅速で、効果的な、国単位および地域的な対策が必要であり、地域的協力なしには成功しない」と、FAOの動物健康局長官のJoseph Domenech氏は述べている。

今回のネットワークは、23のアジア各国の国家研究施設とサーベイランスチームに、トレーニングと情報交換のプラットホームを提供する。検査診断能力の向上と、疫学的情報の質の向上を、地域ごとの連携と協力により図る。検知、報告は3地域を通じて、統一性のある基準を用いて行われる。また、獣医領域のスタッフのトレーニングも、共通のツールを用いて実施される。中心的施設とフォーカル・ポイントは年2回集まり、進捗状況を検討する。国際的専門家はトレーニング、検査診断、実地疫学分野で各国を支援する。

FAOは、獣医学担当官と基礎医学専門家との3日間の地域会合を経て、第一弾としての東南アジアのネットワークを本日スタートさせた。

・ 東南アジア地域:カンボジア、ラオス、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、パプアニューギニア、フィリピン、タイ、東チモール、ベトナム

・ 南アジア地域:アフガニスタン、バングラデッシュ、ブータン、インド、モルジブ、パキスタン、ネパール、スリランカ

・ 東アジア地域:中国、日本、韓国、モンゴリア、北朝鮮

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(2004/8/2 IDSC掲載)