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高病原性鳥インフルエンザA(H5N1)−更新26

 2004年2月18日 WHO(原文

 



タイの(ヒトの症例)状況

タイの公衆衛生省は本日、さらに1例のH5N1感染例を確認した。新たな症例は死亡例で、コーンケーン県(Khon Kaen Province)の4歳の男児である。彼は2月3日に死亡した。

本日までに、合わせて9例のヒトH5N1感染確定例がタイから報告されており、7例が死亡した。

ベトナムの(ヒトの症例)状況

ベトナム保健省は本日、さらに1例のH5N1感染例を確認した。この症例は死亡しているが、詳細については現在報告を待っている。

本日までに、合わせて22例のH5N1感染がベトナムから報告されており、うち15例が死亡した。

アジアの(家禽類)状況

H5N1型株による高病原性鳥インフルエンザが、現在8つのアジアの国で家禽類へ感染している。多くの国々で集中的に努力がされているにもかかわらず、まだ、これらの国のいずれでも、完全に感染を制御することができていない。

以前はまれであると考えられていた、高病原性鳥インフルエンザの集団発生のこれまでの経験から、鳥の集団から完全にウイルスを取り除くことは困難であることが示された。好条件下(地理的に小さな区域で、商業的生産施設に集中する場合)でも、感染制御にはしばしば数年間かかった。

過去の集団発生では、長い距離を飛ぶことのできる渡り鳥を含む野生の水鳥から、飼育されている群れへ感染が持ち込まれた可能性が、調査により示された。感染の兆候を示すことなくウイルスを運ぶことのできる、これらの鳥の腸管内でウイルスが増殖し、排泄物の中へ非常に大量のウイルスが排出される。

非常に感染性の高いこのウイルスが、一旦飼育されている群れの中へ持ち込まれると、汚染された物質、たとえば乗り物、衣類、器具などによって、機械的に農場から農場へと運ばれる可能性がある。

野生の鳥の排泄物で汚染され、飼育されている家禽が共有している水源は、まさに一旦環境内にウイルスが広く拡散した場合に、感染伝播の連鎖がどのようにして継続されて行くかの一例である。現在の集団発生では、特に闘鶏のように高価な鳥を隠したり、密輸出入したりする傾向がみられ、これもまた環境内にウイルスを保持することを助けたり、または地理的にさらに拡散することに寄与する可能性がある。

アジアの現在の状況は、歴史的にも前例が無く、非常に困難な状況にある。感染の影響を受けている国々英文)の多くは、その国の歴史上初めての、鳥での高病原性のH5N1感染を報告している。これらの国々の中には、およそ80%の家禽が、地方一帯に散在している裏庭で養鶏をしているような小規模農家で生産されており、感染対策をさらに複雑化している。

このウイルスの完全な制圧は非常に困難な状況になりつつある。以下に示すように、ヒトの健康への影響は無視できないと考えられる。

中国− 1月27日に家禽類におけるH5N1感染の集団発生が報告され、引き続き拡大している。本日までに当局により、52事例の家禽農場での集団発生が報告され、このうち43事例がH5N1により引き起こされたことが分かっている。合計で31ある中国本土の省/自治区/直轄市のうち16が影響を受けている。西蔵(Xizang)自治区(チベット)と吉林省が、最も新しく被害が報告された地域である。

2月11日にOIE(国際獣疫事務局)へ正式に報告されたところによると、およそ230万羽の家禽類が処分された。

日本− 当局は大分県で、H5亜型による小さな集団発生を確認した。H5N1型の関与の可能性については、詳細な検査が行われている。

韓国− 2月7日に当局は8つのアヒル農場、7つの養鶏場、1つの鶏とアヒルの混合農場での新たな集団発生を報告した。最新の集団発生では、およそ35万羽の鳥が死んだか、あるいは殺処分された。

タイ− タイ当局は本日、以前にこの疾病の報告が無かったひとつの県を含む、14県から新たな集団発生を報告した。2,700万羽の鳥が死んだか、あるいは殺処分された。鶏、アヒル、ガチョウ、七面鳥、ダチョウ、ウズラ、クジャクで感染が報告された。

ベトナム− 国内64省のうち57省で集団発生が検知された。2,700万羽以上の鳥が死んだか、殺処分された。

カンボジア,インドネシア,ラオス− これらの国における家禽類での集団発生の状況に関する情報は、依然収集中である。

ヒトの健康への影響

H5N1型のこの株は、最近の3回の事例で、ヒトに直接感染する能力があることを明らかにした。H5N1株は広範囲の宿主に感染する能力があり、このことが最近報道機関で報告されている、一般的には感染や重症化する感受性があるとは考えられていない、ほ乳類や家禽の種における感染と死亡の報告を説明する助けになるであろう。

ヒトでは、H5N1感染による疾病は、通常インフルエンザウイルスにより引き起こされる、呼吸器症状が主体のものとは異なる。H5N1は、重症な播種性の疾病を起こし、多臓器に影響をおよぼし、高い致死率をもたらす結果となる、広範な種類の細胞内で複製する能力があることが文書報告されている。このような臨床像は、1997年の香港での初めてのヒトにおけるH5N1感染の集団発生の際に観察された。これらの特徴はまた、ベトナムとタイからの最も初期の臨床報告にも見られている。

これらすべての理由から、アジアの現在の状況は非常に注意深く見守る必要がある。各国は高いレベルの警戒を維持する必要があり、サーベイランスと検知のため努力を緩めてはならない。家禽類での疾病制御に対する真剣な制御努力を、数ヵ国では継続する必要があり、他では開始する必要がある。パンデミックの初期の状態に対応する準備対策は、昨月WHOにより始められたが、現在も継続されており、多くの進展が見られている。


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(2004/2/20 更新)