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アジアの地方・農業地域における鳥インフルエンザA(H5): 食の安全への配慮

 2004年2月12日 WHO(原文

 



アジアのいくつかの国々では、地方に居住している家族のほとんどが、放し飼いの小さな家禽の群れを飼っており、最大80%の家禽類が小戸数の村のレベルで飼育されている。この状況は、家禽類での高病原性鳥インフルエンザA(H5)(HPAI)の感染制御に対して難しい問題を投げかけ、現在集団発生が見られている国々での家禽類の取り扱いについて懸念を起こさせる。

動物のあいだでHPAIは、野生の鳥、特に無症候の水鳥との直接的接触によって、また、感染した家禽類や家禽由来製品との接触によって、最も一般的に感染伝播される。例えば汚染された衣類、履物、乗り物、道具などや、また同様に汚染された食物、水、肥料、敷き藁などを介してのように多くみられる間接的な感染経路もある。昆虫、げっ歯類、猫、犬などもまた、ベクター(媒介生物)として働き、疾病を伝播することができる。

前回のHPAIの集団発生、とりわけ1997年の香港中国特別行政区と、2003年のオランダでは、推奨される動物での感染制御対策の迅速で効果的な導入が可能となるような、生産の高度産業化された状況を特徴とした地域で発生した。これら感染制御対策には、系統だった感染群の殺処理、検疫、動物の移動の禁止、影響を受けた農夫や小規模家禽所有者への補償計画などが含まれる。

アジアの影響を受けた国々において、家禽類の工業化された生産機構には効率的な感染制御対策を迅速に導入することができる一方で、現在の集団発生は、家禽類とヒトがしばしば同じ生活環境を共有しているような地域で起こっている。家禽類はほとんどすべての村々で見受けられ、通常生きたままの状態で取引される−「生産農場から食卓」までの連鎖の距離は、わずか数メーター程度に短いかもしれない。このような状況では、疾病は多くの小さな群れのあいだで、素早く広がっていくことができる。家庭で屠殺を行うことは、感染が広がる地域で、ヒトのウイルスへの曝露が容易に起こり得ることを意味する。動物社会における集団発生の抑制のために、推奨された感染制御対策を実施することは、非常に困難で時間を要することから、ヒトがウイルスに曝露する危険を増加することになる。

現在の食の安全面 [原文]からの家禽類における疾病に関する指針は、効率的な動物管理方法が取り入れられ、確実に感染動物あるいは卵が食物鎖(食物の流通網)に入り込まない、また市場へ出ないようにできる地域では有効である。しかしながら、現在の集団発生では、導入された動物管理対策が有効に働き始めるまでに、特に地方において、感染した卵や、ウイルスを排出している生きた鳥が売買されたり、食物鎖に入り込んだりする危険がある。従って、追加指針が必要である。

先の集団発生の調査が、生きた感染している家禽類との密接な接触が、ヒトへの感染伝播の主要な経路であることを明らかにした。従って、家禽類でインフルエンザの集団発生が現在起こっている地域では、生きた家禽類の消費者への直接売買の実施はやめるべきである。

地方の農業地帯の人々に対し、家族の誰かが病気のあるいは死んだ鳥を、一家の小さな群れの中に見つけた際にとるべき対策と共に、動物の移動を制限あるいは止める必要性について知らせるための、適切な方法を開発する必要がある。乗り物、用具、履物、衣類への疾病の(原因)の機械的拡散の減少には、衛生的手法が重要であることを再度強調する必要がある。

家庭での屠殺が完全に止められはしないことは予想されており、可能な限り安全な屠殺方法についての提言を提供するべきである。病気の鳥や、一羽以上の患鳥がいる群れの鳥は、食用の目的で屠殺してはならないし、その卵はヒトや動物の食用に売買してはならない。このような鳥の屠殺は、個人予防装具(PPE)を着けたひとりの指定された人が実施するべきである。それが可能でない場合には、動物を屠殺する人は厳格な衛生手技を遵守しなければならない。できれば屠殺は台所から離れた、閉鎖された場所で行われるべきであり、小児と動物は離しておくことが必要である。熱いお湯をスコルディング(scalding:羽毛をとりやすくするための熱湯処理)に用いることが重要である。屠殺の後での、羽毛や動物の内臓その他の利用しない部分(remain)の、安全な廃棄を含み、作業地域の清掃および消毒も同様に重要である。

動物における疾患の封じ込めが有効に行われるまでは、ヒトの食用に感染した動物が処理される危険があり、従ってこれらの活動にかかわるすべての人に対する曝露の危険を増加させることになる。

WHOは、一旦(汚染の可能性がある)家禽類が加工された製品(丸のままの冷蔵あるいは冷凍食用肉、またはこれら由来の製品)として食物鎖に入ってしまった場合には、製品の中心が最低70℃に達するまで調理することで、ヒトの食用として安全なものになる。卵も同様である。感染した鳥の卵は、殻の外および殻の間にウイルスを持っている可能性があり、従って摂取前に調理する必要がある。

* 家禽とは一般的に、その肉、卵、羽毛をとるために飼育される鳥のことで、鶏、家鴨、鵞鳥、七面鳥、ホロホロチョウを含む

関連リンク
食品の安全性:アジアにおけるヒトと鶏の鳥インフルエンザA(H5N1) [原文]

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(2004/2/16 掲載)