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感染した可能性のある動物の殺処理に携わる人員の健康状態の監視に関するWHOの暫定的勧告

2004年3月22日 WHO/WPRO(原文

 

インフルエンザA/H5N1型ウイルスによる高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)は、現在アジアの家禽類に流行している、非常に高い伝染性をもったトリの疾患である。ヒトが、感染した家禽、その分泌物、排泄物(糞便など)、家禽類の糞便によって汚染された埃や土壌に曝露することは感染につながる。今回の家禽類の流行中(2003/2004)に、稀ではあるがヒトの感染が確認された。

鳥類における集団発生の制御には、感染が広がった地域の飼育群を殺処理することが推奨される。これにより、ヒトがウイルスに曝露する可能性を一定範囲に抑え、公衆衛生学的リスクを減少させる。しかしながら前回の集団発生において、養鶏業者(アヒルなどの飼育も含む)や殺処理にかかわった者の間でH5亜型ウイルスへの抗体が検出され、これらの人々に感染のリスクがあることが示唆された。

殺処理にかかわる人々の防御に関する勧告は、WHO西太平洋事務局のウェブサイト(「高病原性鳥インフルエンザに感染した可能性のある動物の殺処理に携わる人員の防御に対するWHOの暫定的勧告」[英文])で提供されている。これには、殺処理と運搬にかかわる全人員が、その時WHOが推奨しているインフルエンザワクチンの接種を受けると共に、個人防御用具(PPE)を着用することの推奨も含まれている。

早期の症例検知と治療のためには、殺処理にかかわる人々の健康状態の監視を行うことを推奨する。以下の対策は、最低限必要なものであると考えられる。

1.農業および動物保健部局の担当者により、(作業関係者の)登録簿の作成が必要である。登録簿は、殺処理に従事する人員について以下の最低限の情報を記載しておく必要がある:

  ○ 氏名

  ○ 連絡先

  ○ 殺処理に従事した日時(複数記載有り)

  ○ 殺処理に従事した場所(複数記載有り)

  ○ 殺処理における具体的作業分担

  ○ 健康診断の結果(感染した場合にリスクを増大させる慢性の心肺疾患などの慢性疾患に罹患している場合には作業従事者から除外する)

  ○ インフルエンザワクチン接種状況(いつ、どのワクチンを、誰が接種したか)

 

 殺処理にかかわる人には、1カ所または2カ所の指定医療担当者あるいは指定医療機関の連絡先(週7日、24時間連絡可能であること)を知らせる必要がある。

2.殺処理にかかわった人々は、家禽あるいはその周囲環境へ最後に接触した日から、最長7日後まで、毎日2回体温測定をする必要がある(健康監視記録様式についてはAppendix Aに例示する)。もしも発熱(>38℃)した場合は、自己治療するべきではなく、直ちに指定された医療担当者に相談するか、指定医療機関を受診しなければならない診察の結果、殺処理にかかわった人がインフルエンザA/H5N1型ウイルス感染の疑いがある場合には、その地域ごとの手順に従い、インフルエンザA/H5N1患者として検査および管理しなければならない。直ちにリン酸オセルタミビル(商品名タミフル)75 mgカプセルの投与を開始し、日に2回の内服を5日間(の1クール)継続する必要がある。最も高い効果を上げるには、この投与は発症後48時間以内に開始される必要がある。

3.症状が見られる人々は、社会的交流を制限するべきである。自宅に留まり、医療機関を受診するまで公共の場を避けるべきである。一旦診察を受けたら、インフルエンザの診断が否定されない限り、症状が軽い場合には解熱するまで最低24時間は自宅で療養しなければならない。

4.自宅療養中の患者は、他の人へ感染を広げるリスクを減らすために呼吸器系の感染予防と手指衛生を心がける必要がある。

殺処理の実施と健康監視の実行のためには、あらゆる段階において、農業および動物保健部局とヒトの保健医療部局の間で連携を保つことを強く勧奨する。

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それぞれの防疫地域(protection zone)ごとに、殺処理にかかわった人達が受診できる医療施設を準備しておく必要がある。これらの施設には、リン酸オセルタミビル(商品名タミフル)のストックと、検査検体の採取に必要な資材の準備がされていなければならない。

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(2004/3/23 IDSC掲載)